実際に現場に足を運び、課題を把握する
高橋:松沼さんの話を伺うと、景品予算の改善のイメージはつきます。一方で、梶原さんが担当された業務フローの改善について、現場メンバーとのコミュニケーションやボトルネックの特定、さらにはユーザーインタビューを通じてどのように進めたのか気になります。作ったものが使われないケースもありますが、どのように慎重に進めたのでしょうか?
梶原:まず、課題を正しく把握するため、私自身が現場に入り、棚卸し作業を体験するところから始めました。実際、月末の深夜に棚卸しを数か月続けたのですが、正直「大変だな」と感じました(笑)。こうした現場の悩みを共有しながら取り組みを進めました。また、プロダクトが完成してからも現場に足を運び、導入支援を行いました。
松沼:現場に深く関わることを重視し、エンジニアやPMも現場に入ることで、実際の課題を把握しやすくしています。また、徹底的なヒアリングを行い、ビジネス要求を明確化することで、使われないプロダクトを作るリスクを抑えています。さらに、信頼関係のある店舗でテストを重ね、現場の反応を確認しながら改良を加える、といったことも行っています。
梶原:棚卸し改善前に作った分析ツールがまったく使われない失敗もありました。その反省からトップダウン・ボトムアップ両面でプロジェクトを進めるようになりました。
高橋:一方で、トレンドが不明な新IPについて、どれくらい仕入れるのか予測はどう立てるのでしょう?
松沼:今まさに取り組んでいるところです。エンタメ業界のリサーチツールでブランドパワー分析を行い、純粋想起レベルの認知度やファン数、物販購入意欲を数値化しています。その上でXやInstagramのフォロワー、エンゲージメントを加味し、独自の回帰モデルで過去類似IPの実績と照合し、売上予測をシミュレーションしています。
また、オリジナル商品開発(別注)が得意なチームと連携して、まだ仕入れていない新IPへのアプローチ計画も立てています。
梶原:例えば有名アーティストグループでは、メンバーごとの人気度を把握していると驚く発見があったりします。
高橋:そうした発見からオリジナル景品展開につながるわけですね。
松沼:そうです。スコア推移を見て、最近下がり気味なら購買量を調整するなど、在庫リスクを回避します。人気キャラの有無で売上は変わりますし、物販供給が強ければゲームセンターでわざわざ欲しいかも変わる。多角的な観点で判断しています。
高橋:GiGO限定の景品などもありますよね。
松沼:そうですね。他社には出回らないアイテムを用意して、来店理由を作ることにも注力しています。
高橋:PAOについての実績はIR上でも触れられているとのことですが、その他施策において、定性・定量面での結果はありますか。
梶原:棚卸しについては、作業日数が半分になったと聞いています。システムによる自動化だけでなく、棚卸しプロセス自体を見直した結果です。
高橋:現場からの定性的なフィードバックはありますか。
梶原:深夜作業が緩和されました。どんどん早く帰れるようになったので、負荷軽減になっているという声があります。
高橋:副次的なメリットとして労働環境改善があったわけですね。