2019年以降、年々増加傾向にあるプロダクトマネージャー職
──クライス&カンパニーの概要、およびお二人の経歴についてご紹介ください。
松永拓也(以下、松永)氏:クライス&カンパニーは2023年に30期目を迎える人材紹介会社です。ハイクラス人材と呼ばれるような経営の要になる方々の転職のご支援を得意としています。プロダクトマネージャーも経営の要の人材ということで及川卓也さんに顧問となっていただき注力しています。
私はメーカーの営業職をしていて、2012年ごろから転職エージェント業界に入り、ITやDX人材の支援をするようになりました。
松永拓也(まつなが・たくや)氏
大手食品メーカー、大手人材紹介会社を経て2018年にクライス&カンパニーへ入社。IT/Web業界に強みを持つキャリアコンサルタントとして10年以上の経験を持つ。2019年プロダクトマネージャーチームの立ち上げを行い、これまで250名以上のプロダクトマネジメントのキャリア面談を実施。2021年プロダクトマネージャーカンファレンス登壇。
山本航(以下、山本)氏:私は日系のコンサルティングファーム出身で、クライス&カンパニーには2018年に入社しました。以前はコンサルファーム出身者など、ビジネス人材を主に担当していたのですが、近年ではプロダクトマネージャーに注目していて、松永と共にプロダクトマネージャーのキャリア・転職支援サイトやnote、ポッドキャストでも情報発信をしています。国内では一番情報発信できているのではないかと思います。
山本航(やまもと・わたる)氏
日系戦略コンサルティングファームを経て2018年にクライス&カンパニーへ入社。主にプロダクトマネージャーやコンサル出身者のキャリア支援を専門とし、Podcast番組「プロダクトマネージャーのキャリアラジオ」のパーソナリティを務める。2022年プロダクトマネージャーカンファレンス登壇。
松永:プロダクトマネージャー採用支援チームは5人ほどで、2022年には500人ほどのプロダクトマネージャー希望者にお会いしています。
──求職者はすでにプロダクトマネージャーの方と、これからなりたい人ではどちらが多いですか。プロダクトマネージャー求人の状況をお教えください。
山本:われわれがお会いしている方々の6割ほどが現役プロダクトマネージャーの方で、残りが未経験の方です。現役の方の内訳はジュニアと呼ばれる経験1年〜2年が5割ほどで、残りのうち3割がミドルクラス、2割がマネージャークラスです。
未経験者で一番多いのはエンジニアでプロジェクトマネジメントの経験を持たれる方や、自分ではコードは書かないものの仕様や要件定義、進捗管理できる人ですね。次に多いのが事業企画や事業開発、セールス、カスタマーサクセスを経験してきたビジネス人材。人数的には少ないのですが、デザイン系出身の方もいらっしゃいます。
プロダクトマネージャーの求人自体は年々伸びています。2019年頃は、プロダクトマネージャー職があまり有名ではありませんでしたが、及川のようなビッグテック出身者やLINEやメルカリなどのメガベンチャーが注目されるようになり、2020年ぐらいから徐々に増えてきました。コロナ禍とDXによってSaaSが伸びて増えて、今では多くの企業がプロダクトマネージャーを求めるようになっています。また、厳密には違う職種なのですが、ついこの間までWebディレクターと言われていたポジションがプロダクトマネージャーと名前を変えて募集されているようなことも起きています。
同時に求職者も増えていますね。当初はプロダクトマネジメントやそれに近しい経験のあるミドルクラスが動き始めていましたが、今では未経験でもプロダクトマネージャーを目指す人が増えています。
プロダクト組織を大切にする企業を見極めるには
──求人と求職者の需給バランスや年収はいかがですか? また、プロダクトマネージャーの業務はさまざまですが、求人の際に明確に示されるのでしょうか。
松永:ミドル・シニアクラスは圧倒的に企業からの需要が多くて求職者の供給が追いついていない状況です。ジュニアや未経験者の採用も増えていますが、この層は需要より供給が多いです。プロダクトマネージャーを育成できる企業がまだ少ないからですね。
山本:年収は上昇傾向にあります。特にミドル・シニアクラスは需要が多いため複数社から内定が出て、年収が上がる傾向にあります。これはプロダクトマネージャーに限らず、テック系人材の年収が底上げされているという傾向がベースにあります。
プロダクトマネージャーの仕事の定義は人それぞれ、企業や事業ごとに異なるので混乱していると言えます。比較的うまくいっている企業は、業務内容にWhy、What、Howを盛り込んでいます。なぜ顧客にそのプロダクトを届けるのか、どんな業務をどのように行うかをきちんと説明できます。私たちも採用企業との打ち合わせを通じて、「なぜこのような意思決定をするのか」「どんな順番やロジックを大事にしているか」といった情報を確認し、明確に提供される求人は自信を持って求職者の方へご紹介できます。求職者にもプロダクトマネージャー職の選び方の注意点としてお伝えしています。これにコンシューマー向け、法人向け、スタートアップ、大企業による違いはありません。
松永:具体的には、社長などの経営陣や営業担当など、プロダクト組織でない人がどれだけプロダクトを語れるかで見極めをしたらいいとアドバイスします。会社全体としてプロダクト組織を大切にしているか分かるからです。
また、ジョブディスクリプション(業務内容)に業務をできるだけ細かく書く努力をしていない企業があります。本当にプロダクト組織を大事にしたいなら、しっかり書くべきです。ここをおろそかにしている企業はプロダクトマネージャーを何でも屋としてあつかう傾向にあります。実務レベルでやること、やらないことを明確にしているのがいい企業なので、見極めのポイントと言えます。