組織変革への道②:効果的な探索により「問題解決の方法を変える」
2つ目のポイントである「問題解決の方法を変える」について、兼原氏はまず予算承認のあり方を変えるべきだと指摘する。大企業のプロジェクト型における予算承認は、高い確実性を“前提”に行われる。そして承認後はその範囲内で予算を執行するという流れだ。
しかし、プロダクト型ではアジャイル開発が行われるため、その予算承認制度のままでは、不確実性が高い探索時期に承認が行われることになる。そこで、不確実性の高い“探索”の時期にも適した予算適用が必要だと言う。兼原氏は「必要に応じて選択できる必要がある。なければ制度として作る必要がある」と語る。
予算承認のタイミングとして、兼原氏は「企画の承認と開発の承認は分けた方が良い」と指摘する。プロダクト型開発では、探索の時期に実験・検証して、やると決まったものだけ開発予算が承認されればよい。探索と実開発の段階を分けるだけでも、不確実性が低くなる。まずは問題解決の方法を探索するための予算承認・執行によってプロトタイプを作成し、それをベースとしてコミュニケーションすることで、解くべき問題の不確実性を下げる。そして、確実性が高まったタイミングで開発承認を行い、開発のための予算の承認・執行をするという流れだ。

プロトタイプは、AIやFigmaなどのツールが登場しており、かなり低コストで作成できるようになりつつある。本番に近いもので検証できる方がいいため、これは望ましいところだろう。また、ユーザーストーリーを小さく分割して価値のあるものだけを集中して検証することで、探索の時間とコストを圧縮できる。

兼原氏は、以上に紹介した(1)企画承認と開発承認を分割して探索のための予算を確保する、(2)探索の予算はプロトタイピングおよびこれを用いた検証に当てる、(3)企画をユーザーストーリーでスライスし価値のあるものに集中する、の3つの取り組みだけでも「得られる効果は高い」とし、「プロジェクト型文化からプロダクト型文化に変わる足がかりになる」と語った。そして、こうした事例を積み上げながら、実績に基づく年間包括予算を確保し、プロジェクトごとではなく、プロダクトに対して継続的な価値探索ができる環境をつくることの重要性を訴えた。
そして、「開発中だけアジャイルなやり方をしても仕方がない。不確実性が高い前半の企画プロセスを変革していくことがアウトカムを高めることにつながる」と語り、それこそがプロダクト型文化に移行する上での“本丸”と強調した。特に開発の大部分をアウトソースしている環境ならば、キャッシュアウトが発生しない内部人材を活かした施策は、実施しやすいといえるだろう。