DX推進の上流から組織変革、新規事業創出、プロダクトの企画・開発・運用を一貫してサポート
──最初に「アイスリーデザイン」の企業概要をご紹介ください。
芝:当社(株式会社アイスリーデザイン)は現在、主に大企業のDX推進に関連して、上流のビジネスコンサルティングから、新規事業創出、組織変革、実際のプロダクトの企画、開発、運用までを一貫してサポートする事業を展開しています。この業態が中心になったのは、比較的最近で、2011年からになります。正確には2006年の設立時は別の事業をやっていましたが、2011年にデジタルマーケティング領域のSaaSベンダーとしてスタートし、現在の事業にピボットしています。
当初は、オンリーワンポジションのサービスでしたが、テクノロジートレンドの変化などの要因もあり、売上が頭打ちになる中で、並行してクライアントワークも請け負うようになります。もともと、自社でプロダクトを作っていたので、エンジニアリングやデザインを含む、プロダクトづくりのスキルとノウハウを持っていたのです。
ただ、クライアントが事前に作った要求どおりに開発をし、納品をして終わりといった、いわゆる旧来型の「受託開発」的な案件については、「言うとおりに作ってはみたものの、できあがりは微妙」な結果になってしまうことも多く、われわれとしても不本意に感じることが多くありました。
そんなとき、あるクライアントから「御社の作るプロダクトは、UI/UXが優れていますね」という評価をいただきました。われわれとしては、指摘されるまで、あまり自覚していなかったのですが、自社プロダクトを開発する中で、UI/UXの重要性については常に意識をしており、それがクライアントワークにも生かされていたのだと思います。
そこで、改めて「質の高いUI/UX」をわれわれの強みと捉え、クライアントワークにおいても、コンセプトや企画づくりの段階から参画し、UI/UXに優れたプロダクトづくり、運用までを一貫してお手伝いするという現在の業態へシフトしました。

DXに向けた企業の組織変革に伴走する「アイスリー式 変革支援」とは?
──現在展開している「アイスリー式 変革支援プログラム」は、そうした企業支援のスタイルを、フレームワーク化したものと捉えてよいのでしょうか。
山本:「アイスリー式 変革支援プログラム」では、新規プロダクトに関わる企画、開発、運用の領域だけでなく、DXへ取り組もうとしている企業の「デジタル人材育成」「組織変革」支援を含めた部分まで、サービス領域を拡張していることが特長になります。

サービスは大きく「Human」「Tech」「Ops」の3領域に分かれます。
「Human」の領域では、独自の「ヒューマンイノベーションプログラム」を提供します。社員の中から、30名程の次世代のデジタルリーダーとなってほしい人材を選出してもらい、われわれがワークショップを実施します。その中で、思考や意識の変革、ビジネス課題の抽出、課題解決に向けたアイデア創出などを実践していただきます。
「Tech」の領域では、「Human」の段階で抽出されたビジネス課題をプロジェクト化し、デジタル技術を活用しての解決に取り組みます。ここでは、われわれがサポートする形で、PoC(概念実証)やプロジェクト評価、アジャイル型の継続開発などを実際に行います。
最後の「Ops」では、プロジェクトでの取り組みを組織に根付かせ、最終的にクライアントが自走できるようになることを支援します。企業や組織が、継続してイノベーションを生みだすための仕組みづくりや、レギュレーションの整備といった支援を行います。
これらの支援を、組織ごとに適切なフェーズで順に提供していくというのが「アイスリー式 変革支援プログラム」になります。

