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プロジェクトマネジメントとは成功の手助けをすること──ノウハウ集「PMBOK」から学ぶ

 プロジェクトの成否はマネジメントがうまく機能するかどうかに多くがかかっています。そのための優れた考え方や手法をまとめたノウハウ集が「PMBOK®」(Project Management Body of Knowledge)。プロダクト開発もまたプロジェクトの1つであるため、PMBOK®は間違いなく役立ちます。今回はPMBOK®をケーススタディで解説した書籍『PMBOKはじめの一歩』(翔泳社)から、そもそもプロジェクトマネジメントがどういうもので、どんな価値があるのかを紹介します。

本記事は『PMBOKはじめの一歩 スッキリわかるプロジェクトマネジメントの基本』(飯田剛弘、奥田智洋、國枝善信)の「Instoduction PMって何だろう?」から一部を抜粋したものです。掲載にあたって編集しています。

また、本記事において「PM」はプロジェクトマネジメントを指していますので、読み進める際にご注意ください。

PM(プロジェクトマネジメント)って何?

 まずはプロジェクトマネジメントという言葉を「プロジェクト」と「マネジメント」に分けて説明していきたいと思います。

プロジェクトとは

 PMBOK®では、プロジェクトとは「独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期的な業務である」と定義しています。

 ここで創造されるものとは、プロジェクトの成果物のことをいっています。例えば、工場などで作り出されるような製品(有形)や、業務を効率よく進めるためのプロセス(無形)があります。また、ここで生み出されるものは1つとは限りません。

独自性があるということ

 PMBOK®の記述の中に、「独自」という言葉もよく使われています。この独自という言葉を理解する際は、「定常業務」と一緒に考えると理解しやすくなります。

 定常業務とは、毎回、同じ作業を繰り返し行い、同じ結果を生み出すものです。それに対して、プロジェクトは、いつもとは異なること、または全く新しいことをやる中で、「独自性」を持って成果を生み出すことです。

 毎回同じプロダクト、サービス、所産を生み出すのではなく、プロジェクトの特性(例:場所、環境、状況、関係者)において独自性があります。

 例えば、工場で決められた仕様と手順で作り出される「犬小屋」を想像してみてください。どのお店に行っても、同じものを購入することができます。このような「同じもの」を作るのは、定常業務です。

 一方、DIYの場合を考えてみましょう。自分で作る犬小屋は、完成イメージ次第で、出来上がるものは変わってきます。例えば、犬小屋を金属で作るのか、木材で作るのかで全く別物になります。質感や色も異なります。また、作る人が変わると、作り方も異なり、違う犬小屋が出来上がったりします。これは、プロジェクトになります。

 では、プロジェクトと定常業務には何の関係性もないのかというと、そうではありません。工場で決まった犬小屋を作るのは定常業務ですが、お客様の新たなニーズに応えるため、今までにないデザインの犬小屋を作ることはプロジェクトになります。

 皆さんも定常業務の中で起こった課題を解決するために、何か新しい取り組みを考えて、実行するといったことはあるでしょう。これがプロジェクトです。

 つまり、定常業務のニーズはプロジェクトになります。この課題解決を目的に定常業務から切り離された新たな業務として、プロジェクトが発足します。そして、プロジェクトが立ち上がった後も、人や資源の多くは定常業務から供給されます。このように「プロジェクト」と「定常作業」というのは、常に関係性を保ちながら進んでいるのです。

有期性があるということ

 PMBOK®のプロジェクトの説明でもう1つ、「有期性」という言葉があります。この有期性というのはどういったものでしょうか。

 例えば、新しいデザインの犬小屋を売り出すプロジェクトだと、発売日までに、商品企画や試作、生産などが終わっていなければなりません。そこには、絶対厳守の期限という「終わり」と同時に、プロジェクトを開始するという「始まり」があります。

 いつに間にか商品企画をやっていたとか、気が付いたら試作品を作り始めていたとか、ということはありません。この「始まり」と「終わり」があるということが、「有期性のある」ということです。

 ここで注意したい点は、全てのプロジェクトが成功して終わるわけではないということです。以下は、プロジェクトの終了の一例です。

  • プロジェクトの目標が達成された
  • プロジェクトを進めるための資金援助が無くなった
  • 他の新しいプロジェクトのほうが効果があると判明した

 海外映画などでも、研究者が国から資金援助を断られてプロジェクトが終了し、悪の道に進むシーンもあったりします。いずれにせよ、プロジェクトというのは、その期間の長い、短いにかかわらず、始まりと終わりが必ずあるということを覚えておいてください。

