5.5 権限委譲の対象はPMだけではない
「権限委譲=2人目PM」という考え方は早計です。重要なのは、PM以外のメンバーにも意思決定を任せていくことです。
- エンジニアに「技術選定の裁量」を
- デザイナーに「UX改善や仮説検証の裁量」を
- EMに「開発体制やプロセス改善の責任」を
こうして意思決定の重みを分散し、全員が「当事者意識」を持ってプロダクトに向き合える体制を整えていくことが重要です。結果として、PMは戦略設計や非連続な成長アイディアといった「より本質的な価値探索」に時間を使えるようになります。
5.6 より思考を巡らせるための余白が生まれる
権限委譲が進むことで、PMは単に「手が空く」だけではありません。より長期的で本質的な問いに向き合うための「余白」が生まれるのです。
具体的には以下のようなテーマに集中できるようになります。
- 次の市場や事業成長のための戦略設計
- 長期KPIやロードマップの再定義
- PM2人目や専門人材の採用計画
- PM組織や事業戦略チーム構想への準備
これは、プレイヤーとしてのPMから、「組織を作るリーダー」へ進化していくステップだと言えるでしょう。
まとめ:任せられる構造こそスケールの完成形
ここまで述べてきたように、スケールとは単に人数を増やすことではありません。「限られたリソースでも成果を最大化できる組織構造を作ること」こそが、本当の意味でのスケーラビリティです。
そのためには、以下を一歩ずつ進めていくことが求められます。
- 信頼と実績を先に積むこと
- スケールの順番を間違えないこと
- 仕組み化、再現性、権限委譲を軸に構造を整えること
「PMは経営とプロダクトの間に立ち、ビジネスの意思決定を担う『ミニCEO』であってほしい」
それは、単なる「仕様調整係」ではなく、未来に責任を持ち、組織を構造として機能させるリーダーであるという覚悟です。
今回の内容が、1人でも多くの一人目PMがその状態へ進む助けになれば幸いです。
次回予告:第6回は「キャリアを描く視座」へ
次回は、仕組み化フェーズを超えた1人目PMが、どのように次の段階(Director/CPOなど)へ視座を上げるのか? その道筋と価値観の転換について整理していきます。