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ProductZine Day 2024 Winter

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イベントレポート

拡大する組織で「ユーザーファーストの目線」を合わせる難しさ……UXの課題と実践をChatworkに学ぶ

Chatwork Dev Day「プロダクトのUXに向き合うためのチームとプロセス」レポート


 Chatworkは組織として「プロダクトマネジメント部」を設置するなど、プロダクトマネジメントやUXリサーチに注力してきた。ユーザーに価値を提供し続けるプロダクトのためには、UXの設計やプロセスは重要だからだ。だが、プロダクトや組織が大きくなるにつれて、組織全体でユーザーファーストの認識を合わせるのは難しい。ChatworkではいかにUXと向き合い、組織のコミュニケーションや体制を設計しているのか。「Chatwork Dev Day 2021」の「プロダクトのUXに向き合うためのチームとプロセス」というセッションでは、プロダクト本部プロダクトマネジメント部マネージャーの石田隼氏とUXディレクターの坂田一倫氏が登壇。フリーランスの顧問としてChatworkのプロダクトデザイン部をサポートしている長谷川恭久氏の司会の下、パネルディスカッションが行われた。

ChatworkにおけるUXとは

長谷川:まずはプロダクトマネージャーの石田さんから自己紹介からお願いします。

石田:Chatworkに新卒で入社し、7年ほど働いています。最初の2年はChatworkの米国法人に所属し、米国でのChatworkの展開に携わっていました。その後、日本でプロダクトマネージャーが必要だということになり、日本に帰国。以来、プロダクトマネージャーを務めています。

 UXは元々興味のある分野で、学生時代に米国に進出を目指している日本企業の現地でのユーザーテストを手伝ったことが縁で、Chatworkに関わることになりました。僕が入った頃のChatworkはまだ30人ぐらいの規模でした。

坂田:Chatworkには今年の2月にジョインしました。キャリアのスタートはバナーや特集ページなどのミクロなUIデザインから始めました。自分の関心からUXデザインに長く携わった後、キャリアチェンジしてプロダクトマネージャーやプロダクトオーナーを経験。デザインとプロダクトマネージャーの両方のスキルが生かせると思い、Chatworkに転職。現在は、エンジニアリング、ビジネス双方とコラボレーションしながらUXの向上をミッションに取り組んでいます。

Chatwork株式会社 プロダクト本部プロダクトマネジメント部マネージャーの石田隼氏(上段)、Chatwork株式会社 プロダクト本部 / UXディレクター 坂田一倫氏(下段左)、長谷川 恭久氏(下段右)
Chatwork株式会社 プロダクト本部プロダクトマネジメント部マネージャー 石田隼氏(上段)、Chatwork株式会社 プロダクト本部 / UXディレクター 坂田一倫氏(下段左)、長谷川恭久氏(下段右)

長谷川:まずは今日話す「UX」という言葉の定義について。どのような意味合いで捉えているのでしょうか。

坂田:UXはその言葉通り「User Experience=ユーザー体験」です。Chatworkは組織で利用するツールなので、導入を決断するまでには複数ツールの比較検討など、長いジャーニーがあります。その長いスパンで考えていかないとプロダクトの改善や設計には生きてきません。つまりChatworkで言う「UX」の設計とは、単なる画面のデザインではなく、導入の決断に至るまでも含めた、長いユーザー体験を設定することを対象にしています。

ユーザーファーストに向き合うことが難しいワケ

長谷川:これを頭に入れた上で、話を進めていきましょう。まずは「ユーザーファースト」という当たり前に向き合うことが難しい理由について。例えばChatworkほどの規模であれば、プロダクトの開発メンバー、カスタマーサクセス(CS)や営業など、それぞれの立場におけるユーザーファーストな視点でものごとを考えていると思います。ですが、これを合わせるのは難しいのではないでしょうか。

坂田:そうですね。部署やチームはそれぞれ達成しなければならない指標がありますから。そのために各部署やチームでインサイトの調査を実施し、施策を企画するのですが、そのときに横の連携が弱いと感じているので、他の部署で何をやっているかまでは把握できないのです。特にコロナ禍において、そこは課題だと考えています。

長谷川:リモート環境でのコミュニケーションや情報共有の手段について、あらゆる企業が模索はしていますが、まだ決定打はありません。Chatworkも小さな組織のときは今のようにユーザーファーストがそれぞれ異なることはなかったと思うのですが、いつのタイミングからそれぞれのユーザーファーストをすり合わせる重要性に気づき始めたのでしょう。

石田:元々Chatworkは社内向けツールとして開発が始まりました。つまり自分たちがファーストユーザーでファーストターゲットだったのです。ですがChatworkを社外向けに提供するようになり、徐々に組織が大きくなるにつれて、それぞれの部署・チームで見ているユーザーが異なることに気づき、そこから「自分たちにとって一番重要なユーザーは誰なのか」についてディスカッションが始まりました。

長谷川:組織が大きくなるにつれて、ユーザーファーストを合わせる難易度は上がってくるのはなぜでしょう。

石田:ユーザーファーストについてディスカッションする場合、そのユーザーがどこのセグメントで、どこのジャーニーなのかを把握することが重要なポイントになります。組織が小さなときは、カスタマーサポートもマーケティングもプロダクトマネージャーもUXディレクターも部署として確立されておらず、同じ視点を持つことができましたが、組織が大きくなると部署・チームごとにセグメントされたユーザーをより深掘りして見ていくことになる。それは非常によいことなのですが、その部分だけを切り取ってしまうと組織全体の目指したいユーザーファーストを合わせる難易度が高くなってしまう。プロダクトマネージャーとしては、各部署、チームがどういうユーザーを見ているのかを俯瞰で把握することが大事だと思います。

坂田:私の場合は、プロダクト開発に携わっていない部署も訪ねて、各タッチポイントにおけるユーザーの困りごとなどを聞くようにしています。そうすることでどんなユーザーがいるかはもちろん、業種による違いの把握、さらには社内にはこんな人がいるんだという気づきも得られます。そういう意味でも部署を超えた横の連携はすごく重要だと思うのです。

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プロダクトのWhat/Whyを言語化した「PRD」に立ち戻れることが重要

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この記事の著者

中村 仁美(ナカムラ ヒトミ)

 大阪府出身。教育大学卒。大学時代は臨床心理学を専攻。大手化学メーカー、日経BP社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランス編集&ライターとして独立。現在はIT、キャリアというテーマを中心に活動中。IT記者会所属。趣味は読書、ドライブ、城探訪(日本の城)。...

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