組織変革期に新しい文化を浸透させるためのポイント
ティール型組織を軌道に乗せる上で、以下の3つの重要なポイントがあると思います。
1.上層部から意識変革を行う
これまで、ヒエラルキー型組織に属しているメンバーは、「上から指示があれば業務を進める」という意識で仕事を行ってきました。そのため、メンバー自身へ組織変革について伝えたとしても、十分に理解して自発的に取り組むような変革を起こすことは難しいと言えます。
しかし、このヒエラルキー型組織の「上下関係が強固である」という特長を活かし、まずはマネージャーを含めた上層部の意識を変えることが、ティール型組織の導入と浸透を進めるための重要なステップとなります。これまで誇りを持って開発チームをけん引してきたマネージャー層であれば、ティール型組織の理念に共感し、その考え方を自チームに適切に展開していく役割を果たしてくれることでしょう。
2.ティール型組織における評価制度を社内で確立させておく
ティール型組織を採用する以上、各メンバーの評価方法についても、「MBO(目標管理)に基づくトップダウン型の評価」から「メンバー間での合意形成に基づく評価」へと移行するのは、自然な流れだと考えられます。
この移行には、「1.ティール型組織の価値観に沿った公正な評価を実現できること」と「2.メンバーのエンゲージメントを高め、成長を促す評価プロセスを実現できること」という、合意形成型の評価方法がもたらす2つの利点があります。
まず、1について、ティール型組織は上下関係に依存せず、自律性と協力を重視する文化を持っています。合意形成型の評価方法は、透明性と公平性を確保しながら、メンバー間の信頼関係と相互理解を深めます。この仕組みにより、上司の主観や上下関係に影響されることのない、多面的かつ公正な評価が可能になります。
次に、2について、メンバーが評価プロセスに関わることで、自身の目標や改善点をより主体的かつ明確に把握できるようになり、成長や学びの機会が増えます。また、評価に全員が参加することで、組織への一体感やエンゲージメントが向上し、協力体制がより強固なものとなります。
このような評価制度を形作るためには、社内で具体的な仕組みを確立することが必要不可欠です。この取り組みは、ティール型組織を組織全体に浸透させるための重要なステップになると言えます。
3.レイヤーを問わず、日々の細かなコミュニケーションをかかさない
全メンバーとの距離が離れていると、プロジェクトを進める際に一体感を持ち、人を巻き込むことが難しくなる要因となります。そのため、日々の細かなコミュニケーションを通じて、困ったときにお互いが助け合える距離感を常に築いておくことが非常に重要です。
当社では、メンバー層に対して「プロジェクトを円滑に進めるために、他のメンバーを巻き込みながら行動できているか」を評価基準の一つとしています。これは、メンバー同士の協力を促し、全社的な視点で開発を進めながら、能動的かつ主体的に業務に取り組める環境を目指すためには大事な観点だと考えています。
また、マネージャー層では、「自チームにとどまらず、自分の担当領域外のチームにも積極的に支援を行えているか」を重視しています。現場の変化を早期にキャッチアップして軌道修正できる体制を整えることを目的としています。この視点は、合意形成型の評価を行う上で、全メンバーとの理解を深めると同時に、必要に応じて迅速に動くことができる体制を構築するために欠かせないものだと感じています。
全レイヤーにおけるコミュニケーションの強化は、プロダクト開発を支える基盤となります。日常的な小さなやり取りや、定期的な情報共有を重ねることで、チームの結束力を高め、最終的には組織全体の成功へとつながっていくでしょう。