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Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

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連続的PMFを阻む"壁"の越え方──estie PMFプレイブック

PMFの再現性を高める「3つの規律」と「5つのフェーズ」──estie流“仕組み化”の全貌

連続的PMFを阻む"壁"の越え方──estie PMFプレイブック 第2回

投資と全体俯瞰の仕組み化──チーム投資レビューとプロダクト・マッピング

 新規プロダクトの探索で悩ましいのは、「どこまで投資を続けるか」をどう判断するかです。PMF前は数値目標を外しているため、判断基準があいまいになりやすく、組織内の納得感も揺らぎがちです。そこで私たちestieは、チーム投資レビューを行っています。

チーム投資レビュー — 最低限の仕組みで自律性を守る

 レビューの目的は、プロダクトユニットごとに「学習が回っているか」を確認することにあります。あくまでKGI-KPIの設定と進捗確認にフォーカスし、月に30分~60分という短い時間で実施します。参加者は事業責任者、事業部CPO、CTO、そしてプロダクトユニット。アウトプットはシンプルに「事業指標の進捗」「課題」の確認です。

 ここで重要なのは「具体的なエピックの価値や精度」をその場で論じすぎないことです。価値の有無は往々にして複雑で、短期的なレビューで答えが出るものではありません。そのためプロダクトロードマップも必須にしていません。具体的な開発内容については現場メンバーの方が解像度がよほど高いためです。それよりも大事なのは、適切なKPIに対して進んでいるか、どこにギャップがあるかを会話すること。その思考を回転させるためのアクセラレーターになる場をイメージしており、レビューを重ねて品質を高めるより、プロダクトユニットが自律的に学習を回せる環境をつくることを優先しています。

プロダクトの撤退という厳しいジャッジ

 撤退判断は、第1回で記載したように「オーナーの魂が潰えた時」に行われますが、実際にはもう少し明示的なプロセスを経ています。

 撤退を検討するタイミングから「一定期間を最終投資とし、その中でPMFを証明できなければ撤退する」という条件を置いてスタートします。「オーナーの魂にbetする」という形を取っているからこそ、その想いに区切りをつける意味でも走り切るための期間は必要ですし、その期間があることで学習は最大化します。また、こうしたシンプルなルールを敷くことで、感情的な判断を避けつつスピーディに意思決定できると考えています。

 しかし、撤退判断についてはまだ私たちも十分な学習を回しきれていないため、このプロセスが一番良いかどうかは結論付けられていません。やり切るための継続投資が「ただやめられていないだけ」にならないような仕組みの在り方はまだ検討の余地があると思っています。

最低限の仕組みで前に進む

 ここで強調したいのは、「過度にレビューや管理を重ねる必要はない」ということです。適時適切なレビューを仕組み化するだけで、プロダクトは十分に成長できます。むしろ、プロダクトユニットが自律的に学習を回すために、余計なノイズを排除することの方が重要です。

 チーム投資レビューと撤退判断は、探索を止めないための最低限のガイドレール。これによって、組織はスピードと柔軟性を両立しながら、全体最適の視点も失わずに進むことができます。

おわりに

 PMFはアートではなく、仕組みとDisciplineによって再現可能な営みです。

  • 「3つのDiscipline」
  • 「5つのフェーズ設計」と「プロダクトマネージャーの役割変化」
  • 「チーム投資レビュー」と「撤退判断」

を紹介しました。

 私たちestieは失敗から学び、これらを仕組みとして積み上げてきました。第3回は今回扱った5つのフェーズ設計の中でも特に重要となる「セールスPoC」と「継続PoC」の2つについて、その指標の考え方や具体的な卒業基準などより詳細に掘り下げていきたいと思います。

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この記事の著者

久保 拓也(株式会社estie)(クボ タクヤ)

株式会社estie 執行役員 兼 マーケットリサーチ事業本部 事業責任者 早稲田大学卒業後、博展に新卒入社。2013年にリクルートに転職し、HR領域でGM、拠点長などを経験。その後、ユアマイスターに参画、資金調達や中期戦略立案を推進し、プロダクト及び事業責任者として従事。2022年8月に株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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