──日本の大手企業では、こうした包括的な形でのDX支援を必要としているケースが増えているのでしょうか。
芝:そう感じています。デジタル技術を積極的にビジネスへ生かしていかなければならないという機運は、あらゆる業種、業界で高まっています。その中で、何らかのシステムを作る際にも、従来のようなSIerに丸投げで外注するスタイルを変え、自社内にデジタル変革をきちんとマネジメントできる人材を育てたいというニーズが増しています。その要望に対し、アイスリーデザイン自身が培ってきた、事業会社としての人材育成経験を踏まえた上で、ノウハウを提供できる点が強みになります。
山本:特に多いのは、これまであまりIT領域に関わってこなかった、ビジネスサイドの人たちに、デジタルマネジメント人材としての知見を身につけてほしいというものです。ワークショップに取り組む人材の選出にあたっては、われわれからも、ビジネス部門で業務にあたっている人を中心に選んでいただくことを推奨しています。
“テクノロジーを理解できるビジネス人材”へのニーズが高まる
──デジタルを活用した課題解決を実践する「Tech」のフェーズでは、そうしたビジネスサイドの人々に対して、どのようなノウハウを提供するのでしょうか。
山本:このフェーズでは、実際の実装作業を詳細に教えるというより、「プロジェクトマネジメント」の方法論や、データやシステムを通じて課題解決を図る「システム思考」のプロセスを身につけてもらうことに主眼を置いています。
実装については、アイスリーデザインが担当します。開発プロセスには、アジャイルやリーンといった、スピード感を持って、品質の高いプロダクトを作っていけるような手法を採用するので、クライアント側には、プロダクトオーナーの立場で、成果物を正しく評価し、プロジェクト全体のマネジメントがうまく進められるようになっていただくことを意図しています。
──フレームワークを見ると、「Tech」の領域において、手法としての「アジャイル」と並び、「デザイン(Design)」が立てられているのが特長的ですね。それだけ「デザイン」に対する、組織の意識を変えていくことが、DXには重要だということでしょうか。
芝:ここでの「Design」は、見栄えのような「ビジュアル」のみを指すのではなく、プロダクトが提供する価値や機能と密接に結びついて、UXを構成する要素を指しています。われわれは、プロダクトベンダーだったこともあり、プロダクトづくりにおいて、UI/UXのデザインを、いかに作り上げていくかについて、常に意識と試行錯誤をしてきました。
プロダクトにおけるUI/UXの重要さは、これまでもさまざまな機会に強調されてきましたが、現実問題として、特に大手企業が主導するプロダクト開発では、「エンジニアリング」と「デザイン」との間にギャップがあり、結果としてUXが損なわれていることが多いと思います。

