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ProductZine Day 2024 Summer

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プロダクトづくりが捗るエキスパートから学ぶFigma/FigJam実践活用術

丁寧な移植作業で課題解決以上の成果──「みんなの銀行」Figma全面移行の道のり

プロダクトづくりが捗るエキスパートから学ぶFigma/FigJam実践活用術 第5回

 デザインツールは、常に技術や環境の変化に対応したアップデートが求められ、時には移行が必要になることもある。しかし、移行は手間も時間もかかるため組織にとっては大きな課題であり、近年のプロダクト開発・運用では開発者やビジネスサイドとの共有にも配慮が求められる。2024年6月にFigmaが開催したウェビナー「Figmaへの移行の実践と、デザインプロセスの変化」では、2023年にデザインツールをFigmaへ移行したみんなの銀行さまをお迎えし、作業プロセスやワークフローの変化についてお話を聞いた。

デザインデータの共有に課題、プロダクトの成長で管理の複雑化も

 「みんなの銀行」は、2021年5月にサービス提供を開始した日本初のデジタルバンクだ。スマートフォンだけでいつでも口座を開設でき、ATMの入出金もアプリだけで完結。口座開設時に同時発行されるバーチャルデビットカードで買い物ができるほか、目的別にお金を整理できる「Box(貯蓄預金)」機能、他の銀行口座やクレジットカードなどを連携させお金の動きをまとめて管理できる「Record」など、デジタルの強みを活かしたサービスを提供し、デジタルネイティブ世代を中心にユーザーから高く評価されている。

利用者にとって圧倒的なフリクションレスをテーマに、新しい銀行体験を提供する「みんなの銀行」
利用者にとって圧倒的なフリクションレスをテーマに、新しい銀行体験を提供する「みんなの銀行」

 今回お話をきいた中野岳(なかのがく)さんは、グラフィックデザイナーからキャリアをスタートし、Webデザインやシステム、アプリなどのデザインを手掛けた後、2021年3月にみんなの銀行へジョイン。現在はプロダクトデザイナーとして、「みんなの銀行」のサービスUI設計およびデザインシステムの構築を担っている。Figmaへの移行プロジェクトは、2022年から2023年にかけて中野さんの主導で行われたものだ。

 WebサイトやUIデザインの世界ではこれまでにもさまざまなツールが誕生し、技術や環境の変化に応じた移行はデザイナーを悩ませてきた。現に、移行したくてもコストやリスクを考えて踏み切れずにいる方も多いだろう。そうした方々に向け、中野さんは冒頭で次のように述べた。

 「過去にご経験のある方はお分かりだと思いますが、ツールの移行はとても大変なことです。今回はスマートな移行テクニックというよりは、泥臭いお話になります。ただ、Figmaへの移行はそれだけの価値があると思います。みんなの銀行がどう考え、どのように進めたのかまでお話しさせていただきたいと思います」(中野さん)

 みんなの銀行がツールの移行を決断した背景には何があったのだろうか。中野さんは大きく2つの理由を挙げた。

 1つは、以前のツール環境ではデザインファイルの共有に工数がかかっていたことだ。同社では毎週末、クラウド上にある最新版ファイルをローカルに保存した上で開発メンバーに配布していた。しかし、全員がツールのライセンスを持っているわけではない。ライセンスを持たない開発者およびその他のメンバーには、すべての画面のブラウザプレビューリンクと書き出した画像(PNG)を配布。さらに更新の差分をExcelで一覧表でまとめ、全員に配布していた。

 この方法は手間がかかり、ミスが起きることもあったという。また、コメントがしにくい、更新部分が分かりにくいなど、情報共有がスムーズにできないことも課題だった。

ファイル共有に関わる課題はFigma移行により解決が見込まれた
ファイル共有に関わる課題はFigma移行により解決が見込まれた

 もう一つは、必要なファイルを探しにくい状態になっていたことだ。サービスの成長や関係者数の増加につれ、徐々にツールのファイルブラウザがプロダクトの管理方針にそぐわなくなっていた。また、ファイルの断片化と属人化がこの問題を複雑にしていた。サービスの画面数が増えたことで1つのファイルに収めることができなくなり、プロジェクトごとに別ファイルが作成されるようになっていたのだ。管理が複雑化し先祖返りが起きることもあったという。

現状のプロダクト規模、組織体制でファイルを管理・共有するにはFigmaが適していると考えた
現状のプロダクト規模、組織体制でファイルを管理・共有するにはFigmaが適していると考えた

 この2つに加え、Figma導入により新たに期待できる利点もあったという。

 「Figmaの機能ならコンポーネントの状態管理が以前のツール以上に効率的になると考えました。開発者もコードに起こしやすい形で状態管理を把握できます。今なら新しく追加されたバリアブル機能など使ってさらにパワフルなコンポーネント集がつくれるのではないかと思います」(中野さん)

次のページ
丁寧なコンポーネント移植が決め手、860枚の画面移行作業の道のり

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この記事の著者

谷 拓樹(Figma Japan株式会社)(タニ ヒロキ)

Figma Japan株式会社デザイナーアドボケート。中小企業向けのSaaS、フリーランスでの受託、起業やスタートアップでの開発チーム立ち上げを経験。Webのフロントエンド開発や、UI・UX設計をおこなう。現在はFigmaのマーケティングやリソースの設計・開発に取り組んでいる。またデザインシステムに...

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