今回の対象読者
- プロダクトマネージャーとしての成長に悩んでいる方
- プロダクトマネージャーになったばかりの方
- これからプロダクトマネージャーを目指したいがスキル獲得の方法に悩んでいる方
はじめに
はじめまして、久津と申します。株式会社グロービスで「GLOBIS 学び放題/GLOBIS Unlimited」の法人向けプロダクトのプロダクトマネージャーを務めています。
これまでのキャリアでは、大手日本企業・メガベンチャー・スタートアップなどさまざまな規模やフェーズの企業で、エンジニア・プロジェクトマネージャーを経てプロダクトマネージャーとなりました。
これまでキャリア系のイベントに登壇させていただく機会があったのですが、この経歴を説明すると「プロダクトマネージャーにジョブチェンジする際にどうやってスキルを獲得しましたか?」といった質問をいただくことがよくありました。
最近は「プロダクトマネジメントトライアングル」(日本語訳)といったプロダクトマネージャーに必要なスキルが体系化されたものや、『プロダクトマネジメントのすべて』といった書籍など、学習する方法も増えてきたため、プロダクトマネージャーとしてはいい時代になったなと思います。
もちろんこのような「形式知」からの学びも多いのですが、私自身の過去を振り返ってみると「自身のさまざまな経験からの学び」が強いスキルとなり今も役立っているなという印象です。
そこでこの記事では、プロダクトマネジメントに必要なスキル獲得の方法のうち、自身の経験から学ぶ際に必要なマインドセットについて書いてみたいと思います。
プロダクトマネージャーが置かれている環境とは
プロダクトマネージャーが日々の仕事の中で対峙する相手はプロダクトそのものだけでなく、ユーザーやマーケット、その先の社会や文化、組織やチームメンバー、さらには自分自身まで含めると、非常に多岐に渡ります。そしてこれらの相手すべてに共通するのは「複雑系」であるということです。
複雑系とは、「複数の要因が合わさって全体として何らかの挙動を発生させるが、要因と全体の挙動の因果関係が明らかではないシステム系」を意味します。例えばマーケットは分かりやすい例かと思います。技術の進化・社会の変化・参入プレイヤーなどさまざまな要因によって日々ダイナミックに変わっていきますが、その挙動の正確な予測は困難ですし、「Aを行えば必ずBになる」のようにシステマチックにコントロールできるものではありません。同様に組織の挙動もこれまでの歴史や風習などに左右されますし、ユーザーやチームメンバーなどの個人レベルでもその意思決定プロセスや行動要因は非常に複雑です。
しかし、プロダクトマネージャーはこのような複雑系をうまくコントロールして目標に導くことが求められます。ユーザーに自分たちのプロダクトを使ってもらう、マーケットにフィットさせる、組織にプロダクトマネジメントを定着させる、チームパフォーマンスを最大化させるためにチームメンバーを動かす、など。
これを実現するためには、書籍などから学んだ形式知をただ適用するだけでは不十分です。なぜなら、書籍などで綺麗にまとまっているメソッドやフレームワークは、あらゆる複雑系に有用な万能薬ではないからです。書籍などが前提として置いている状況との完全な一致はほぼ起こり得ませんし、そもそもその前提を詳しく知ることも困難です。よくある例として、ただお作法としてのアジャイル開発手法の「スクラム」を導入しただけでワークしないケースが挙げられます。適用する組織がスクラムを開始するための前提(必要条件)を満たしていなければ効果は出ません。
よって、自分が対峙している複雑系に対して、どの知識をどのように組み合わせて適用するべきかを見極める必要があります。言い換えると、対峙している複雑系のシステム構造を理解して、適切な打ち手を選択する必要があります。