はじめに
「リサーチのインハウス化」に切り込む本連載。前回の記事では、スタートアップとして早期からUXリサーチ特化の組織を設置されているスマートバンク社の話を聞きましたが、本記事では株式会社タイミーのケースをご紹介します。
同社が提供する「タイミー」は、「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングすることで、時間や場所に制約されない自由な働き方を提供するスキマバイトサービスです。2018年8月のサービス開始以降、働き手である登録ワーカー数は累計900万人を突破、導入店舗も累計29万拠点を超えました(2024年9月時点)。
拡大するスポットワーク市場をけん引する「タイミー」の開発現場にはリサーチが深く浸透しています。一方で前回取材したスマートバンク社とは対照的にリサーチの専門組織は置いていないといいます。今回は、そのような文化が醸成された背景を探るべく同社プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)の後藤歩氏に話を伺いました。
後藤歩氏
株式会社タイミー プロダクトマーケティングマネジャー
研究者として人間の嗜好研究に従事した後、UXリサーチャー・プロダクトマネジャーとして0→1から新規事業開発、プロダクトデザイン、UX文化醸成リードを担当。2024年1月より株式会社タイミーに入社。プロダクトチームと伴走し、UXリサーチ・GoToMarket戦略などを担当。HATENALABOの専属リサーチャーとしても活動中。
開発フェーズに進む前に「その機能には本当に価値があるのか」を徹底検証
──浜岡(以下省略):プロダクト開発で、御社ではリサーチが盛んに行われていると伺いました。具体的にはどのようにリサーチを取り入れているのでしょうか?
後藤歩氏(以下省略):タイミーでは、開発のフェーズにおいて、リサーチが当たり前のように実施されています。直近1か月のワーカーと事業者向けインタビューを数えたところ46件でした。1営業日あたり2件のインタビューをしている計算になります。
開発チームでは「その機能は本当にワーカーや事業者にとって価値があるのか?」という点をよく議論します。もしその答えがあいまいなら、開発に進まずに、まずはリサーチフェーズに回します。
開発現場では「リサーチの暇がない」というのはよくある話で、私自身もタイミー以前の職場ではそんな経験があります。しかし、タイミーでは当たり前に「分からないなら、ワーカーさんにインタビューで聞いてみよう!」となるのは、一つの特徴だと思います。
「最近インタビューしていないな」とふと感じたタイミングで、探索的なインタビューを気軽に行うこともあります。ワーカーさんの新たな悩みの種を聞いて、情報を社内にストックし、開発に活かしています。