図1 プロジェクトと定常業務と関係性
図1 プロジェクトと定常業務と関係性

マネジメントとは

 ここまでで、プロジェクトとは何をすることなのかが理解できてきたと思います。では次に、「マネジメント」という言葉を見ていきたいと思います。

 「マネジメント」という言葉や、それに近い言葉でマネジャーという言葉はよく耳にすると思います。例えば、テレビ番組に芸能人のマネジャーが登場したり、プロスポーツ選手の海外挑戦を代理人がマネジメントしているというニュースが流れたりしています。

 マネジメント(Management)の和訳としては、「経営」や「管理」という言葉がよく出てきます。この2つの言葉だけを聞いてしまうと、何か堅苦しいことを想像してしまうかもしれません。また、ものすごく自分よりも上のレベルのことを望まれているように感じるかもしれません。

 ですが、プロジェクトマネジメントとしてのマネジメントは、もう少し現場寄りの意味合いが強く、身近なものだと感じています。よく言われるたとえですが、プロジェクトマネジメントの役割は「カーナビ」のようなものです。

 まず、ドライブの目的によって、どこへ行くのか目的地(ゴール)を設定します。次に、目的地にたどり着く(最終成果物を生み出す)ためのルートを検索して(プロセスを設計)、選びます。

 このとき、有料道路を使うのか(コスト)、何時に到着するのか(スケジュール)などを踏まえるでしょう。そして、カーナビは適切に案内してくれます。その途中、渋滞(リスク)に巻き込まれないように回避ルートを教えてくれたりします。このように、何とかして、できるだけスムーズに目的地に着こうとするのがプロジェクトマネジメントです。

PMは成功と幸せの手助けをする

 「プロジェクトを成功させることは難しい、大変だ!」という声をよく耳にします。プロジェクトというのは「やったことのないこと」を「決められた期日までに」やり遂げることであり、この「独自性」と「有期性」という2つの特性が多くのプロジェクトマネジャーを苦しめています。

 しかし、プロジェクトマネジメントを正しく活用すると、計画に沿って効率よくプロジェクトを進めることができます。また、予期せぬ変更にも柔軟に対応していくことができます。プロジェクトは成功に向かい、関係者に新たな価値や幸せをもたらします。

 そこで本書では、プロジェクトマネジメントのプロセスとはどのようなものなのかといった「技術」と、それらをどのようなスキルや原則のもとになりたっているのかといった「技能」の両面を、お伝えしていきます。

 読者の皆さんが、プロジェクトの成功確率を上げるだけでなく、プロジェクトマネジャーとして意義を感じ、幸福感を持ちながら遂行していただけることを期待して、丁寧に解説していきます。

PMBOK®って何?

 さて、ここまではPM(プロジェクトマネジメント)について説明してきましたが、ここでは今までの説明の中で度々出てきた言葉の「PMBOK®」についてお伝えします。

 PMBOK®(Project Management Body of Knowledge)とは、米国PMI(Project Management Institute:プロジェクトマネジメント協会)がまとめたプロジェクトマネジメントの知識体系(Body of Knowledge)のことです。様々な産業のプロジェクトからプロジェクトマネジメントに関する優れたノウハウを収集し、体系化したものです。「PMBOK®ガイド」として、2021年現在では、第7版まで刊行されています。

 なお、PMBOK®第6版までと、第7版とでは、内容が大きく変化しています。PMBOK®の全体的な解説は、Chapter05とChapter07でご説明しますので、ここでは、大まかな構成をご紹介します。

 PMBOK®第6版までは、プロジェクトの知識体系をプロセスごとに分けて整理しています。5つの「プロセス群」に対して、プロジェクトマネジメント作業ごとに細分化した10個の「知識エリア」とのマトリックス図を整理し、それぞれのプロセスを定義しています。

図2 10の知識エリア
図2 10の知識エリア

 そして、各プロセスについて、プロジェクトマネジャーが行うことが推奨されるベストプラクティスを一つひとつ丁寧に解説しています。つまり、過去の現場のプロジェクトマネジメントの実践に基づいた、具体的なノウハウの蓄積が、PMBOK®第6版です。

 PMBOK®第7版では、知識体系を整理するための観点が大きく変わり、「プロジェクトマネジメントの原理・原則」ベースでの標準を整理しています。これは、第6版までの「プロジェクトの具体的な成果」も重要ですが、それ以上に、「プロジェクトによる結果や価値」が重要であるとの考え方からです。また、「原理・原則」ベースでプロジェクトマネジメント活動を行うにあたり、プロジェクトの成果を効率的に提供するための行動指針として、「プロジェクト・パフォーマンス領域」を定義しています。

図3 プロジェクトマネジメントの原理・原則
図3 プロジェクトマネジメントの原理・原則
図4 プロジェクト・パフォーマンス領域
図4 プロジェクト・パフォーマンス領域

