孤独で、必要な知識領域も広いプロダクトマネージャーをサポートするコミュニティ
「プロダクト筋トレ」は2020年12月にスタートしたコミュニティで、『プロダクト作りに関する知識を広げ、深め、身につける』というビジョンを掲げ、現在コミュニティのSlackには1000名ほどが参加している。メンバーの悩みを議論する「モヤモヤの解決」、おすすめの記事や本の共有、輪読会による「インプット強化」、さらに、PRD (プロダクト要求仕様書)やKPIの設定、ユーザーインタビューなどの実践的な練習を通じた「アウトプットの強化」が行われている。
「PMJP」は2015年にスタートした『プロダクトマネジメント・オーナーシップに興味を持つ人々が集まるコミュニティ』。現在Slackに3000名以上が登録し、オンライン・オフラインでのイベントが活発に展開されている。
各コミュニティの紹介のあとは、小城久美子氏が、社外でコミュニティ活動をしている3つの理由について説明。一つが、「プロダクトマネージャーの孤独」だ。エンジニアやセールス、デザイナーなどはチームに数名いるが、プロダクトマネージャーは1名の場合が多い。チームを鼓舞する立場でもあり、悩んでいるところも見せられないため、悩みを共有する場として活用をしてほしいという。
2つ目の理由として小城氏は「守」「破」「離」を挙げた。組織にさまざまな提案をする際には、費用対効果や導入の背景を論理的に説明する必要があるが、これをコミュニティ参加によってやりやすくするというものだ。「守」は、本を読むなどして練習してみる段階。次は練習したものを自社のプロダクトに合う形で導入するのが「破」。練習しているので、組織に対して説得力を持って提案できる。「離」は、習得した知識をコミュニティ内で共有・議論していく。このサイクルを回していくことが、プロダクトマネジメントの力の向上につながるとした。
3つ目の理由は、プロダクトマネジメントに求められる知識範囲の広さ。小城氏は「ビジネス、テクノロジー、UXの3つの領域の知識が必要です。プロダクトマネージャーに新卒でなられる方もいますが、いろいろなバックグラウンドを経てなっていく人も多いです。すべての領域の知識を得るのはかなり難しく、偏りが出て来ると思います。私はもともとエンジニア出身のプロダクトマネージャーですが、ビジネス出身の方など、ほかの分野出身の方とお話しすると非常に学びがあります。互いの強いところから学べることがコミュニティの良いところです」と述べた。
では、コミュニティには具体的にはどんな活動があり、プロダクトづくりにどうつながっていくのだろうか。コミュニティ参加者が経験をシェアした。
偏った知識・スキルを知り、不得手な分野をコミュニティから学ぶ
UI/UXデザイナー出身の小野郷氏は、ドッグフードサブスクリプションサービスを提供するPETOKOTO FOODSで初のプロダクトマネージャーとなった。就任から6か月が経過した現在、その間に自分自身で取り組んだことと、「プロダクト筋トレ」のコミュニティで経験したことを共有した。
最初の3か月は、共通認識を得るための可視化、ステークホルダーとのコミュニケーション、自分のスキルを見極めるための調査と分析を行ったという。
キックオフで、会社での各自の役割をメンバーみんなで考え、そこから「共感し、整えるチーム」というミッションを掲げ、メンバーやチームに期待することが可視化された。主なステークホルダーとは、開発者、カスタマー担当、事業責任者(経営陣)の3者で、プロダクトマネージャーはこの3者がうまく機能するようコミュニケーションする必要がある。小野氏はその3者の課題を共有し、多様な視点で解決策を出していく議論を行い、相互理解を深めていった。
自身のスキルを見極めるために、自己評価に加え、社内のメンバーからのアンケートによる評価を募った。小野氏は「できているところ、できてないことをすり合わせして、自分のスキルセットの解像度が高くなりました。そして、自分はUXが得意ですが、ビジネス領域が不得意であることをメンバーに伝えることで、相談しやすくなる環境ができました」と語った。
就任から3か月が経った頃、プロダクトマネージャーとして不得意な領域について相談する人が周りにいないことに気づいた小野氏は、小城氏のnoteから「プロダクト筋トレ」にたどり着く。当初はSlackにて情報を受け取るのみだったが、そのうちに苦手な読書を克服すべく「輪読会」に参加した。これは、1冊の専門書をメンバー同士で読み、その内容をワークショップやディスカッションにて共有、理解を深める取り組みだ。
コミュニティ参加で得られたメリットについて小野氏は次のように述べた。
「輪読会は読んだ人の数だけ本の捉え方があるので、1人で読むだけではわからない気づきがあります。また、コミュニティは自分や会社やチームを客観的に見るための最良の場だと感じました。自分の苦手な領域について得意な人に質問することで、深い学びが得られます。我流のプロダクトマネジメントの壁を飛び越えたいと思ったら、コミュニティへの参加がおすすめです」(小野氏)