はじめに
前回の記事では、アルファ室のような横断組織のプロダクトマネージャーに求められる特殊な役割について、ご紹介しました。プロダクトの価値提供を支える、組織内で必要になる仕事(Bサイド)が非常に重要なポジションということがお分かりいただけたかと思います。
今回は、Bサイドに終始して、一見プロダクトから離れていそうなアルファ室のプロダクトマネージャーが、DMMという巨大組織の中でどのように開発の現場と関わり合っているのかをご紹介したいと思います。
多事業組織における「距離の壁」
DMMは5000名以上の従業員を抱える多事業の組織です。横断のPM組織、アルファ室が発足したからといって、もちろん組織構造はそれなりに縦割りの状態です。そのため、最初は数部署で完結すると思っていた開発が、いつの間にか何十部署も関与しているということも、まれではありません。
中小企業やスタートアップであれば、キーマンを捕まえて話に行って、やりたいことを伝えられるかもしれませんが、人数が多くなってくるとそうもいかず、適切なオーナーに話を通さなければいけません。
部署が離れれば離れるほど、壁が厚くなり、直接・素早く・正確な意思疎通をすることが難しくなってきます。これを、私は「距離の壁」と呼んでいます。
「距離の壁」を放置すると?
プロダクトのオーナーとして要求を出したり、全社に関わる施策を各ステークホルダーと調整して実行に移したりする際には、横断組織アルファ室の立場上、当然一気に何十という部署が関わることが多いです。
距離の壁越しに要求を伝えなければいけませんが、これをこのまま放置していては、当然、良いモノはできてきません。以下のような課題は、多くの企業でも発生することがしばしばありますよね。
仕上がりが期待値と違う
明らかに要求と違うものが出てくることがあります。要求が悪かったのか、その後の要件定義が悪かったのか、それさえも誰も分からない状況で、総じて、プロジェクトの進行がよくなかったと総括されることが多いです。
別の場所で誰かがなんとかしてくれる
プロダクト視点を持ったプロジェクトマネージャーやテックリードのような人が、要求をよい方向に導いたり、適切にエスカレーションをしてくれたりします。これは結果的には良いパターンですが、属人的である証拠であり、これもまた、良いモノづくりの環境とはいえません。
横断組織アルファ室のプロダクトマネージャーの立場としても、言ったままであとは仕上がりを待つ(「距離の壁」を放置する)ことは望ましくないと言えます。