調査票設計時
調査票のフォーマットについて
アンケート調査票の設計時には、「質問文」と「選択肢」以外にも、「回答対象者条件」「回答形式(複数選択、単一選択など)」やネットアンケートの場合は「制御条件」についても考えておきましょう。
また、この段階では回答者にとって答えやすい内容、順番になっているかも考慮する必要があります。例えば、行動や実態などの答えやすい設問を先にして、意識や評価など考えなければならない設問を後にしたり、反対に先に満足度や推奨度を聞き、その具体的な理由を後から自由記述で述べてもらうなど、目的や状況に応じて回答しやすいよう、またバイアスがかからないように設計する必要があります。

集計・分析の方針について
前回コラムでもお伝えしましたが、集計や分析の方法は、調査票設計時におおむね決めておいた方がよいでしょう。調査に慣れている人であれば、この設問によって何がアウトプットされるのか想像しやすいと思いますが、あまり慣れていない場合は、報告書などのイメージですり合わせると認識の齟齬が少なくなります。以下に、プロダクト開発の検証アンケート調査でよく使う基本的な分析手法を例示します。
A.認知・利用・セグメント比率
プロダクトの認知、利用、各セグメント(例:ヘビーユーザー、ライトユーザーなど)の占める割合などを表現する際に使います。アンケートの数値をそのまままとめることもあれば、人口構成比などと掛け合わせて市場規模を推計する際などに用いることが多いです。

B.満足度、コンセプト評価
プロダクトの満足度や、新商品、新機能のコンセプトやプロトタイプ評価などで用いられます。それぞれの評価項目について5段階、7段階で回答してもらうことで、回答者の割合だけでなく、加重平均値などの指数(スコア)で把握することも可能になります。また、機能やコンセプトなどについて、複数の評価項目を横並びで比べることで、受容性が高いものを明確にすることもできます。

C.重要度×満足度のマッピング
1.「重視度」や「KPIと満足度の相関係数」などと、2.「満足度」をかけ合わせるように、別々に聴取した設問を同じ座標上にマッピングすることで、プロダクトやサービスの「強み」や「弱み・課題」を明らかにすることができます。見た目では複雑な分析に見えますが、手法としては比較的シンプルです。

このように調査の目的や活用シーンにあわせて、分析手法が変わるので、調査設計時にどのように分析し、表現するかを考えておいてください。また、時には多変量解析など複雑な分析が必要な場合もありますが、複雑な分析=適した分析ではありません。まずは「GT(単純集計表)」や「クロス集計表」からシンプルにデータを読み解くことを意識してください。
報告・意思決定
各設問のデータを読み解いたら、それが意思決定につながるよう「サマリー」としてまとめます。ここでは、先に読み解いた一つひとつのデータをつなぎあわせて、ストーリーで理解することが重要です。例えば、1.市場全体の規模(人口構成比など)→2.ターゲットユーザーの規模→3.ターゲットユーザーの特性→4.ターゲットユーザーが期待すること/課題に感じていること→5.新機能(コンセプト)の受容性など、意思決定に必要な情報を、順を追って分かりやすく伝えると、その後の意思決定やアクションの決定をスムーズに行うことができます。
ここまで、プロダクト開発における「仮説検証アンケート」の具体的なアプローチについて見てきました。次回は、顧客理解によく使われる「ペルソナ」や「カスタマージャーニーマップ」のポイントについて解説します。