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ProductZine Dayの第3回。オフラインとしては初開催です。

ProductZine Day 2024 Summer

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特集記事

順調なチームを緩やかに蝕むワナを避けるには?──探索により望ましい変化を意図的に作りだす「アジャイルなプロダクトづくり」


圧倒的に変化が足りない

 チームの真の問題は明白です。圧倒的に変化が足りていません。これには「自分たちのチームとして」という意識の高さが、その思いの裏腹として、現状維持を助長してしまうという背景があります。

 「“自分たちのチーム” としてという意識がある」とは、チームに必要な意思決定を「自分たちの軸」で行えるということです。自分たちのチームらしい判断の基準が明確に、あるいは何となくチームの中に存在する状態です。例えば、それは「自分たちのペースかどうか」「自分たちらしいかどうか」「自分たちが楽しいかどうか」といったものです。いずれも、良いチームが留意する、「らしい軸」と言えます。

 そもそも判断とは、ある選択肢を採用し、別の選択肢を落とすということです。ですから、判断軸自体の良しあしではなく、必ず大小のトレードオフが伴うことになります。例の「らしい軸」で言えば、

  • 「自分たちのペースかどうか」
    • →ペースを変えない=いつもより余分なことはやらない
    • →チャレンジ機会が減る
  • 「自分たちらしいかどうか」
    • →自分たちらしさの維持 = “昨日の自分たち” の雰囲気の維持
    • →判断が変わりにくい
  • 「自分たちが楽しいかどうか」
    • →ストレスになりうることを避ける = 慣れているほうを選ぶ
    • →未体験に手が伸びにくい

 「チャレンジしない」「判断を変えない」「慣れないものを避ける」と、そのようなスタンスを取っているつもりはないにも関わらず、結果的にはそうなっている。これはチームの意志に反した「構造的なチームの不具合」と言えます。

 意志とは別のところで生じる不具合を検出するためには、チームを客観的に「診る」ための仕組みが必要となります。その一つが、チームで定期的に「問い」に向き合うことです。例えば、

 「チームが顕著な変化を取り入れたのはいつのことでしょうか?」

 この問いの回答に窮してしまう。あるいは、遠い過去まで遡らなければならないとしたら、状況としては赤信号かもしれません。しかし、そんな風に言われたら、別の思いが湧いてくるかもしれません。

 「確かに答えられないけど、これまで通りの成果は安定してあげられているんだけど」

 そう、ここにも罠があります。これまでのとおりの成果とは、これまでの評価基準に基づくものです。その中身は、売上や利益、そのための各種KPIを指しているかもしれません。それらの評価基準は、これから先に向けても有効なものなのでしょうか。これからも、プロダクトがユーザーに必要とされ続けることを担保するものさしなのでしょうか。

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3つの視点によるむきなおり

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市谷 聡啓(イチタニ トシヒロ)

株式会社レッドジャーニー代表 サービスや事業についてのアイデア段階の構想からコンセプトを練り上げていく仮説検証とアジャイルについて経験が厚い。プログラマーからキャリアをスタートし、SIerでのプロジェクトマネジメント、大規模インターネットサービスのプロデューサー、アジャイル開発の実践を経て、自らの会社...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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