4.4 仲間を増やすことで初速を上げる
PMは「一匹狼」で成果を出す職種ではありません。むしろ、仲間の数だけ推進力が高まる「ネットワーク型職種」です。そのためには、「未来の仕事につながる関係性」を育てることが非常に重要です。
例えば、
- 飲み会や雑談の場に顔を出す
- オフィスに出社してランチを一緒にする
- 雑談チャンネルにコメントを残す
- 定例の冒頭にアイスブレイクを仕込む
これらはすべて「信頼貯金」を積む行為です。こうした「顔を見せること」の積み重ねが、チームとの距離を縮め、協働を円滑にするのです。特にスタートアップでは「誰が何をやるべきか?」が流動的になりがちなので、関係性を築くことで仕事をスムーズに進められるようになります。
4.5 仕組み化に着手し、全体最適を図る
小さな成果の積み重ねと関係構築が進んだら、次に取り組むべきは「仕組み化」です。PMは一時的な便利屋ではなく、持続的にチームがうまく機能する構造を作ることが求められます。
ここで活きてくるのが、プロジェクトマネジメントの知見です。裏を返すと、1人目PMにはプロジェクトマネジメントのスキルは必須です。現在のプロダクト開発では、スクラムチームを含めた開発チームを円滑に推進するスキルはPMのレベル1のスキルと言って良いでしょう。
ここまでのステップで、すでにチームの現状や課題は把握できているはずなので、よりスムーズに機能する仕組みを提案し、実行するフェーズに移ることができるはずです。
- 開発プロセスの最適化(タスク管理、仕様決定フローの改善)
- コミュニケーションの仕組み化(定例ミーティング、ドキュメントの整備)
- 意思決定の透明性を高める(KPIの可視化、優先順位の整理)
この段階に入ると、ようやく「PMがいるからチームは機能し、高いパフォーマンスを保てている」という事業成果へ貢献している実態が可視化されてきます。ここで初めて小さな成果を実感できるでしょう。
また、この仕組み化によって、「1人目PMがその場にいなくても回る状態」 を作れれば、次の本質的な課題に取り組む準備が整うわけです。

4.6 意思決定者としての地位を確立する
信頼と仕組みの積み上げを通じて、ようやく「PMの発言に耳を傾け、共に思考する」「チームがPMの判断に納得感を持てる」フェーズに入ります。ここで初めて、PMは「本質的な意思決定を担う存在」になれます。
PMの強みは、「全体を俯瞰し、目指すべき方向に向けて意思決定できる」ことにあります。これがないとPMとしての存在意義はないに等しいわけです。しかし、その判断をチームが受け入れるかどうかは、その前段の信頼構築にかかっているのです。
まとめ:信頼の積み重ねが、意思決定の正当性を作る
1人目PMがチームと協働し、推進力を得るまでには段階があります。
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理解を深める
- まずはチームを理解することに全力を尽くす
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小さな成果を出す
- 日常業務の中にある不便を見つけ、改善する
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仲間を増やす
- 人間関係を築き、「応援されるPM」になる
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仕組み化する
- 再現性のあるプロセスを構築し、持続可能性を作る
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意思決定の主体になる
- 信頼の上に、判断と方向性を任されるようになる
1人目PMは、最初から「リーダー」として振る舞う暴君としてのたたずまいではなく、信頼される存在として役割を確立していくものです。
次回は、PMがいないと回らない状態から脱し、再現性ある仕組みによって「チームとプロダクトをスケールさせる方法」へと進みます。「個人の力」ではなく「構造の力」で成長を促すフェーズに、1人目PMはどう備えるべきかがテーマです。