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デブサミ2026の初日をProductZineとコラボで開催。

Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

プロダクト開発の先進事例に学ぶ、キーパーソンインタビュー

Notionのプロダクトマネージャーが語るプロダクト開発の裏側──「プロダクトのCEO」ではなく「創業者」としてPMFに向き合う


 国内のプロダクトマネージャーから熱狂的な支持を集めるコラボレーションツール「Notion」。同社は先日、新たな「デベロッパープラットフォーム」を発表し、開発者向けの機能を大幅に強化した。本記事では、Notionのプロダクトマネージャーを務めるEric Goldman(エリック・ゴールドマン)氏へのインタビューをお届けする。同氏の言葉から、新機能開発の裏側にあるプロダクトディスカバリーの過程や、AI時代におけるプロダクトマネージャーの役割、そしてNotionの開発組織のリアルな進化を紐解いていく。

プロダクトマネージャーを魅了するNotion、その進化の現在地

 日々の業務でロードマップの作成や要件定義、ドキュメント管理を行うプロダクトマネージャーにとって、Notionはもはや欠かせないツールの一つとなっている。直感的なUIと高い柔軟性を持ち、多くのプロダクトマネージャーが「Notionファン」を公言してはばからない。

 一方で、これまでのNotionはソフトウェアデベロッパー(エンジニア)向けの機能拡張やAPI提供という点では、必ずしも先行しているとは言えなかった。しかし先日、Notionは新たな「Developer Platform」を発表し、開発者との連携を本格的に強化する姿勢を見せた。

インタビューに応じるNotion プロダクトマネージャーのEric Goldman氏
インタビューに応じるNotion プロダクトマネージャーのEric Goldman氏

 なぜ今、Notionは開発者向けの機能に大きく舵を切ったのか。そこには、AIとコーディングエージェントの進化を前提とした、まったく新しいプロダクト戦略が存在している。Notionのプロダクトチームに所属するプロダクトマネージャー、エリック・ゴールドマン氏に、新機能の背後にあるディスカバリーの過程から、Notion社内の開発体制の変化まで、余すところなく語ってもらった。

AIがもたらすパラダイムシフト:「翻訳レイヤー」からの脱却

 近年、AI技術の発展はあらゆるソフトウェア開発の現場に影響を与えているが、Notion社内でもそれは例外ではない。ゴールドマン氏は、全体的なトレンドとして「AIがプロダクトチームとエンジニアの距離を縮め、そして両者が顧客により近づく手助けをしている」と指摘する。

 これまで、最先端のシステム構築を実現するための最適なツールは、常に開発者向けの抽象化レイヤーや専用ツールだった。しかし、それらは使い方が難しく、一部の専門家にしか扱えないという課題があったという。

 「AIやコーディングエージェントの登場により、ターゲットとなるユーザー層全体が以前よりはるかに大きくなっています」とゴールドマン氏は語る。Notionが目指すのは、開発者やプロダクトマネージャーにとって使いやすいだけでなく、ビジネスのオペレーションチームなど「関わるすべての人にとって理解しやすく、使いやすい」プラットフォームへと進化させることだ。将来的には、強力な開発者ツールがNotionの提供するAIエージェントの中に自然に組み込まれ、ナレッジワーカーがより簡単にアクセスできるようになるという。

 こうした技術の進化は、職種の垣根をも溶かし始めている。日本の開発現場でもエンジニアがプロダクトマネージャー的な役割を担うケースが増えているが、Notionではどのようにチームを編成しているのだろうか。

 ゴールドマン氏は「一般論として、本当に素晴らしいプロダクトは顧客とともに構築されるものだ」と前置きした上で、次のように説明する。

 「歴史的に、プロダクトチームは顧客とエンジニアをつなぐ『翻訳レイヤー』のような役割を果たしてきました。しかし、翻訳のプロセスを経るごとに情報の一部が失われるリスクがあります。エンジニアリングとプロダクトのチームを顧客に近づければ近づけるほど、真に問題を解決できる可能性は高まります」

 現在Notionでは、すべてのチームを可能な限り顧客に近づける試みを行っている。エンジニアが顧客の課題を理解して自らプロダクトの仕様を決定・構築する一方で、プロダクトチームやデザインチームも自らプロトタイプを作成する。全員が「プロダクト」という媒体の中で直接作業をする世界観だ。

 しかし、だからといってプロダクトマネージャーが不要になるわけではない。「それを確実に市場に投入し、本当に価値のあるものにする作業は以前と変わらず困難なままです。そして、その最後のステップにこそ、現在のプロダクトマネージャーの役割が本当に存在していると考えています」とゴールドマン氏は強調した。

