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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第3回。オフラインとしては初開催です。

ProductZine Day 2024 Summer

ProductZine Day 2024 Summer

プロダクト開発の先進事例に学ぶ、キーパーソンインタビュー

「プロダクトアナリティクスの導入で分析速度と創出コンバージョンが数倍に」──LIFULLにおけるプロダクトマネジメント導入の舞台裏

 「あらゆるLIFEを、FULLに」をコーポレートメッセージに掲げ、日本最大級の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S(ライフル ホームズ)」の運営のほか、介護や地方創生、ダンスのプロチームの運営など、さまざまなサービスを展開する株式会社LIFULL。同社ではプロダクトマネジメントとプロダクトアナリティクスを導入した結果、大きな成果を上げるに至ったという。これらの導入をリードしたLIFULL HOME'S事業本部 CPO(Chief Product Officer) LIFULL HOME'S事業本部 分譲マンション事業 CEO 大久保慎氏に、その道程を聞いた。

250名規模の組織にプロダクトマネジメントを導入

──まずは大久保さんのご経歴と現在のお役割を教えてください。

 もともと出版社で編集の仕事をしていたのですが、インターネット化の波に遭遇したことを機に、「30歳までにインターネットを活用した情報発信ができるようになりたい」という思いから、エンジニアにジョブチェンジしました。

 その後、コンサルタントを経て、2006年にLIFULLに入社。不動産オークション事業といった新規サービスの立ち上げなど、さまざまな事業に挑戦したあと、LIFULLの国際事業を担当することになったんです。そこでスペインの子会社のM&Aに携わり、そのままそちらへ出向してバルセロナで2年間、ローカライゼーションチームのリーダーを務めていました。

 2017年に帰国したタイミングで、1度LIFULLを離れてスタートアップに転職したのですが、2018年には再びLIFULLに戻ってきました。今はHOME'S事業本部のCPOと分譲マンション事業のCEOを兼任しているほか、サービス企画の人たちが集まるプロダクトプランニング部の部長も務めています。

──プロダクトプランニング部には何名ほどいらっしゃるんですか。

 100名ほどですね。弊社は内製しているので、社内の開発体制でいうと、プロダクトプランニング部の人たち以外にも、エンジニアが業務委託も含めて約200名、デザイナーが約20名います。

──機能別組織になっているということですね。

 そうです。『INSPIRED』(マーティ・ケーガン著/日本能率協会マネジメントセンター)という書籍に感化されて、3年ほど前に弊社でもプロダクトマネジメントをしっかりと取り入れようという話が持ち上がったのをきっかけに、書籍を参考にしながら組織体制を見直しました。

 それまでは、社内にプロダクト開発の型がなく、チームによって職種のコミット範囲にばらつきがあったり、計画通りにリリースすることがプロダクト開発のゴールになってしまっていたり、といった課題があったんです。

 そのときにプロダクトマネージャー・テックリード・プロダクトデザイナーという役割を新設して、それぞれがコミットするプロダクトの価値やリスクを以下のように整理しました。

  • プロダクトマネージャー(サービス企画):ユーザーはこのプロダクトを購入したり選んだりしてくれるのか?(Valuable:価値)/事業として実現・継続が可能か?(Viable:事業実現性)
  • テックリード(エンジニア):私たちはこのプロダクトを開発できるか?(Feasible:実現可能性)
  • プロダクトデザイナー(デザイナー):ユーザーはこのプロダクトの使い方が分かるか?
開発プロセスにおいて、プロダクトマネージャーは主に「企画・ディレクション」に携わる
開発プロセスにおいて、プロダクトマネージャーは主に「企画・ディレクション」に携わる

──『INSPIRED』に則って進めていくことに異を唱える人はいませんでしたか。

 サービス企画・エンジニア・デザイナーのそれぞれのトップで話し合い、「『INSPIRED』の世界観を目指して、ミドルもしっかり巻き込みながらトップダウンで進めていこう」と握っていましたし、CTOやCCOをはじめ、主要関係者には書籍を読んでもらって解像度高くありたい姿を共有した上で推進していましたので。

 とはいえ、まっさらな状態からプロダクトマネジメントを導入したわけではないため、それなりの苦労や難しさはありました。LIFULLは1997年創業で、長年、脈々と受け継がれてきた開発プロセスがある中で、それをガラッと変えるのは、やはり非常に大きなパワーが必要でした。社内にプロダクトマネジメントを体系的に理解している人もおらず、知見がありませんでしたしね。

──それでも結果的にうまくいったのは、なぜでしょうか。

 先に述べた通り、経営層から現場まで、誰もが課題を感じている状態であり、その課題を解決したいという思いが合致していたからだと思います。それに、書籍を読むだけでは分からないところは、有識者の方に直接会いに行ってお話を伺い、組織に反映させることを愚直に繰り返していました。

 LIFULL HOME'Sには約10のプロダクトがあるのですが、すべてのプロダクトマネージャーが集まって、各チームの困りごとを相談し合う場を、隔週で設けていました。それにより、例えば「メンバーがプロダクトマネジメントをやっているという自覚を持てていない」という課題があったときには、「チーム内でプロダクトマネジメントに対する振り返りをしてみては?」というアイデアが出て、実際にやってみたところ、現場の自覚が少しずつ醸成されていった、ということもありました。こうしたすごく地味な積み重ねが、ボディーブローのように効いていったのかな、と思いますね。

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なぜGA4ではなくAmplitude(プロダクト分析ツール)を選んだのか

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この記事の著者

野本 纏花(ノモト マドカ)

 フリーライター。IT系企業のマーケティング担当を経て2010年8月からMarkeZine(翔泳社)にてライター業を開始。2011年1月からWriting&Marketing Company 518Lab(コトバラボ)として独立。共著に『ひとつ上のFacebookマネジメント術~情報収集・人脈づくり...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。 1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテック...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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