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デブサミ2026の初日をProductZineとコラボで開催。

Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

連続的PMFを阻む"壁"の越え方──estie PMFプレイブック

PMFの再現性を高める「3つの規律」と「5つのフェーズ」──estie流“仕組み化”の全貌

連続的PMFを阻む"壁"の越え方──estie PMFプレイブック 第2回

プロダクト立ち上げ→GTMに至る「5つのフェーズ設計」とプロダクトマネージャーの役割

 Disciplineを守るだけで、PMFが十分に進むわけではありません。これだけでは検証は散漫になってしまいます。PMFの確率を上げるうえで大切なのは、PMFまでの道筋を設計図として描き、チーム全体で共通認識を持つことです。estieでは、そのプロセスを次の5つのフェーズに整理しています。

1.ユニット立ち上げ

 最初のステップは「課題仮説」を定義することです。顧客がどのような痛みを抱えているのか、なぜ既存の手段では解決できないのかを明確にします。ここでは「市場規模がどれくらいか」「どの価格で売れるか」といった議論に踏み込む必要はありません。まずは「解決すべき問題が存在する」という仮説をチームで共有できるかどうかが鍵です。

 Exit基準は、課題仮説と解決アプローチが明示的に言語化され、次に小さく試せる状態になっていることです。このときはプロダクトマネージャーやBizDevが1人だけのユニットで始まり、周囲のメンバーに協力をもらいながら進める状態からスタートします。

2.開発

 課題仮説を前提に、最小限のプロダクトを形にするフェーズです。このタイミングでエンジニアとデザイナーがアサインされ、3~4名の体制でスタートします。ここではデザインモックから始まり、最小限の売るに値するプロダクトの開発を実施していきます。さまざまなプロダクトマネジメント書籍にある通り、この時点では完成度の高い製品ではなく、次のフェーズで検証するためのMVPであれば十分です。

 ただし、「本当につくり替える」という前提でない限りは、内部品質は一定基準をクリアしたクオリティでつくることを推奨します。「PMFしたのちに、リニューアルをする」と言ってプロダクト開発をスタートし、本当にリニューアルできた経験は私自身ほとんどありません。なぜならば、MVPに対する顧客の反応が良ければよいほど、立ち止まってつくり替えるという選択がしにくくなるからです。

 プロダクト開発現場でAIを利用した開発が当たり前になり、検証速度もプログラミングの速度も格段に速くなったため、コードリニューアル自体はしやすくなっていますが、「リニューアルを完了するまで新規開発を止める」という人間の選択がなければ、結局は変わりません。また、スピードと品質は必ずしもトレードオフの関係ではなく両立可能です。

 Exit基準は、プロダクトが立ち上がり、顧客に実際に触れてもらえる状態になったことです。

3.セールスPoC

 開発したプロダクトを顧客に実際に提供し、成約を取りにいくフェーズです。ここでは単なる興味ではなく、「契約してでも使いたい」という意志を顧客から引き出せるかがポイントになります。そのため実際にプロダクトマネージャーやプロダクトチームが営業し、契約書を交わします。重要なのは成約率・顧客単価・リードタイムの3つであり、特定セグメントにおいて一定の割合で受け入れられているかを検証するPMFプロセスの本番です。

 Exit基準は、明確に切り出したセグメントで、一定の成約率・顧客単価・リードタイムで販売可能であると証明することであり、estieでは「卒業試験」をクリアする必要があります。

4.継続PoC

 契約した顧客が実際に使い続けるかを確認する段階です。プロダクトを導入したものの、継続利用につながらなければ真の価値があるとは言えません。利用ログや解約率をモニタリングし、顧客が日常業務に組み込むレベルで定着するかを検証することはもちろんですが、より踏み込んで「契約更新する」という疑似体験を顧客に提供する必要があり、estieではいくつかのプロダクト品質を測る手法を持っており、それらを使い分けながら本フェーズの検証を行っています。

 Exit基準は、継続率が一定基準をクリアしていること。単発ではなく、安定的に価値が再現されていると判断できれば次に進めます。

5.GTM(Go-to-Market)

 再現性が確認できた段階で、初めて拡販体制を設計します。営業リソースを投入し、組織的に市場を獲得していく準備を整えるのはこのタイミングです。ここでは対象となるSAM(販売可能な顧客リスト)と、セールスに必要な各種プロセスの仕組み化を行ったうえで、営業組織やカスタマーサクセス組織にイネイブリングすることになります。

 また、販売可能な対象セグメントの拡大も同様に必要です。しかし、それは営業だけに実行してもらうというわけではなく、営業と協力しながら新たなセグメントにPMFをしていきます。つまり、GTMフェーズに至ったから終わりというわけではなく、セグメントごとにセールスPoCと継続PoCを複数回繰り返し、販売可能なセグメントを拡大していくという流れになります。

 ここまで5つのフェーズ設計について話をしてきました。これらの中で、セールスPoC、継続PoC、GTMの3つについては第3回以降で詳細をお話していく予定なのでそちらもぜひ参照してください。

次のページ
フェーズを通じたプロダクトマネージャーの役割の変化

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この記事の著者

久保 拓也(株式会社estie)(クボ タクヤ)

株式会社estie 執行役員 兼 マーケットリサーチ事業本部 事業責任者 早稲田大学卒業後、博展に新卒入社。2013年にリクルートに転職し、HR領域でGM、拠点長などを経験。その後、ユアマイスターに参画、資金調達や中期戦略立案を推進し、プロダクト及び事業責任者として従事。2022年8月に株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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