アイデア出し:「モノグサマーケット」という選択
新しい挑戦といっても、まずは「何をやるか」を決める必要があります。プロダクトマネージャーとしての私の最初の仕事は、「アイデアを出して、自分で自分にツッコミを入れること」でした。
きっかけは2023年の夏、創業者でありCTOの畔柳との1on1で、「既存アセットを活用した、リスクの低い新規事業を検討してほしい」とオーダーを受けたことです。私はこれまで複数の新規事業立ち上げを経験してきたので、このオーダーはとてもワクワクするものでした。
まず着手したのは、社内に蓄積されていた顧客の声に改めて目を通すことです。商談の議事録、Slackに日々投稿されるフィードバック、ビジネスチームの商談録画など、あらゆる情報に目を通しながら、次のような観点で、ひたすらインサイトを抽出していきました。
- なぜモノグサは選ばれているのか?
- 現行のプロダクトで、解決できていない課題は何か?
そこから得た気づきをもとに、「リーンキャンバス」や「アンゾフの成長マトリクス」などのフレームワークを活用し、アイデアを整理していきました。このときは私が一貫して意識していたのが、「新規市場 × 新規製品」という、いわゆる「最もリスクが高い領域」は避ける、ということです。
そうして検討を重ねる中で、徐々にある仮説が浮かび上がってきました。それは、「学習者自身が、学びたいコンテンツを自由に選べない」という、見過ごされがちな課題です。この課題を解決することは、既存の顧客基盤=アセットを活用した、低リスクな新規事業になり得るのではないか。そんな発想から生まれたのが、「モノグサマーケット」です。
学校でMonoxerを使っている学習者が、自分で(あるいは保護者と一緒に)アプリ内でコンテンツを購入できる世界。この構想が、新たなtoCサービス展開への第一歩となりました。
ユーザー理解の深化:15人の高校生インタビューから見えた「今のリアル」
方向性が定まり、いよいよ開発へ──と進みたいところですが、そこで立ちはだかったのが「本当にユーザーはこれを求めているのか?」という、プロダクト開発において最も根源的な問いでした。
特に今回のターゲットは高校生。学生向けサービスの企画でありがちな落とし穴は、「自分が学生だった頃の経験」をベースに検討してしまうことです。まさに私自身も、そのバイアスに無自覚である危険を感じていました。
そこで、まずは知人・友人のつてを頼り、合計15名の高校生に対面インタビューを実施しました。実際に話を聞いてみて驚いたのは、私たちの世代とはまったく異なる学習環境の実態。特に、総合型選抜(旧AO入試)に対する関心の高さは、ヒアリングを通じて初めて理解できた大きな発見でした。
このような「定性的なユーザー理解」は、プロダクト企画の重要な指針になります。インタビュー結果をもとに、デザイナーと一緒にペルソナとカスタマージャーニーマップをゼロから再構築。さらにFigmaで作成したプロトタイプを、実際の高校生に触ってもらうユーザビリティテストも実施しました。
このテストにはエンジニアも参加し、ユーザーの反応をその場で体感。以降、チーム内には「分からないならユーザーに聞こう」という空気が自然と根付きました。