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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

ProductZine Day 2025

SaaSプロダクトの実例から学ぶプロダクトマネージャーとチームの理想的なあり方

BtoBからのBtoCプロダクトへの挑戦──「仮説構築」と「仮説検証」の両輪を回し続けることの重要性

SaaSプロダクトの実例から学ぶプロダクトマネージャーとチームの理想的なあり方 第5回

アイデア出し:「モノグサマーケット」という選択

 新しい挑戦といっても、まずは「何をやるか」を決める必要があります。プロダクトマネージャーとしての私の最初の仕事は、「アイデアを出して、自分で自分にツッコミを入れること」でした。

 きっかけは2023年の夏、創業者でありCTOの畔柳との1on1で、「既存アセットを活用した、リスクの低い新規事業を検討してほしい」とオーダーを受けたことです。私はこれまで複数の新規事業立ち上げを経験してきたので、このオーダーはとてもワクワクするものでした。

 まず着手したのは、社内に蓄積されていた顧客の声に改めて目を通すことです。商談の議事録、Slackに日々投稿されるフィードバック、ビジネスチームの商談録画など、あらゆる情報に目を通しながら、次のような観点で、ひたすらインサイトを抽出していきました。

  • なぜモノグサは選ばれているのか?
  • 現行のプロダクトで、解決できていない課題は何か?

 そこから得た気づきをもとに、「リーンキャンバス」や「アンゾフの成長マトリクス」などのフレームワークを活用し、アイデアを整理していきました。このときは私が一貫して意識していたのが、「新規市場 × 新規製品」という、いわゆる「最もリスクが高い領域」は避ける、ということです。

 そうして検討を重ねる中で、徐々にある仮説が浮かび上がってきました。それは、「学習者自身が、学びたいコンテンツを自由に選べない」という、見過ごされがちな課題です。この課題を解決することは、既存の顧客基盤=アセットを活用した、低リスクな新規事業になり得るのではないか。そんな発想から生まれたのが、「モノグサマーケット」です。

 学校でMonoxerを使っている学習者が、自分で(あるいは保護者と一緒に)アプリ内でコンテンツを購入できる世界。この構想が、新たなtoCサービス展開への第一歩となりました。

ユーザー理解の深化:15人の高校生インタビューから見えた「今のリアル」

 方向性が定まり、いよいよ開発へ──と進みたいところですが、そこで立ちはだかったのが「本当にユーザーはこれを求めているのか?」という、プロダクト開発において最も根源的な問いでした。

 特に今回のターゲットは高校生。学生向けサービスの企画でありがちな落とし穴は、「自分が学生だった頃の経験」をベースに検討してしまうことです。まさに私自身も、そのバイアスに無自覚である危険を感じていました。

 そこで、まずは知人・友人のつてを頼り、合計15名の高校生に対面インタビューを実施しました。実際に話を聞いてみて驚いたのは、私たちの世代とはまったく異なる学習環境の実態。特に、総合型選抜(旧AO入試)に対する関心の高さは、ヒアリングを通じて初めて理解できた大きな発見でした。

 このような「定性的なユーザー理解」は、プロダクト企画の重要な指針になります。インタビュー結果をもとに、デザイナーと一緒にペルソナとカスタマージャーニーマップをゼロから再構築。さらにFigmaで作成したプロトタイプを、実際の高校生に触ってもらうユーザビリティテストも実施しました。

 このテストにはエンジニアも参加し、ユーザーの反応をその場で体感。以降、チーム内には「分からないならユーザーに聞こう」という空気が自然と根付きました。

次のページ
熱狂的ユーザーとの出会いがもたらした確信

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この記事の著者

岩楯 恭司(モノグサ株式会社)(イワダテ キョウジ)

モノグサ株式会社プロダクトマネージャー。 早稲田大学政治経済学部卒業、英国マンチェスター大学Full-Time MBA修了。 KLab株式会社、クックパッド株式会社、弁護士ドットコム株式会社各社にて新規事業の立ち上げや事業責任者を歴任。2023年にモノグサ株式会社に入社。BtoB領域のP...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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