プロダクトマネージャーのための「成長支援」プログラム
理想のプロダクトマネージャーの成長支援のために展開されているのが「PdM Forward Program」だ。「育成」ではなく「成長支援」としているのは、より当事者意識を重視しているからである。「育成」という言葉はどこか受動的な印象を受ける。成長の結果にコミットするのはプロダクトマネージャー自身であるべきという考えだ。
成長支援プログラムは、4つのコンテンツで構成される。「PdM Workshop」では、プロダクトマネージャーに必要なマインドや優れたプロダクトを生み出すためのポイントを講座やグループワークを通じて学ぶ。「PdM Bootcamp」は、デモンストレーションやプレゼンテーションを通じて、プロダクトマネージャーにとって重要な仮説検証力を鍛える。
「Career Session」は、50人を超えるメンバーからなる組織の中で、シニアメンバーも含む先輩プロダクトマネージャーのキャリアや知見、こだわりを吸収し、自身の成長につなげる。「CPOオープンドア」は、日々発生するさまざまな悩みを他のプロダクトマネージャーとシェアしながら、最終的にはCPOにも相談できる場だ。
広瀬氏は、特に注力しているPdM WorkshopとPdM Bootcampについて説明した。
PdM Workshopは講義型、ワークショップ型、個人ワーク、グループワーク、Q&A、感想レポートなど多様なコンテンツで構成されている。オリエンテーション、マインド編、実践編の3つの主要セクションから成り立っている。マインド編では、プロダクトマネージャーに必要なマインドセットを講座とグループワークで探求し、個人ワークの結果を共有する。実践編では、徹底的なリサーチと理想のプロダクト構想をもとに、プロダクト作りの思考プロセスを学び、理想のプロダクト提案書の作成を通じて、成功するプロダクト作りの基礎を習得する。
理想のプロダクト提案書の例として、将来導入してほしい企業リストをロゴ付きでまとめることがある。これにより、プロダクトが目指す方向性をプロダクトマネージャーだけではなく、ビジネスメンバーやエンジニアも含めて感覚的に共有できるようになる。
広瀬氏はPdM Bootcampについて「最も過酷な研修プログラム」と言う。これは、仮説検証を含む3ステップの実践型アプローチを取る。社外デモをステージゲートとしながら、自動車免許の教習のように「仮免」「卒検」が設定されている。
仮免では、事務局(CPO室長およびデザイン部長)を顧客役としてデモを実施し、それが適切なレベルかどうかをチェックする。卒検では、本部長(事業責任者、管理部門長)を顧客役としてデモを行い、社外でのデモを実施して良いレベルかどうかチェックする。仮免よりも詳細な質問が飛び交うことになり、シニアプロダクトマネージャーでも驚くような厳しいやりとりが発生する。
約1年前に始まったこのプログラムは現在第5期に進み、参加チーム間での相乗効果と相互成長を促している(講演された2024年1月時点)。実施結果は社内で情報共有され、プロダクトマネージャーだけでなく、デザイナーやエンジニア、ビジネスチームも利用して社内プレゼンスの向上や開発の促進を図っている。
広瀬氏は最後に「世界中のプロダクトマネージャー職にとってのバイブルの一つ」だと言う書籍『INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント』(マーティ・ケーガン著)の一節を紹介しながら、次のように講演を締めくくった。
「優れたNo.1プロダクトの背後には必ず同じく優れたプロダクトマネージャーがいると捉えています。マネーフォワードは、最強のプロダクトカンパニーを目指しており、そのためには各プロダクトマネージャーがユーザーやパートナー、社内のステークホルダーから信頼されるよう成長していくことが不可欠です。成長支援プログラムを今後も積極的に展開していくということがCPO室や私にとっても非常に重要なミッションです。今後もブラッシュアップしていきます」