──「ギャップ」の原因は、どこにあるのでしょう。
芝:大きなものとしては、従来の、SIerに外注するシステム開発のプロセスが、新規のプロダクトづくりにも、そのまま継承されてしまっていることがあると思います。
従来型のSIによる典型的な外注プロセスでは、はじめに要件定義を行い、そこから機能要件を抽出します。次に、機能要件に合わせて画面設計を行い、最終的にそれに合わせてUIの「デザイン」を行います。この場合、システム的な「機能」であったり、「オブジェクト」の定義であったりが先行し、最後に「デザイン」の工程がきます。多くの場合、システム実装を行う開発会社と、UIを担当するデザイン会社は、個別にアサインされており、結果として、ユーザー体験が十分に考慮されていない、あるいは、考慮していたとしても、プロダクトに反映できないケースが多くなります。
アイスリーデザインが手がける案件では、プロダクトづくりのプロセスそのものが、大きく異なります。最初の工程で、ペルソナ設定や、カスタマージャーニーマップといった手法を用いて「提供したいユーザー体験(UX)」を定義します。UXの定義から、機能要件を抽出し、システムとして実装するためのオブジェクトやスキーマの設計を進めます。それらがまとまった段階で、ユーザーのアクションに対するシステムの振る舞いを作り、それに合わせたUIデザインが行われます。
UIデザインの工程では、UXの定義を踏まえた「エンジニアリングとデザインの連続性」が不可欠です。アイスリーデザインでは、プロダクトベンターとしての実績を通じて、デザイナーも、エンジニアリングを理解した上で、適切なUIデザインができるスキルを備えています。「クリエイティブ」と「エンジニアリング」の双方を理解したデザイナーと、UXを考慮してシステムを実装するエンジニアが、十分にコミュニケーションしながら開発を進めることで、品質が高いプロダクトを、より短期間にリリースすることができます。
山本:プロダクトづくりにおいて、エンジニアリングとデザインの連続性が重要なことを示す典型的な例としては、当社で支援させていただいた、オムロン ソーシアルソリューションズ様の事例が挙げられると思います。
同社では、地域共生型MaaS(Mobility as a Service)「meemo(ミーモ)」を展開しています。これは、送迎が必要な人と、登録ドライバーをマッチングすることで、公共交通機関が使いづらい地域における、交通課題を解決しようという試みです。マッチングのためのアプリは、meemoのコンセプトを実現する上で不可欠ですが、プロトタイプの段階までは、システムとデザインを、それぞれ別のSI会社、デザイン会社に外注していました。
2020年に行われた実証実験では、サービス自体のコンセプトは高く評価された一方、アプリの機能や使い勝手に対するネガティブなフィードバックも多く寄せられました。機能追加やアプリのUI改善を検討していくにあたり、開発とデザインが分離していることによる不都合も見込まれたため、UI/UXのデザインだけでなく、フロントエンド、バックエンドのエンジニアリング全体を引き受けられる会社として、アイスリーデザインを指名していただいた経緯があります。
(※「meemo」事例についての詳細は、リンク先のホワイトペーパーでご覧いただけます)
芝:市場においても、顧客接点を強化するためのプロダクトや、変化の激しい領域に向けたプロダクトは、従来のやり方で作っていてはいけないという認識が広がってきているようです。エンジニアリングとデザインを、一連のものと捉えることで、ビジネスに貢献する、価値の高いプロダクトが生み出せるというコンセプトについても、理解していただける機会が増えていると感じます。
DXに向けた変革を「自走」できる日本企業を増やしたい
──最後に、「アイスリー式 変革支援プログラム」を通じて、企業にどのような価値を提供したいと考えておられるかをお聞かせください。
芝:近年、日本企業においても、DXを意識したプロダクト開発の「内製化」を進めていきたいというニーズが高まっています。一方で、そのための方法論や具体的な手法についてはノウハウが乏しく、実践に至れない企業が多いのも事実です。
欧米で、DXを実践している企業を見ると分かるのですが、日本企業がこれまでのシステム開発で行ってきたようなやり方とは、プロセスや手法がまったく異なっています。そのプロセスや手法を取り入れることなしに、本当の意味でのDXを実現していくことはできないと、私は考えています。そのためのノウハウを、このプログラムを通じて、多くの企業に取り入れていただきたいですね。
山本:このプログラムでは、最初こそ、われわれがクライアントの組織に「伴走」する形で支援を行いますが、最終的な目標は、クライアント自身が、デジタルマネジメント人材を育成し、DX推進のための取り組みを続けられる「自走」を促すことにあります。多くの企業が、このプログラムの「卒業生」となり、次々とイノベーションが生みだす環境を作っていくことを目指しています。
データが紐解く「DX遅れ」の要因と対策とは? アイスリー式企業変革メソッド Vol.2 Tech編

今回の記事で語られた「アイスリー式 変革支援プログラム」のオムロン ソーシアルソリューションズ社における事例詳細をはじめ、「Tech編」のホワイトペーパーでは、野村総合研究所 常務取締役 / SCSK 代表取締役副社長などの要職を歴任された有賀貞一氏との「これからの時代に求められるソフトウェア開発」に関する対談など、全25ページにわたり、ソフトウェア開発における、さまざまな知見が散りばめられています。無料ダウンロードできるため、ぜひご一読ください。
ダウンロード:アイスリーデザインHP
- 特集1:「DX INSIGHT 調査データから紐解く“DX遅れ”の要因と対策~有賀貞一氏インタビュー~」
- 特集2:CASE STUDY「実装出来ないデザイン!? 事業会社が直面したプロダクト開発でのトラブル~オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社様~」
- 特集3:COLUMN「価値提供の変革を」