データに基づく仮説検証:訪問率4.6倍への道筋
ツールチップ経由の遷移率が1.07%という結果を受け、私たちは「ユーザーの行動データを客観的に分析しよう」という方針へと舵を切りました。
まず取り組んだのは、ユーザーがモノグサマーケット内のコンテンツにたどり着き、実際に学習を始めるまでの行動を段階ごとに分解したユーザーファネルの構築です。このファネルをベースに、各段階でどれだけのユーザーが行動を起こしているかを計測し、改善のターゲットを明確にしました。
ユーザーファネルの構成
- Potential User:モノグサマーケットの対象となるユーザー
- Tab switch User:モノグサマーケットのあるタブに切り替えたユーザー
- Marketplace User:商品一覧ページに来たユーザー
- Product User:個別商品の詳細ページに来たユーザー
- Converting User:購入ボタンを押したユーザー
- Revenue User:購入フローを最後まで終えたユーザー
- その他、学習開始ユーザー、リピーターなど。
ファネル分析の初期段階では、最上流の「Tab Switch User」(モノグサマーケットのタブに遷移したユーザー)が全体の11.6%にとどまっていることが判明。ここがボトルネックであると仮説を立てました。
ボトルネックの要因を探る:注目したのは「最後に見た画面」
さらに深掘りを進めたところ、「ユーザーがアプリ内で最後に見ていたビュー」にヒントがあることが分かってきました。以下はその割合です。
- ホームタブ終了:21.06%
- 学習終了画面:16.06%
このデータから私たちが導き出した新たな仮説は、「ユーザーの行動を妨げるのではなく、『自然な終了地点』で次の選択肢を提示すべきではないか?」というものでした。
仮説検証:学習完了後にマーケットを提案する導線へ
この仮説を検証すべく、データチームと連携し、学習完了画面からモノグサマーケットへの導線を追加するというA/Bテストを設計・実施しました。結果は明確で、統計的にも有意な改善が確認されました。
指標 | 従来(旧導線) | 変更後(新導線) | 改善幅 | p値 |
---|---|---|---|---|
商品一覧ページ訪問率 | 4.4% | 20.4% | +4.6倍 | 0.0000 |
商品詳細ページ訪問率 | 2.5% | 6.7% | +2.7倍 | 0.0000 |
商品一覧ページへの訪問率は4.4%から20.4%へと4.6倍に向上。p値もいずれも0.0000と、統計的に極めて信頼できる結果となりました。

おわりに:企画とデータ、その両輪を回し続ける
BtoB企業として出発した私たちが、toC領域へ挑戦した今回のプロジェクトは、「丁寧な企画とユーザー理解」からスタートし、「失敗と学び」、そして「データドリブンな仮説検証」へと展開していった、濃密なプロセスでした。
私たちがこの挑戦から得た最大の学びは、「仮説構築」と「仮説検証」の両輪を回し続けることの重要性です。インタビューなどの定性調査で方向性を見極め、実データによる検証で進み方を磨いていく。この往復運動こそが、不確実性の高いプロダクト開発において、最も強力なアプローチであると実感しました。
クローズドβから始まった「モノグサマーケット」は、2025年7月時点で約11万人の小中高生に対象を拡大。まだ始まったばかりのサービスではありますが、今後も仮説検証のサイクルを回し続けながら、より多くの学習者の「記憶の課題」を解決していきます。
次回は、弊社のプロダクトマネージャーメンバーが、「マーケットインではなくプロダクトアウトで真の価値を提供する方法(仮)」をご紹介する予定です。どうぞお楽しみに。