大企業から見た、スタートアップと提携するメリットとは
続いて、大企業の視点から、プロダクト開発にどのような影響があったのか、KDDI Digital Divergence Holdingsの藤井彰人氏が語った。藤井氏が挙げたポイントは、「スピードアップ」「人材育成&確保」「さらなる成長に向けたスイングバイIPO」の3つである。同様に、それぞれ詳しく見ていこう。
①スピードアップ
大企業は、過去に何かしらの事業で大きな成功を収めているからこそ、大企業になっている。つまり大企業には、守るべきプロダクトやサービスがあり、リスクを避けながら、それらを効率良く運用することには長けている。その反面、新しい領域で、新しい技術を使って、新しいサービスをつくるという新規事業開発では、どうしても動きが鈍くなってしまう。
「そのようなときに専門性を持ったスタートアップが側にいてくれると、プロダクト開発が非常にスピードアップするし、プロダクトマネージャーとしても、非常にやりがいのあるプロダクト開発ができる状況になる。資本業務提携によって、『ビジネスの機会を探しながら俊敏に動く』というスタートアップの良いところを、大企業に取り込むことができた」(藤井氏)
②人材育成&確保
大企業の中にいる人材に、アントレプレナーシップや新領域の技術を身につけさせるのは、容易なことではないし、時間がかかる。また、別の角度から見れば、大企業のプロダクト開発では、人材も含めたアセットありきで「何ができそうか」と考えるようなアプローチになりがちだ。逆に、スタートアップには目指すゴールが先にあり、そのゴールに共感した人たちが集まっている。
「資本業務提携によって、最短距離でゴールを目指せる人たちを一気に仲間に入れられることが、大企業にとっての大きなメリット。大企業の人事制度では、なかなか特殊組織を維持継続するのは難しいが、組織が小さいスタートアップであれば、維持しやすいメリットもある」(藤井氏)
③さらなる成長に向けたスイングバイIPO
スイングバイIPOとは、スタートアップが一度、大企業の傘下に入った後、上場を目指す事業戦略のことだ。「GoogleやMicrosoftのような海外の大企業では、多くのスタートアップを買っては、機能やチームごと組織に組み込みながら成長し続けているが、日本では制度的にも文化的にも、なかなかこのようなやり方は難しい」と語る藤井氏。そこでスタートアップの事業戦略として新たな選択肢となるのが、スイングバイIPOなのである。
藤井氏は、スイングバイIPOの例として、IoTプラットフォーム「SORACOM」を提供する株式会社ソラコムを紹介。2014年11月に設立後、2017年8月にKDDIと資本業務提携を締結し、KDDIの子会社となった。そして、さらなる成長を目指し、2024年3月に東証グロース市場に上場を果たした。
「スイングバイIPOは、オープンイノベーションのように企業内だけでイノベーションを起こすのではなく、オープンな環境でスタートアップと共にイノベーションを起こし、社会に還元していくモデル。新しいスタートアップとの協業の形をソラコムで示せた。フライウィールもスイングバイIPOを目指していると公言することで、KDDIの子会社としてだけではないプロダクト開発の環境を提供できるはずだ」(藤井氏)
フライウィールでは、プロダクトマネージャーをはじめとするさまざまなポジションを積極採用している。「データを扱うソリューションや生成AI、大企業の支援を受けたプロダクト開発に興味のある方は、ぜひコンタクトしてもらいたい」と大附氏は語り、セッションを締めくくった。
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