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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第3回。オフラインとしては初開催です。

ProductZine Day 2024 Summer

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エクスプラザ高橋一生の “生成AI時代のプロダクト開発” とは

「実際に現場に足を運び、課題を把握する」エンタメ業界を席巻する、GENDAのDX/AI活用の現在と未来

エクスプラザ高橋一生の “生成AI時代のプロダクト開発” とは 第3回

この3年で取り組んできたDX/AI活用事例

高橋:GENDA IDは、お客さまにとってはいわゆるウォレットやクーポンが利用できるような基盤で、オペレーションとしてはDX・業務改善に取り組んでいくための基盤になっているわけですね。それらを軸に、実際に取り組んできた内容はどんなものがありますでしょうか。

梶原:私からは3点。まずはデータ基盤が必要だと思い、そこから取り組みました。入社直後当時、BIらしいものはあったのですが、ゲームセンターの分析ではエクセルでしたし、本社全体を横ぐしで見るような分析基盤もなく、エクセルで見るにも限界を超える計算量でした。

 そこで、共有のデータウェアハウスを構築し、売上データからまず導入し、時間がかかってやれてこなかった分析を瞬時にできるようにしました。それをもとに、多くの店舗の業務改善が進んでいきました。

株式会社GENDA 執行役員 CTO 兼 IT戦略部部長 梶原大輔氏
株式会社GENDA 執行役員 CTO 兼 IT戦略部部長 梶原大輔氏

 2つ目は、アミューズメント施設運営事業の中でエンドユーザー向けに展開していた会員アプリ「GiGOアプリ」のテコ入れを行いました。元々すべて外注で開発していたものを内製化し、スピーディに開発・改善ができるようにしましたし、デザインもすべて見直ししました。

 今ゲームセンターの機器にはキャッシュレス決済の機械が付いているのですが、POSはあるものの、小売りのようにレジを通るわけではないので、お客さまがどこで何をやっているのかが分からない状態でした。そこで、会員アプリを通じてID POSを実現し、より分析がしやすい状態に取り組んでまいりました。

 現在はデータも取りながら、アプリの改善も行いますし、回数券やサブスクなど利便性が上がるものを追加することで、ちょうど最近では会員数100万名を突破するようなサービス規模に成長してきました。

GiGOアプリ
GiGOアプリ

 3つ目は裏側のスタッフ向けの「GiGO NAVI」と呼んでいるツールの大幅な業務改善です。ゲームセンターの売上の大半はクレーンゲームなのですが、ぬいぐるみやフィギュアといった景品を、月末に棚卸しする必要があります。

 ゲームセンターの景品にはJANコードがないので、この景品はエクセルのどの景品か?ということを勘で見つけ、まだ在庫が10個残っていそうだ、といった管理体制になっていました。そこで、それらの景品を事前にシステムに登録できるようにして、毎回月末に深夜まで時間がかかっていた棚卸し作業を大幅に改善できました。

高橋:なるほど、クレーンゲームの景品は非売品だからJANコードがないのですね。

梶原:そうなのです。また、日々のオペレーションも、売上や景品の管理がエクセルでの管理になっていましたし、フロアマップのどこの景品を何に入れ替えるかということも、リーダーがエクセルにA3ぐらいの用紙に印刷して、アルバイトがバトンリレーで業務をやっていたところを、ツール化できたのがちょうど先月でした。

 3年かかりましたが、この売上・景品管理のエクセルの使いづらさの負を改善できたのは、DXとして一番大きなインパクトだったかなと思っています。

高橋:松沼さん側はいかがですか。

松沼:私は事業にどんどん入り込んでいき、本部販管機能に着目して改善の余地がないか、ロジックにひずみがないかを確認し、そうした観点からデータドリブンな施策を実施してインパクトを出す取り組みを行っています。

株式会社GENDA BizDev & Analysis マネージャー 松沼雄祐氏
株式会社GENDA BizDev & Analysis マネージャー 松沼雄祐氏

 大きい事例だと、最近のIR資料にも出ましたが、PAO(Prize Allocation Optimizer)という景品の割り振りです。アミューズメント施設運営事業におけるクレーンゲームの売上シェアは大きいわけですが、事業として、どんな景品をどれだけ買い、どの店舗にどれだけ割り振るのか、といったステップがあるわけです。

 その中で、需要予測として、今後こんなアニメがはやるだろう、という見通しを立てるのは大変なので、まずは川下から取り組みました。買ったものをどう最適に配分するか、というところのフローをみてみると、毎月エクセルでいえば数万行、毎月数百種類の景品を数百店舗に割り振る必要がありました。

 例えば店舗Aから景品を何カートンか減らして店舗Bに付け替える、といったことをやっていると相当なリソースがかかってしまうので、梶原さんのチームのデータサイエンティストと協力し、AIを活用しながら、最適に配分できる仕組みを作ろうと進めてきたのがPAOです。

プロジェクトPAO
プロジェクトPAO

 各店舗には景品を調達するための予算がありますが、その使い方にはばらつきがありました。例えば、予算が十分に使われず必要な景品が不足している店舗がある一方で、逆に予算を超えて割り振りが多くなっている店舗も見られました。こうした課題を是正するため、対象店舗の約9割が予算の95〜100%を適切に使える仕組みを導入しました。このプロセスでは、以前は手作業で行っていたエクセルのコピー&ペーストなどが効率化され、瞬時に完了するようになりました。その結果、店舗のチャンスロスが減り、不良在庫の抑制などにも良い影響を与えました。

AIにより景品割振が効率化された
AIにより景品割振が効率化された

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この記事の著者

高橋 一生(株式会社エクスプラザ)(タカハシ カズキ)

株式会社エクスプラザ 代表取締役CEO 学生時代に海外インターンを3社経験し、複数のスタートアップの共同創業を経て、株式会社メルカリにプロダクトマネージャーとして入社し、決済サービス「メルペイ」の立ち上げに従事。 その後株式会社エクスプラザを創業し、2023年より生成AIの法人導入支援「EXPLAZA 生成AI Partner」を開始。2024年6月より、生成AIのPoC開発やAXを支援する...

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