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成長企業の事例から学ぶプロダクトマネジメント(PR)

ネット証券最短で100万口座突破した「LINE証券」が、プロダクトマーケットフィットした背景とは?

収益とユーザーニーズのバランスをとりながらプロダクトを成長

 LINE証券の成果指標はいろいろあるが、主なビジネスモデルは売買コストであるため、口座数や売買代金、預かり資産は重要である。Webのプロダクトとしてリテンションレートなども重視されている。ほかの企業とは異なり、LINEからの膨大なトラフィック享受できる点は優位にあると想像したが、実情は違っていた。30万口座を達成したのがローンチから1年後の2020年8月で、50万に達したのは2021年2月、そこから半年で100万と、今年になって加速度的にユーザーが増えている。コロナショックで株価が下がったことをチャンスと捉えたユーザーが参入したことや、緊急事態宣言下の自粛によって可処分時間が増えたという外的環境に加え、プロダクト作りの試行錯誤が効いてきたのだ。

 石川氏は、口座開設数100万を達成するに至った背景や苦労、工夫について、次のように説明する。

 「LINEのファミリーサービスに実はよくありがちな話で、LINEから導線を引いたからといってそれだけでユーザーが爆増することはありません。正直最初は期待した数字は出せませんでした。プロダクトの魅力を高めてから踏めると判断したらマーケティングを行うという考え方が基本で、1株単位の取引をリリースした後にさまざまな商品を拡充していった結果です。独特な施策を挙げると、口座開設してクイズに正解すると株購入代金をプレゼントする『初株チャンス』があります。株に対する知識がない方にもその価値を訴求していくために、お得な見せ方だけでなく、小額でも株を持つことによっての意義や、いかに簡単に口座が開設できるかといった訴求を細かくテストして変更を繰り返し、価値をよりわかりやすく伝えることをUXでもマーケティングでも工夫していきました。

 また、SNS上での広がりをつくる狙いとしてユーザーが『嬉しい』と思った瞬間を他の方にシェアしやすいようなUXをつくることを工夫しながらLINE証券で提供できる価値をユーザーに浸透させていきました。例えば、初株チャンスによって実際に株を保有されたユーザーがメリットをより感じられるよう受け取った配当金額をLINE公式アカウントで個別に通知したり、UI設計ではTOP画面の資産推移で増えた手応えを実感してもらいやすくする、ポートフォリオでは各アセットクラスを揃えたときにカラフルになるようにする、評価損益を見やすくする、一定の資産額を達成するとバッチを付与するなどです。ただ良い機能・仕組みを提供するのではなく思わず友だちなどに話したくなるような体験や感覚を生めるようにということを常に意識していますし、これはLINEという会社の価値基準でもあります」(石川氏)

 プロダクト開発については、リソースと得られうる結果を考慮し優先順位をつけて行ってきた。売買代金が収益につながる事業ではあるが、すぐに収益にはつながりにくいがユーザーの要望が高い「iDeCo」や「つみたて NISA」などの商品もラインアップするべきで、各商品のリリース時期などのバランスをとるため、社内で議論を重ねていった。

 日々変化するユーザーニーズを捉えるために、さまざまなリサーチやユーザーインタビューも行っている。LINEには調査会社出身のメンバーで構成されるインサイトリサーチ室もあり、そこからのアドバイスも得られる。UXのリサーチについても専任の組織があり、定量データに加えて定性情報も集めてプロダクト企画に生かしているという。

 「LINEのサービスづくりでは、ユーザーのペインポイントを解決することを最も重視しています。上層部への報告会などでしつこく聞かれます。ユーザーの大きい課題を解決すれば最終的に事業が成功するという考えです。先ほど、LINEから導線を引いただけでは口座開設は増えないと言いましたが、流入自体はあるのでプロダクトのPDCAを高速に回せます。同じ流入を得るためにさらに莫大な広告費を出すのは難しいでしょう。また、テレビなどで紹介いただく際に『LINEのここからアクセスできます』といった形で分かりやすく伝えることもできます。口座開設前のユーザーと数多く接点を持てるといった点では非常に恵まれた環境です」(石川氏)

ユーザーの課題を理解・解決しながら、日本の投資人口を増やしていく

 各分社で経験を積んだプロフェッショナルの人材が協力しながら、なおかつ膨大なユーザートラフィックという環境でチャレンジしていけるのがLINE証券でのプロダクトづくりの醍醐味と言える。その中心となるのが、ユーザーにとって価値あるものを作っていくという姿勢だ。その先にあるLINE証券のゴールについて石川氏は次のように語った。

 「この事業を通じてやりたいことは、投資を行うことでの成功体験を多くのユーザーに提供し、日本で投資・資産運用を当たり前にしていくことです。競合とのユーザーの奪い合いではなく、これまで投資とは関係ないと思っている人に興味を持ってもらって、人から人へ広まっていく間に『投資は危ない』といったようなイメージをなくし、投資のメリットを享受できる人を増やしていきたいです。

 今後は、投資をいかに楽しくするか、そしていかに成功体験をサポートできるかを考えながら、自動化のサービスや投資の確度を高めるツールも提供していきたいです。たとえばTwitterなどでポートフォリオを公開している人が自然発生的に増えているのを見て、ほかの人の投資行動が見えるサービスなどもニーズがあると思い、新機能としてローンチを予定しています。

 もちろん事業として成長させる部分への意識もありますが、何よりもユーザーに高い価値を提供できるプロダクトにすることを第一に考え続けていきたいです。正直やるべき課題、やりたい機能・改善もまだまだ多いプロダクトですが、日本の習慣を変えられる可能性があると信じているので、これからも試行錯誤を続けていきたいと思います」(石川氏)

 プロダクトマーケットフィットを達成し、急成長へのアクセルを踏んだLINE証券では、各セクションでプロダクトマネジメントを行うメンバーを募集中。ユーザーの不安解消や投資行動の成功に挑戦し、日本人の投資意識や習慣を変えていく情熱を持った人を求めている。

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

メディア編集部 メディア1(CodeZine/EdTechZine/ProductZine)編集統括 兼 EdTechZine/ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開...

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