デザイナーとのコミュニケーションは「楽勝」ではなかった
「デザイナーの気持ちが分かるから、連携はスムーズにいくはずだ」。この思い込みも、見事に打ち砕かれました。
「デザイナーなら、これくらい抽象度が高いほうが自由に考えられてやりやすいだろう」と思って渡した案件が、なかなか進まない事件が起きたのです。そこで痛感したのは、「デザイナー」という職種の守備範囲の広さと、個人のスキルの多様性です。
デザイナーの守備範囲は戦略から表層まで多岐にわたり、得意とするスキルは当然人によって大きく異なります(参考:The Elements of User Experience)。
スキルに加え、個人特性の違いも変数としてあります。ロジックに強い人、ビジュアル表現が得意な人、リサーチを重視する人。一人ひとりの特性を理解し、相手に合わせた「情報の渡し方」を設計するのもプロダクトマネージャーの仕事です。図と文章、どちらが理解しやすいか。チームミーティングと1on1、どちらで先に伝えるか。あえてプロダクトマネージャーが直接伝えず、状況から本人が気づいて提案してくれるのを待つケースもあり得るでしょう。
臨機応変に、といえばその一言に尽きます。ただ一点気をつけるべきは、「細かなHowには口を出しすぎないこと」。代わりに、背後にある『なぜ(Why)』と『誰に(Who)』だけは、何度聞かれても嫌な顔をせず、絶対にブレずに伝え続けることです。
プロダクトマネージャーが目指すべき体験の旗を立てれば、デザイナーは一段と動きやすくなります。デザイナーを単なる寡黙な作業者から自律的な創造者にする鍵はプロダクトマネージャーが握っているのです。
価値を届けるチームになるためのOKR設計
最後に、私が実践している、デザイナーを含めチーム全員が納得感を持って走るための小さな仕組みを紹介します。
かつて、エンジニアやデザイナーから「目の前の機能開発に追われ、コードのリファクタリングやデザインシステムの改善が後回しにされている」というモヤモヤを聞くことがありました。デザイナーだった私も同じモヤモヤを当時のマネージャーに漏らしたことがあります。これらはビジネスインパクトが見えにくいため、プロダクトマネージャーとしては優先順位を上げにくい項目です。
そこで私は、チームのOKR(目標と成果指標)の立て方を変えました。KRの比率を「短期・中期・長期」で明文化し、あらかじめ枠を確保したのです。
- 年度前半(顧客の運用開始期): 短期5:中期3:長期2
- 年度後半(顧客の継続意向確認期): 短期6:中期3:長期1
「長期」の枠には、リファクタリングやデザインシステムアップデートなどを明示的に含めます。このように比率を数値化して握っておくことで、メンバーは「自分たちのやりたい改善も守られている」という安心感を持って、目の前の開発に集中できるようにしました。
また、OKRはプロダクトマネージャーだけで作るのではなく、叩きをベースにデザイナー、エンジニア、QA全員で議論して完成させます。職種横断で目指すべき先の解像度を上げる文化が、結果として「顧客に価値を届けるチーム」の更なる進化に繋がると信じているからです。
終わりに
デザイナーからプロダクトマネージャーになって気づいたのは、視点が変われば「正解」も変わるということです。しかし、「良いプロダクトをユーザーに届けたい」という根底の想いは共通しています。
デザイナー出身だからこそ、UXの理想は高く持ちつつも、ビジネスのサイクルやチームのリソース配分を冷静に見極める。この2つの視点を往復し続けることが、プロダクトを、そしてチームを次のステージへ引き上げる鍵になると私は確信しています。
プロダクトマネージャー転身時に感じていた「プロダクトのユーザー体験(UX)を加速させたい」という思いを、今後もデザイナーを含めたさまざまな職種の力を存分に引き出すことで実現していきます。
いかがでしたでしょうか。今回の記事内容が何か新たなアイデアとなって読者の皆さまの運用やマネジメントにおいて、活用できる場面があれば幸いです。
