3.toC展開を成功させる基盤:組織での変革
SaaSサービスをBtoC市場に展開する際には、プロダクトの転換だけでなく、組織そのもののあり方を再構築する必要があります。
特に、プロダクト開発・マーケティング・セールス・カスタマーサポートといった各機能が、BtoCならではの顧客接点や意思決定の速さに対応し、連携して顧客体験全体を設計・運用していく体制が不可欠です。
そのためには、以下のような組織的変革が求められます。
- アジャイルな開発体制の導入:市場の変化やユーザーの声に迅速に対応するために、柔軟でスピーディな開発体制を整える
- データドリブンな意思決定:利用状況や行動データを分析し、プロダクト改善やマーケティング施策に即座に反映させる
- 部門横断の連携強化:プロダクトチームとマーケティング、カスタマーサクセスが密に連携し、統一された顧客体験を設計・提供する
Monoxer Juniorの事例──アジャイル開発とデータ主導の改善サイクル
MonoxerがBtoC向けプロダクト「Monoxer Junior」の開発・運用を始めるにあたり、私たちは従来の開発スタイルを見直し、スクラムを基盤としたアジャイル開発を導入しました。
- 毎日のスタンドアップミーティング
- 週単位のスプリント
- 高速なバージョンリリースと改善
こうした仕組みによって、リリースサイクルを大幅に短縮しながら、ユーザーからのフィードバックを素早くプロダクトに反映できるようになりました。

加えて、App Storeのスクリーンショットなどのクリエイティブ改善や新コンテンツの追加なども含め、ユーザー行動の変化を週単位で追跡できるよう、週次コホート分析を徹底しています。
例えばある週の分析では、特定の「ひらがな(そ)」の書き取りステップでユーザーがつまずき、そこで離脱する傾向が見られました。
このデータをもとに、チーム内で即座に「難易度設定の再検討」や「書き方ナビゲーションの見直し」などの仮説を出し合い、早急にUIやコンテンツを修正しました。
このように、ユーザーの行動データをもとに迅速に意思決定し、実装・検証を繰り返すプロセスこそ、BtoC領域におけるプロダクト成長のエンジンとなっています。
まとめ
本稿では、SaaSサービスのtoC展開におけるプロダクトマネジメントの要点として、顧客理解の深化とペルソナの再構築、toC特性に適応したプロダクト戦略の再設計、そして組織全体の変革について、Monoxer Juniorの事例を交えて解説しました。
toCへの展開は、単なるチャネルの追加ではなく、サービスの思想や提供価値そのものを問い直す取り組みです。その変化を牽引していくのが、プロダクトマネージャーの重要な役割だと私たちは考えています。
もちろん容易な道のりではありません。
それでも、この変化に向き合い、仮説検証を重ねながらプロダクトを磨いていく過程には、toCならではのダイナミズムと面白さがあります。
次回は、弊社のプロダクトマネージャーメンバーが、「SaaSサービスをtoC展開するプロダクトマネジメントのあり方(後編)」をご紹介する予定です。どうぞお楽しみに。