生成AI活用による「お客さま向けのコンテンツ生成」、生成AIによって実現できたこと
高橋:生成AI活用の一つとして取り組んできた「お客さま向けのコンテンツ生成」についてやってきたことを教えてください。
宮田:お客さまが旅行を検討される際に、さまざまな情報を見て判断されるわけですが、NEWTでは「旅行ガイド」という記事を提供させていただいております。
世界中の国やエリアにおいて、旅行のモデルコースや、過ごしやすい時期などといった情報を作る必要があるのですが、網羅的に情報をそろえるのはハードルが高いので、LLMを活用したシステムを作らせていただきました。
これによって、さまざまな旅行ガイドのアイデアやドラフトを作れるようになりました。なおかつ、そこに人間のチェックを入れながら記事を構築していくことで、数百本という記事を短期間で作ることができ、結果として、5月からと比べて今(8月)は閲覧数として1.9倍になりましたし、それにともなってNEWT自体への流入も増えたのは成果の一つと考えています。
また、海外旅行予約アプリ『NEWT』本体にある旅行ツアー詳細ページの改善にも取り組んでいます。お客さまがツアーを予約する前にツアーの内容を確認することができるページなのですが、こちらのページの情報を豊かにしていくといった取り組みですね。
高橋:質の高い記事を、短期間に数百本というペースで作っていけるのはスタートアップとしてはかなり大きな改善ですね。また、ツアー詳細ページに関しても改善ができるのは、いわゆるOTA(Online Travel Agency:オンライン旅行代理店)ではなく、旅行商品自体も手掛けているサービスならではの取り組みですね。
宮田:おっしゃるとおりです。旅行先の情報をコンテンツとして作っていくだけでなく、商品を作るという部分に関してもLLMを使うことの重要度は高いと思っています。
こちらは業務効率化にもつながっている話です。商品開発自体のコストを下げることができれば、商品原価が下がり、粗利に直結していくので、非常に大事な部分です。
高橋:コンテンツ作成とかツアー詳細ページの生成AI活用って、「優先度としてクリティカルではないし、やらなくても事業は伸びてはいくんだが、やったほうが伸びるだろう」といった、業務効率化の文脈もあれば、売上にも直結するという、2つの軸が重なったような内容だなと思っています。
コストがかかるからできなかったけれど、生成AI・LLMを使えたからグロースにつなげられた。生成AIじゃないと事実上できなかった。という事例が出てきているんだなと思っています。
宮田:ある意味Web 2.0の延長線上にあるのかなと思っています。ニッチでニーズがないと思われていたものが、Web 2.0の登場によって色々な人がニッチなものを作るようになった。今回のLLMという技術はそれをさらに推し進めるような形で、コストが下がったからこそお客さまに提供できるのかなと。
高橋:ニーズの検証自体もやりやすくなりましたよね。どこがニッチなのかすら分からないけれど、たくさん作ってみて、どこにニーズがあるのか、という検証にも手を伸ばしやすくなった。
宮田:そうですね。令和トラベルの話でいくと、まずはメジャーな国・エリアのコンテンツを充実させていくのは大事ですが、旅行需要としてはある種マイナーな国であっても、コンテンツ作成にチャレンジできるというのは、生成AIの良いところだなと思いますね。