連載一覧(予定):
- 第1回:スモールチームと技術の力学(今回)
- 第2回:スモールチームの型 ~アジャイル/スクワッド~
- 第3回:スモールチームの観測性 ~何を評価とするか~
- 第4回:スモールチームと仮説検証
スモールチームは、技術の進化とともに
近年の技術進化は、システムの形だけではなくチームの形も変えてきました。大きなムーブメントの一つが、表題にもある「スモールチーム」です。最近は多くの現場で、スモールチーム(少人数)をベースとしてプロダクト開発を進めている様子を目撃するようになりました。
その背景には、アジャイルの登場から、クラウド、マイクロサービス、CI/CDの進化を中心とした「技術」の発展があります。これらの概念×技術がもたらしたものは「チームの独立性」の向上です。1つのチームで行う活動のバッチサイズ(処理量)がどんどん小さくなり、疎結合の集団体(チーム)が増えています。その点と点がスモールチームと技術のエコシステムによって掛け合わせられるようになりました。また、その功績の一つとしてその活動のほとんどが計測可能にもなりました。
一方、実際の現場に目を向けると、なんとなくの責務でプロダクトや機能を分解して、そこにチームを割り当て、アジャイルっぽくイテレーションを1、2週間で区切って開発を進めているチームも多いのではないでしょうか。
なぜ、スモールチームが良いのか。どの粒度でチームを分割し、構造を変えるべきかに悩んでいる方も少なくはないと思います。そうした課題感をお持ちの方を対象に、これまでどういった技術を発展させ、スモールチームでのプロダクト開発を可能にしてきたのか、片鱗をご紹介できればと思います。スモールチームは、技術進化とともに日々のその形をアップデートしてきました。
本記事では、歴史的な背景の理解に重点を置いています。世の中にあるプラクティスを取り入れることは簡単ですが、それは「型」をなぞっているだけになってしまいます。きちんと、その技術やスモールチームでの開発が当たり前になった背景、経緯をなぞることでより深く実践できるようにしていきます。実際のプラクティスや事例は、第2回目以降で散りばめていければと思っております。ご期待ください。
プロダクトを作る術(技術)とプロダクトを作る人(組織)
では、まず「なぜ、スモールチームの話をしているか」を見ていきましょう。プロダクト開発におけるプロダクトマネジメントの基本は、「何を作るか」それを「なぜ作るのか」を考えることです。その2つに対して、正しい戦略で、正しい戦術をもとに、正しいリソースを使って、多くは限りある予算の中で「ヒト・モノ・カネ」を使い、3つの正しさを動かしていきます。この中で、1番難しくもありながら、レバレッジが1番効くのが「正しいリソース」の部分です。つまり、人。その人が作り上げるのがシステム=プロダクトです。
プロダクトマネージャーが、まず考えることの多くは、どうやってコスト(イニシャル、ランニング)を抑えながらも、良いプロダクトを継続的にユーザーに届けるかでしょう。よりコストを抑えながら、ROI(投資対効果)が高く、レジリエンスが効いたプロダクトが作れることに越したことはありません。
ただし、言うは易しです。とても難しいことです。少数精鋭という言葉がありますが、そこまで都合よくスーパーヒーローが採用できるわけはなく、今の組織にいる人の力量が、現組織のケイパビリティの限界。つまりプロダクトの限界です。
ただ、できることはあります。それは、組織の構造やプロセス、技術の相関性をマージしながら歯車を回すことです。
プロダクトを作る術(技術)とプロダクトを作る人(組織)の歯車が噛み合っていない状態では、スピード感を持ってプロダクトは前には進みません。
この部分を本記事では、スモールチームと技術の力学という切り口で、チームの価値を最大化するアプローチを見ていきます。当然、その前段にある「何を作るか」「なぜ作るか」といった正しい戦略(方向性)、正しい戦術を定めることは大前提です。ここについては、連載4回目の記事で説明します。