調整業務はAIへ。プロダクトマネージャーは「ビッグベット」に集中する

 Notionの開発組織における変化は、現場のプロダクトマネージャーの働き方にもダイレクトに影響を与えている。Notionのプロダクトチームに参加して9か月になるというゴールドマン氏は、自身が観察している組織の変化について「プロダクトマネジメントにおいて、コミュニケーションや調整といった業務が大幅に減っている」と明かす。

 従来、プロダクトマネージャーの多大なリソースを奪っていたステークホルダー間の調整や情報共有といった業務のほとんどは、今や部門の手を離れつつあるという。AIエージェントを活用することで、より効率的にそれらを処理できるからだ。

 「その結果として、すべてのプロダクトマネージャーは、会社としてより大きな取り組み(ビッグベット)に注力しなければならなくなっています。Notionでは、影響力の大きいプロダクトの取り組みにのみ焦点を当てられるよう、チームの再構築を行っています。プロダクトマネージャーが業務時間の大部分を、プロダクトの価値提供(デリバリー)そのものに集中できるようになっているのです」

数千の要望をどう解決したか。プラットフォーム誕生の裏側

 プロダクトマネージャーにとって、ユーザーからの要望をどのように集約し、どのような仮説検証を経て機能に落とし込むかという「プロダクトディスカバリー」の過程は最も関心の高いテーマの一つだ。

 今回のDeveloper Platformのリリースに至るまで、Notion内部ではどのような議論があったのだろうか。ゴールドマン氏によれば、出発点は極めて明確な顧客のペインだった。

 「何百万人ものお客さまがおり、誰もが外部のツールやデータとNotionを連携させる『インテグレーション(統合)』を何十も望んでいました。顧客ベース全体を見渡すと、何千もの異なる要望が寄せられていることになります。さらに難しいのは、例えばGitHubとの連携という同じ要望であっても、お客さまごとに自社のビジネスに合わせたカスタマイズを求めていたことです」

 膨大な数と、細かなカスタマイズのニーズ。このトレードオフをどう解決するか模索していたNotionチームにブレイクスルーをもたらしたのが、最新のAIフロンティアモデルの進化だった。2025年12月頃、AIモデルが非常に優秀になってきていることが明確になり、「インテグレーション問題をまったく新しい方法で解決する機会がある」と確信したという。

 社内でさまざまなアプローチのプロトタイピングを繰り返した結果、「どの道を選んだとしても、コーディングエージェントを主要なユーザーの一つとして想定することが不可欠だ」という結論に至った。

 「何千ものインテグレーションを網羅しつつ、すべてのインテグレーションをお客さまごとに完璧にカスタマイズできるようにする。この2つの重大な問題を解決する最も簡単な道筋が、コーディングエージェントとの相性が最もよい『開発者ツール』への多大な投資だったのです」

ロードマップは「機能」ではなく「問題」の優先順位付け

 やるべきことが明確になったとはいえ、企業にはリソースの限界がある。膨大なバックログの中から「やること」と「やらないこと」をどう見極め、社内で合意形成していくのか。この問いに対して、ゴールドマン氏はNotionの強みとして「強力なビジョン」と「エラー修正システム」を挙げる。

 Notionには、AIの未来に向けてプロダクトをどう発展させたいかという非常に明確なビジョンがある。同時に、情熱的なユーザーからの迅速なフィードバックがあり、何より開発メンバー自身が毎日自分たちの仕事でNotionを使い込んでいる。

 「ビジョンとロードマップの間にズレが生じても、迅速に修正できる非常にうまく機能する『エラー修正システム』が存在しています。その結果、共同創業者兼CEOのIvan Zhao(アイバン・ザオ)や、プロダクト責任者のMax Schoening(マックス・ショーニング)といったリーダー層は、自信を持って問題の優先順位付けを行い、その解決方法についてはチームに完全な自由を与えることができているのです」

 今回の新機能も、インテグレーションが最重要課題であることはセールスチームや顧客の声、そして社内の実感から明らかだった。だからこそ、迅速にプロトタイプを作り、デプロイし、フィードバックを得ながら、問題が解決するまで機能のイテレーションを繰り返すことができた。

 ゴールドマン氏は、プロダクトマネージャーに向けて一つの重要な金言を残した。

 「おそらく何千回も言われていることでしょうが、読者の皆さまにとって重要だと思うのは、ロードマップは『機能の優先順位付け』ではなく『問題の優先順位付け』であるべきだということです。これこそが企業において優先すべき最も重要なことであり、私たちが実践していることです」

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プロダクトマネージャーは「プロダクトのCEO」ではなく「創業者」であれ

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。 1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテック...

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