【PMから得られるもの①】ビジネスの価値

 プロジェクトマネジメント、および、PMBOK®は、単純にプロジェクトを成功させることだけを目標としたものではありません。プロジェクトを成功させ、その先にあるビジネスの価値をもたらすことを目標としています。

 あなたが何か作業を行うときのことを考えてみてください。例えば、愛犬のために犬小屋を作ろうとしたとします。デザインや寸法、材料などを決め、DIY作業を行い、犬小屋を作ります。

 このとき、あなたは、ただ単に犬小屋を作るだけの作業を実施するでしょうか? きっと、そうではないと思います。愛犬のために、色々なことを考えると思います。

  • 愛犬が出入りしやすくするための入口のサイズの調整
  • 愛犬が暖かく過ごすことのできる材料や内装の選定
  • 木材のトゲにひっかけてケガしないようにするためのヤスリ掛けなどの工夫

 などなど……。

 これらの工夫は、「愛犬が安全に、快適に過ごせるように」という大切な目的のために行われるものです。プロジェクトマネジメントは、このようにプロジェクトをただの「作業」に留まらせず、プロジェクトの成功がもたらす「ビジネスの価値」を重視したマネジメント活動です。

図5 ビジネスの価値
図5 ビジネスの価値

【PMから得られるもの②】プロジェクトの円滑な推進(QCD)

 プロジェクトマネジメントのキモの1つは、プロジェクト開始時に綿密な計画を立てることです。特に、品質(Quality)、費用(Cost)、納期/スケジュール(Delivery)の3つに関する計画をしっかりと立ててからプロジェクトに臨みます。これら3つの頭文字を取って、「QCD」と呼びます。そして、QCDを中心に計画通りに実施できているかチェックしながら、プロジェクトを進めていきます。

 プロジェクトは、行き当たりばったりに行うものではありません。プロジェクトマネジメントにより、しっかりと計画を立て、それをきっちりと遂行し、プロジェクトを適切にコントロール・対応していくことです。

図6 プロジェクトの円滑な進捗
図6 プロジェクトの円滑な進捗

【PMから得られるもの③】チームとうまく進める(コミュニケーション)

 基本的に、プロジェクトは一人だけで成り立つものではありません。プロジェクトの発起人や出資元であるスポンサー、顧客、プロジェクトチームメンバー、そしてプロジェクトマネジャーがいます。そういった複数の人たちが協力して、プロジェクトを進めていきます。

 プロジェクトマネジメントでは、まずプロジェクトの目的、目標を明確化し、プロジェクト関係者全員の意思を統一します。また、どういった関係者がいるかリストアップし、関係者間でのコミュニケーションをいつどのように取っていくかを計画します。

 そして、計画に沿うことで、プロジェクト関係者が一丸となって、個々の力を発揮しながら遂行していくことができるのです。

図7 チームとうまく進める
図7 チームとうまく進める

PMはすべての活動に使える!

 プロジェクトマネジメントやPMBOK®は、システム開発や建設といったプロジェクトだけではなく、実際には、すべての活動に対して活用することができます。なぜなら、プロジェクトマネジメントは、ビジネスの目標に対して、関係者間で適切にコミュニケーションを取り、一丸となって取り組むためのマネジメント活動だからです。

 プロジェクトマネジメントの根本的な目的は、価値提供です。ビジネスであれば、ベネフィット(利益)や効果をもたらすことが目的となるでしょう。環境問題のプロジェクトならば、その環境問題の原因を取り除いたり、環境悪化の抑制だったりが目的となるかもしれません。どんなプロジェクトにせよ、すべての関係者の満足度を高めることが重要です。

 さらにもっと身近な話で、運動不足の解消を考えてみましょう。例えば、どのような運動をどれだけの期間行うのかを明確化して、スケジュール管理することができます。品質管理という視点では、運動した時間を記録し、目標に達したかどうか評価する、といったこともできます。他にも、リスク管理として、運動を妨げる要因を洗い出して、事前に対策することもできるでしょう。

 このように、プロジェクトマネジメントの手法は、あらゆる活動に活用することができ、目的達成のための一助となることでしょう。

図8 PMはすべての活動に使える
図8 PMはすべての活動に使える
図9 プロジェクトのプロセス群と10の知識エリア
図9 プロジェクトのプロセス群と10の知識エリア
PMBOKはじめの一歩

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PMBOKはじめの一歩
スッキリわかるプロジェクトマネジメントの基本

著者:飯田剛弘、奥田智洋、國枝善信
発売日:2022年2月7日(月)
定価:1,980円(本体1,800円+税10%)

本書について

「テーマパーク企画にPMを導入したらどうなる?」「夏まつりにPMを導入したらどうなる?」など、 ユニークなケーススタディを交えつつ、PMの概要や導入のメリットについて丁寧に説明しています。

 

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