はじめに
前回の記事では、私自身のプロダクトロードマップ作成における失敗経験をご紹介しました。その要点を簡単に振り返ると、以下の通りです。
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商談中のお客様とのコミュニケーションに適したプロダクトロードマップを作れなかった
- 根本原因:プロダクトロードマップの社内外での利用目的やコミュニケーション促進の意図について理解が不足していた
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開発のタイミングや背景が不明確だった
- 根本原因:「プロダクトロードマップを作る」こと自体に注力し、その後の活用方法やコミュニケーションへの応用を十分に考慮していなかった
これらの失敗を踏まえ、今回は実際のプロダクトロードマップ作成・運用において陥りやすいアンチパターンとその回避方法について詳しく解説していきます。
プロダクトロードマップを作成する過程では、さまざまな選択肢があります。その中で誤った選択をしてしまうと、結果的に使われないプロダクトロードマップになってしまうリスクがあります。今回は、私が経験を通じて学んだ、避けるべきアンチパターンとその対処法についてご紹介します。
プロダクトロードマップのアンチパターン2選(1)
アンチパターン1:「万能な」プロダクトロードマップを最初から作ろうとする
最も陥りやすいアンチパターンの一つは、あらゆる場面で使えるような「完璧な」プロダクトロードマップを最初から作ろうとすることです。プロダクトロードマップというと、プロダクトマネジメントに関するあらゆる課題を解決できる「最強の武器(銀の弾丸)」を作るイメージを持ってしまいがちです。しかし、実際にはそのような万能なツールを最初から作ることは不可能だと考えたほうがよいでしょう。
このような期待を持って作成を始めると、各要素の粒度が定まらず、結果として誰にとっても適切でない中途半端なプロダクトロードマップになってしまう可能性が高くなります。これは前回のしくじり編で述べたように、届けたい対象に適した言葉で書けないことにつながり、誰にも使われないプロダクトロードマップになってしまいます。
回避方法
このアンチパターンを回避するためには、まず「誰とどの場で」利用するかを明確に決定し、その特定の場面に適した形でプロダクトロードマップを作成することが重要です。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
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CxOとの四半期ごとの1年先を見据えたプロダクト方向性と事業計画の整合性確認
- この場合、強化していく顧客便益とプロダクト全体のエコシステムの形成過程を示すことが重要です。個別の機能強化などの詳細は、むしろノイズになる可能性があります。
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セールス、CS責任者との今後3か月の市場投入計画の共有
- この場合、短期的な時間軸で、どの機能が強化されるのか(仮でも)具体的なイメージが伝わるように記述することが重要です。抽象度が高すぎると、実際の行動に結びつきにくくなります。
これらの例から分かるように、同じ「プロダクトロードマップ」でも、使用目的によって適切な内容や粒度が大きく異なります。1つのロードマップですべてをカバーしようとすると、どの目的にも中途半端な内容になってしまい、結果的に誰にも使われないものになってしまいます。
複数の目的が求められる場合は、それぞれ別々のプロダクトロードマップとして作成することをおすすめします。例えば、私の経験では「中期プロダクトロードマップ」と「短期プロダクトロードマップ」を分けて作成し、それぞれの場面で使い分けていました。