プロダクトマネージャーへの示唆──どこから始めるか
では、プロダクトマネージャーは何から手をつければいいのか。説明会の質疑では、「最低限どのツールを入れておけばコンテキストが積み上がるのか」という問いに対し、朝岡氏はまずJiraを挙げた。仕事の構造そのものをトラッキングするJiraだからこそ、情報が複利的に積み上がる。外部で管理している情報も、Jiraにリンクを1つ貼るだけで関係性が構築され、ナレッジグラフに取り込まれていくという。一方で、組織の情報共有がまだ成熟していない場合は、Confluenceから入るのも有効な選択肢になる、とも付け加えた。
基調講演の直後に行われたCxO座談会でも、現場のリアルな知恵が語られていた。
アトラシアンの新納健氏は、AI導入が「入れること自体」を目的化するとうまくいかないと指摘し、「達成したいゴールへの動線上に、必然的にAIがある」状態を作れた顧客はスムーズに進むと話す。
KDDIアジャイル開発センターの木暮圭一氏は、AIで時間が空くほど仕事はむしろ増えると見て、「やらない仕事を決めること」の重要性を挙げた。
LIXILの岩﨑磨氏は、危機感を煽るだけでなく、現場でうまくAIを使っている人を見つけて「認めて褒める」レコグニションが、全社浸透の鍵になると語っている。
みずほフィナンシャルグループの相原寛史氏は、現場でAIを使い始めるうえでは、セキュアに使える環境を会社側がきちんと用意することがまず欠かせないと指摘。そのうえで、AI利用が一部の積極層に偏りがちな現状を踏まえ、まだ踏み出せていない人たちをどう引き込むかが要になると話す。当初は2030年を見据えていた変革のビジョンを、「半分かそれ以上に前倒ししないといけない」と感じている、という危機感も語っていた。
コンテキストは、特別な準備作業から生まれるものではなく、日々の仕事を同じ基盤の上で進めることから積み上がっていく。プロダクトマネージャーにとって今回の発表は、“何を作るべきか”という判断を、組織の記憶に裏打ちされた状態でスケールさせるための足がかりになりそうだ。
