文化や習慣の違いから生じた問題を解決! 3エピソードに見る成功体験
直面した実際の課題である「サービスの悲喜こもごも」について、木下氏は「オフレコで」といいながら、次のような3つのエピソードを紹介した。
エピソード1:従来の業務プロセスがD2Cにミスマッチ
B2B事業がメインの明治を基準にして考えると、D2Cにおいてもユーザーに小売・流通事業者と同様のプロセスを求めてしまって、サービスとして成立しない。一方で、業務プロセスを変えようとするとローンチが大幅に遅れてしまう。
こうした業務プロセスの調整は、半年から1年単位でローンチが遅延するような問題が表出し、木下氏はまるで「モグラたたきのようだった」と語る。そこで、Wellnizeが個人客へ販売する会社となり、明治がそこに卸すというスキームを組み、従来の業務プロセスをそのまま使うこととした。
木下氏は「既存のプロセスが適用できない時に、諦めたりバカにしたりするのではなく、既存のスキームにとらわれず、可能な手段を尽くして取り組むことが大切。そうした圧倒的な当事者意識が、成功の鍵となった」と評した。

エピソード2:UI/UXと異なるパッケージデザインが提出される
パッケージのデザインを発注したところ、サービスのイメージとまったく異なるものが提出される問題が発生。これまではパッケージデザインが店頭でのブランドコミュニケーションの核となるため、パッケージデザインが決定してからWebデザインの工程に進むことが普通だった。しかし、デジタルサービスの場合は、UI/UXからパッケージまでトータルなデザインコンセプトが重要になる。普段とは逆にWebデザインの工程が先に進んでいたために、開発後期になって別途依頼をしたパッケージデザインとの齟齬が生じてしまった。
そこで改めて、UI/UXの観点からパッケージデザインを全体のサービス体験の“一部”として捉え直すことをロジカルに説明。UI/UXのエキスパートが積み重ねてきた合意形成を尊重してもらいたいと要望し、関係者と率直に意見を交わした結果、適切なデザインへと軌道修正できた。木下氏は「対等なプロフェッショナルとして衝突を恐れずに意見をぶつけ合うことが、より良い成果につながる」と語った。
エピソード3:商品タイプの不足
「インナーガーデン」では、腸内細菌の分布を5タイプに分類して分析することが前提。しかし、3種類しか商品を用意できない状況がローンチ直前まで続いていた。「自分の菌に合ったドリンクを飲もう」というコンセプトに対し、5タイプに3種類の商品では、ユーザーに正しく伝わらない課題がある。そこで、まず各菌に適した素材をエビデンスベースで特定し、おいしさや安全性、採算性、加えて、素材の調達や製造、物流のプロセスなどを検討し、最終的に5種類の商品の開発に成功した。
このときはWellnize側では何もできず、コンセプトの重要性を伝えて「なんとかしてほしい」とお願いするばかりだった。徹底して伝え続けた結果、明治の担当者が各部門に掛け合い、なんとか実現させることができた。木下氏は「パートナーをプロフェッショナルとして信頼し、背中を預けて任せることの重要性を実感した」と語った。
