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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

ProductZine Day 2025

キーパーソンインタビュー

「プロダクト開発で、もはや避けては通れない『生成AI』にどう向き合うべきか」──曽根原春樹氏翻訳の新刊インタビュー

 2024年6月19日に『生成AI時代のプロダクトマネジメント』(翔泳社)が出版される。本書は米国版Amazonで4.7の高い評価を誇る『Reimagined: Building Products with Generative AI』の訳書である。原著者の一人であるShyvee Shi氏の同僚で、本書の翻訳を手がけたLinkedIn米国本社でシニアプロダクトマネージャーを務める曽根原春樹氏に、本書の魅力について詳しく話を聞いた。

日本と米国で比較する「生成AIを取り巻く環境」とは

LinkedIn シニアプロダクトマネージャー 曽根原春樹氏
LinkedIn シニアプロダクトマネージャー 曽根原春樹氏

──まずは曽根原さんが本書の翻訳を手掛けることになった経緯を教えていただけますか。

 原著者の一人であるShyveeさんは、米国のプロダクトマネージャーコミュニティでインフルエンサーとしてよく知られた存在なのですが、彼女とは同じプロダクトマネージャーとして、LinkedIn本社で一緒に働く機会が多かったんです。

 そんな彼女が『Reimagined: Building Products with Generative AI』を出版したと聞いて。Amazonのレビューを見てみたら、プロダクトマネージャーやアントレプレナーの方から「いろいろな意味でかなり役立っている」といった高評価がついていたこともあり、「もしよかったら日本語に訳してみない?」と僕から持ちかけたのが始まりです。

──本書はプロダクトマネージャーやアントレプレナーの方向けという理解で合っていますか。

 そうですね。プロダクトマネージャーやアントレプレナーの方はもちろんのこと、大企業の新規事業部門で「生成AIを使った新しい事業を立ち上げたい」とか、「既存のサービスを生成AIでより研ぎ澄ましたものにしたい」といったニーズをお持ちの方にもぜひ読んでいただきたいです。あとは、そうした現場の方だけではなく、経営に携わる方も手に取っていただけたら、と。

 「そもそも生成AIとは何か」から始まり、「生成AIを活用したプロダクトビジネスはどうあるべきか」、「生成AIを活用したプロダクトをつくっている現場の人は何を考えているのだろう」といったことまでお伝えしているので、立場に応じて、それぞれ得られるものがたくさんあるのではないかと思っています。

──米国でも生成AIを使ったプロダクト開発には高い注目が寄せられているのでしょうか。

 えぇ。生成AIは、プロダクト開発において、もはや避けては通れないトピックですね。むしろ、プロダクト開発の議論の中で生成AIのワードが出てこなければ、「頭おかしいんじゃないの?」と言われるほどです。当然、議論したうえで「やっぱり今は生成AIじゃないね」という結論に達するのは良いんですよ。でも、「生成AIを使うことで、より魅力的なサービスにできないか」という議論がないまま進んでいくなんて、ありえない。

 スタートアップから大企業まで、生成AIを自社のプロダクトでどう活かそうかと、みんな真剣に考えています。VCのお金が生成AIのスタートアップに大きく流れているのは、間違いないトレンドですしね。

──日本の生成AIを取り巻く現状をどのようにご覧になっていますか。

 最近、ChatGPTを提供するOpenAIが、アジア初として東京に新拠点を設立したというニュースがありましたが、日本でも生成AIが大きな注目を集めるようになっていますよね。すごく良い流れだと思う一方、過去の新しいテクノロジーが出てきたときと同じ轍を踏まないよう、気をつけてほしいとも思っています。やれクラウドだ、ブロックチェーンだ、DXだ、と新しい言葉にすぐ飛びついて、「なんだ、あまり効果はないじゃないか」という人が必ず出てきますよね。

 とはいえ、当時と決定的に違うのは、今はプロダクトマネジメントに対する理解が日本でも広がってきていることです。本書では、こうした新しいテクノロジーを自分のビジネスに取り込むためのプロセスやフレームワークについて、事例を用いながら一歩踏み込んだ紹介をしているので、ぜひ日本のみなさんにもお役立ていただきたいと思っています。

──すでに「ChatGPT使えないな」というつぶやきを目にすることがありますが。

 正直、「どんな使い方しているのですか?」と思ってしまいますね。なんでも100%を求めがちなのは、日本人の悪い傾向です。そもそもChatGPTに100%の正解を求めるのは、完全に間違っている。例えるなら料理本を読んでいるのに、一度も料理を作らないで文句を言うようなものです。GPTモデルがどんなふうに動いているのかを理解していないから、そんな的外れなことをしてしまうんですね。

 もちろん、ハードウェアのように100%に近い状態を追求しなければならない世界があることは分かっています。車なんてある程度の完成度が担保されていないと、人が死んでしまいますから。でもChatGPTはそうじゃない。まずは自分で使ってみて、何が得意で、何が得意じゃないのかを理解したり、期待通りに動かないならその理由を考えたりしてから、自分なりの評価をしてもらいたいと思います。

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生成AI時代になって、変わること・変わらないこと

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この記事の著者

野本 纏花(ノモト マドカ)

 フリーライター。IT系企業のマーケティング担当を経て2010年8月からMarkeZine(翔泳社)にてライター業を開始。2011年1月からWriting&Marketing Company 518Lab(コトバラボ)として独立。共著に『ひとつ上のFacebookマネジメント術~情報収集・人脈づくり...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。 1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテック...

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