はじめに
前回の記事では「リサーチのインハウス化」が進む背景についてご紹介しましたが、ここからはその実態に迫るべく、実際にインハウスで活躍するUXリサーチャーへのインタビューをお届けします。
今回は、家計簿とプリペイドカードが一体となったサービス 「B/43(ビーヨンサン)」を手掛ける株式会社スマートバンクのUXリサーチ組織に注目します。スマートバンクは日本初のフリマアプリ「フリル(現楽天ラクマ)」を生み出した堀井氏が創業したスタートアップ。「人が本当に欲しかったものをつくる」というパーパスを掲げる同社ですが、スタートアップ企業としては珍しく、プロダクトリリースから間もない2022年にリサーチ組織を立ち上げています。「創業時から根付く『N1インタビュー文化』を育てていきたい」と語るUXリサーチャー 瀧本はろか氏にお話を伺いました。
瀧本 はろか氏
株式会社スマートバンク UXリサーチ部 部長 UXリサーチャー。
新規事業のUXリサーチやリサーチ組織立ち上げ、リサーチャー育成に携わった後、2022年4月より株式会社スマートバンクに1人目のUXリサーチャーとして入社。N1インタビューの文化を受け継ぎ、年間100件を超えるインタビューを担当。メンバー全員が「Think N1」を身近に感じられるような働きや経営・事業に伴走するリサーチを推進。著書に『UXリサーチの活かし方 ユーザー視点を意思決定につなげるためにできること』(翔泳社、今秋出版予定)。
リサーチチーム立ち上げの背景にある「N1インタビュー文化」
──浜岡(以下省略):瀧本さんは、リサーチチームの立ち上げメンバーとしてご入社されていますよね。「リサーチのインハウス化」の流れは加速しているとはいえ、スタートアップがUXリサーチ特化の組織を置くのは珍しいことではないかと思います。その背景には、どういったことがあるのでしょうか?
瀧本はろか氏(以下省略):創業時から根付く「N1インタビュー文化」が大きいと思います。私自身もその文化に惹かれて入社した1人です。
当社では「人々が本当に欲しかったものをつくる」をパーパスに掲げています。ユーザーとその生活背景を深く理解するために、多くのインタビューを行い、実際にその声を起点にプロダクトを生み出してきました。
メインプロダクトである家計簿プリカ「B/43」は創業者たちがN1インタビューを重ねる中で「誰もが日々お金を使っているのに、ほとんどの人が使ったお金を正しく把握できていない」という課題を発見したことがきっかけで誕生しました。また、「B/43」は3タイプのカードを提供していますが、中でも夫婦や同棲カップルのための「B/43ペアカード」が特に成長しています。「B/43ペアカード」もお問い合わせやインタビューで寄せられた声をもとに、既存のロードマップを変更してまで最優先で開発が進められたプロダクトです。
UXリサーチャーは、そんな創業者たちの「ユーザーの生の声を理解したい」という熱量が具体的な形となった職種だと思います。