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ProductZine Dayの第3回。オフラインとしては初開催です。

ProductZine Day 2024 Summer

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はてなのプロダクト開発の舞台裏

プロダクトを成功させるため、はてなのCREがやっていること~成功を導く3つのドッグフーディング

はてなのプロダクト開発の舞台裏 第2回

 はてなでは2017年8月にCRE(Customer Reliability Engineer)という職種を設置し、活動を続けてきました。本稿では、はてなの「Mackerel」とプロダクトの事例を通して、CREがカスタマーやプロダクトの成功について、どのように考え、活動しているかを紹介します。(編集部)

はじめに

 井上大輔(@a_know/GitHub: a-know)と申します。株式会社はてなでCRE(Customer Reliability Engineerの略称、詳細は後述)という職種として業務に従事しています。担当プロダクトは、サーバー監視サービスのMackerelです。

 現在の所属に至るまでの間、製造業のシステム子会社やいくつかのWeb系企業でのシステム開発・運用業務を経験してきました。いわゆる"Webサービス"が好きで、余暇の時間で趣味のサービスを作ったり、そのためのインプットをしたりしています。

 また現在は、出身が岡山ということもあり、家族の事情などを考慮し、昨年7月から岡山県倉敷市に住まいを移し、フルリモートで仕事をしています。

"CRE"について

 みなさんは"CRE"(Customer Reliability Engineer)という職種をご存知でしょうか。かのGoogleが先駆けて考案した職種で、はてなでは2017年8月に職種として新設されました。私もその新職種立ち上げに関わったメンバーの一人です。詳細はぜひ以下のブログエントリをご覧ください。

 CREという職種を掲げ、その名に負けないようにと、この3年弱のあいだ、さまざまな活動を続けてきました。テクニカルサポートの窓口としてさまざまなお客様のお困りの点を一緒に解決したり、お客様のところにお伺いをして、良い点も悪い点も含めた生の声を直接ヒアリングしたり。そうした活動を通じて、おぼろげながらに見えてきたものがあります。同じくGoogleが提唱した技術体系であり、また現在ではさまざまな企業でも取り組まれている"SRE"(Site Reiability Engineering/Engineer)とは異なり、"CRE"は、企業ごとに"Customer"(お客様)が異なるがゆえに、"CREing"(Customer Reliability Engineering)を実践し達成するためのアプローチもまた、企業ごとで大きく違うのではないか、ということです。

 もちろん、どんな企業におけるCREであっても共通する部分はあるとは思います。この稿では「はてな・MackerelにおけるCRE」や「CREのプロダクトへの関わり方」について書いています。そのため、もしあなたやあなたの所属する企業がCREに取り組んでいる場合、参考にしていただける部分とそうではない部分があると思います。私たちも意識はしているものの、CREに関して公にされている世の中のアウトプットは、まだまだ多くはありません。これをきっかけに、「自分たちが実践するCREについても発信してみよう」と思っていただければ、私も嬉しいです。

はてなにおける"CRE"

 はてなのCREは、お客様に寄り添い、お客様が抱える真の課題にフォーカスし、その課題を技術を軸としてお客様と共に解決を図るをミッションとして掲げています。また、そのミッションの達成を支える行動指針として、以下の4項目を据えて日頃活動を行っています(「はてなCREの4本柱」などと呼んでいます)。

  • エンジニアリング
  • データドリブン
  • カスタマーサクセス
  • プロダクトサクセス

 まずはエンジニアリングについて。はてなでは、「技術が好き」ということを「はてなバリューズ」として掲げています。そのため、この項目を「4本柱」に組み込んでいることはさもありなん、という感じなのですが、"CRE"の文脈でエンジニアリングが指す領域にはもう少し広範なイメージを持たせています。「コードを書いて問題解決!」といったものばかりではなく、「大きな問題を小さな問題に分割して、それぞれの解決策を組み立てること」(リーダブルコード第10章(オライリー・ジャパン)にもある言葉です)を意識してやっていきたいですね、というニュアンスです。

 データドリブンについては、CREとしてだけではなく、はてなという会社全社的においても取り組んでいくべき考え方だと捉えています。自分たちが採った施策の効果測定であったり、Reliabilityの対象であるお客様(Mackerelのお客様は世界中にたくさんいます!)の解像度を上げたり、それを担保するという意味でも、欠かすことのできないファクターです。

 次に、カスタマーサクセスについて。「カスタマーサクセス」という用語の一般的な意味としては、「プロダクトやサービスを買ってくださったお客様に成功を届ける」というものになります。SaaSやクラウドサービス(買い切りモデルではなく、リテンションモデルのプロダクト。Mackerelもこれに該当します)の利用がますます広まっていく世の中において、カスタマーサクセスという分野は今後幅広い職種に問われる考え方の一つになってくると、私は確信しています。なぜなら、単価が低く解約のハードルも低いリテンションモデルのプロダクトでは、長く使ってもらうことこそがビジネスの成功要因であり、そのためには、お客様が継続的に成功を収めていただくことは必要不可欠だからです。

 Customerと名につく職種であることから誤解されやすいのですが、カスタマーサクセスは、特定の誰かがやればいいというものではなく、プロダクトに関わる全員が意識できてしかるべき考え方です。その一方で、はてなでは、カスタマーサクセスを力強くリードしていく役目をCREが担ってもいい、とも考えているため、これを4本柱の一つに据えています。

 そして最後に、本稿の主題であるプロダクトサクセスです。上述のリテンションモデルのプロダクトでは、そもそもプロダクト自体が良いものであることは第一条件であるとされていることに加えて、リテンションモデルの成功(=お客様がプロダクトに満足し続け、成功を収め、その結果として継続的に長く利用してくれること)には、プロダクトが日々良いものに発展しつづけることは必要不可欠です。これを達成するための役割を、エンジニアリングのバックグラウンドもありお客様との接点も持つCREが担うことの意義は大きいはず、と考えています。

 Mackerelは、チーム全体だけでなくお客様とも一緒になって、プロダクトそのものをさらによりよいものにしていけるフェーズです。それができるという面白さ、やりがいがあるプロダクトであると感じています。

 ちなみに、これがプロダクトサクセスという言葉の世間一般的に通用する定義、というわけではなく、「こういったことをプロダクトサクセスと呼ぶことにしよう!」と、私たち自らが宣言して活動をしています。

 「カスタマーサクセス」と言葉が似ているので、その違いが気になる方もいるかもしれませんが、そもそも比較するような概念ではなく、「カスタマーサクセスの考えをプロダクトに対しても振り向けて活動していく」ということを指して「プロダクトサクセス」と表現しています。この活動によって、プロダクトそのものの価値向上や、新しいお客様を生み出すことにも繋がる、と信じています。

 以降では、プロダクトサクセスという観点でCREとプロダクトとの関わりについて詳しくご紹介していきます。

次のページ
プロダクトサクセスを実現するためにやっていること

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この記事の著者

井上 大輔(株式会社はてな)(イノウエ ダイスケ)

@a_know / GitHub: a-know 。プログラミングを仕事にすることに憧れ、2006年、製造系SIerにSEとして新卒入社。はてなの前社長である近藤淳也氏の著書『「へんな会社」のつくり方(翔泳社)』を読み感銘を受け、Web業界を志す。その後、ソーシャルゲームのバックエンドエンジニアや広...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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