関係者も含めた過去を理解し、新たな方針のもと前進する
2つ目のポイント「過去の理解」は、プロダクトに関する過去の積み重ねを正しく理解し、リスペクトすることだ。現在のプロダクトや事業組織は、これまで周囲の人々が築き上げてきた結果である。過去を正しく評価しないと、組織内での心の問題を克服できない。
新しく事業に加わった人々はしばしば、目の前にあるすべての課題を負債とみなすことがある。この感覚は彼らの態度や発言に影響を及ぼす場合があり、その結果、過去に携わった関係者の努力を否定しているかのように感じられることがある。このような態度は、自らが望まない形で、周囲から信頼の置けない存在と見なされてしまうリスクを伴う。
引き継ぐ人は、プロダクトそのものだけでなく、ユーザーや組織、ビジネスに関してそれまでの経緯も理解する必要がある。自分が見つけた問題点は、過去に誰かがすでに考えていた可能性が高いからだ。間違っているのは自分の方かもしれないという意識を持ちながら、過去の経緯を深く理解する姿勢が重要となる。
御守氏は、STORES での引き継ぎ業務の際、ユーザーからのサポートへの問い合わせ、ビジネスチームからの開発要望リストなどをくまなくチェックした。そして、自らの考えを整理してディスカッションするなど、積極的にフィードバックを得ていった。スタートアップでは、誰が何を知っているかが不明瞭なため、得た知識を周囲と共有することで、組織全体に利益をもたらすことができる。
3つ目のポイントは「未来の方針」。これは、新しい意思決定者として、成果を出すための方針を示すことだ。ベースとなる「現状のSync」と「過去の理解」に、自分の考え・思いを加えて計画を立てる。未来の方針がなければ、状況に変化は起きない。前進するには、全員の心を一つにして今後の方針を示すことだ。ここで重要なのが、自己の過去の成功体験を持ち込むのではなく、その組織に合ったアプローチを選択し、実行可能な範囲の目標を設定すること。御守氏は「すべての要求を満たそうとすると、実行不可能になり、結果的に信頼を失う」と注意を促した。
御守氏は、STORES ネットショップ において短期、中期、長期に分けた方針を示した。短期ではコロナによるユーザー増加に対応したプロダクトの耐久力向上、中期では基本機能の提供、長期ではプロダクトの多角化を目指すというものだ。