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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第2回開催です。

ProductZine Day 2024 Winter

ProductZine Day 2024 Winter

プロダクト開発の先進事例に学ぶ、キーパーソンインタビュー

複雑性の高いプロダクトでも、ゆるぎないミッション・バリューが成長を支える――NewsPicksのプロダクト開発方針

 ユーザベースグループの株式会社ニューズピックスは、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」を開発・提供する企業だ。「経済を、もっとおもしろく。」という標語を掲げ、同社は利便性の高いアプリと高品質なコンテンツの提供を続けてきた。また、オリジナル番組の配信や自社書籍の刊行といった多種多様な事業を展開していることもニューズピックスの大きな特徴である。プロダクト開発の戦略や指針を、VP of Product Developmentの文字拓郎氏とCTOの高山温氏に伺った。

株式会社ニューズピックス CTO 高山温氏

株式会社ニューズピックス CTO 高山温氏

イギリス・カナダで物理を学んだ後に2012年にピクシブ株式会社に入社。同社では主にサーバーサイドエンジニアとしてチームリーダーや新規プロジェクトの立ち上げ担当を歴任した後に、2016年12月から2019年12月まで執行役員CTOとしてエンジニアリング組織づくりなどを務めた。2020年2月よりニューズピックスCTOに就任。


株式会社ニューズピックス VP of Product Development 文字拓郎氏

株式会社ニューズピックス VP of Product Development 文字拓郎氏

シンプレクスにて、大手銀行や証券会社向けプロジェクトの開発責任者を歴任。デリバティブトレーディングシステム・リスク管理システムなど、さまざまな大規模プロダクトのアーキテクチャ設計を担う。ニューズピックス入社後は、一般ユーザー向けのプロダクト開発リーダー、新規事業の立ち上げなどを経て、2020年2月に執行役員 VP of Product Development に就任。

複雑度の高いプロダクトと、多様性のある事業

――ニューズピックスの扱っているプロダクトや事業には、どのような特徴があるのでしょうか?

文字:プロダクトの複雑度が高いことと、事業の多様性があることが特徴です。「NewsPicks」は単なる経済メディアではなく、プラットフォームやコミュニティなど、1つのサービスの中に複数の要素を内包しています。また当社では、広告や動画、エンタープライズ向け社内メディアプラットフォームや自社書籍の刊行など、さまざまな事業を扱っています。

――新しいプロダクトや事業を発案する際には、何を大切にされていますか?

文字:私たちが重視していることは大きく分けて3つあります。

 1つ目は、優先順位です。我々のようなスタートアップは、すべての施策を同時に実行することは出来ません。適切な優先順位づけを行い、どういう順番でやっていくかによってサービスの成長角度が変わります。ですので、この優先順位については経営メンバーも含めてオープンにディスカッションして決めています。 

 2つ目は、改善と大きな打ち手の両輪を回すことです。私たちユーザベースグループは「経済情報で、世界を変える」をミッションに、世界一の経済メディアを築くことを目指しています。ですが、既存の機能を改善していくだけでは、サービスは成り行きの成長に収まってしまい、目標を達成できないかもしれません。どのような施策を打てば成長角度を上げられるかという視点を常に大切にしています。

 3つ目として、これは我々が最も重視していることですが、自分たちが取り組もうとしている事業や施策が、私たちの掲げているミッションやバリューに沿っているかも重要な要素です。

高山:ユーザベースグループには、文字が先ほどご説明した「経済情報で、世界を変える」というミッションと、“the 7 values”、それらに紐づく「31の約束」という行動指針が存在しています。日々の業務におけるさまざまな場面で、これらの情報を全社員が意識し、意思決定に役立てています。

ユーザベースのコーポレートサイトより。社員に求める共通の価値観や行動指針が詳細に明文化されている。
ユーザベースのコーポレートサイトより。社員に求める共通の価値観や行動指針が詳細に明文化されている。

――挙げていただいた3つの判断基準がよく表れている事例はありますか?

文字:昨年、私はエンタープライズ向け社内メディアプラットフォームの「NewsPicks Enterprise」の立ち上げに携わったのですが、これが良い例だと思います。

 「NewsPicks」は、スタートアップ企業やIT業界の方々からの認知度が比較的高い状態でした。しかし、伝統的な金融機関や商社などの大企業で働く方々からの認知度はやや低いという課題がありました。

 一方で私たちがサービスを提供する中で、これらの企業に勤める方の中にも「時代の流れに後れをとらないように、自分も変わらなければならない」と感じている方が多いように感じていました。そうした人々に対し、私たちが有益な情報を届けることは価値があるのではないかと考えました。「経済情報で、世界を変える」というミッションを実現するには、まず日本を変える必要がある。日本を変えるために、こういった企業に勤める方々に対してサービスを届けたいというのは、我々のミッションから考えても自然な考えです。

 ですが、これまでの延長線上でマーケティング施策などを実施しても、彼ら・彼女らに「NewsPicks」を届けることは難しいでしょう。ドラスティックな打ち手が必要なのではないかと考え、「トップダウンで企業にメディアプラットフォームを導入してはどうか」という発想のもと生まれたのが「NewsPicks Enterprise」でした。

――まさに、前述の判断基準が事業の方向性に影響を与えた好例ですね。

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部分最適ではなく全体最適できる組織に

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この記事の著者

中薗 昴(ナカゾノ スバル)

 週の半分はエンジニア、もう半分はライター・編集者として働くパラレルキャリアの人。現職のエンジニアとして培った知識・経験を強みに、専門性の高いIT系コンテンツの制作を行う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岡田 果子(編集部)(オカダ カコ)

2017年7月よりCodeZine編集部所属。慶応義塾大学文学部英米文学専攻卒。前職は書籍編集で、趣味・実用書を中心にスポーツや医療関連の書籍を多く担当した。JavaScript勉強中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://productzine.jp/article/detail/30 2020/05/28 11:00

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