大規模組織での共創デザインの実践
トヨタ自動車CX CENTERの村山太一氏は、「FigJam/Figmaを活用した共創デザインの実践」について語りました。トヨタ自動車CX CENTERではグループ会社や協力会社も合わせて、約400名のチームがCXに携わっており、そのうち約300名がFigmaを使用しています。

「従来のPowerPointやExcelでのやりとりと比較して、FigmaとFigJamの導入により、デザイナー、企画メンバー、開発メンバーの距離が大幅に近くなった」と効果を実感している一方で、共創が進むことで「デザイナーが本来のデザインに集中できない状況も生まれている」という新たな課題も浮上しているといいます。
その解決策として、以下の取り組みを実践していることを紹介しました:
- 関係者の巻き込み方の明確化:プロジェクトを横断したデザインPMOを配置
- 共通の目的設定:プロジェクトの目的とアウトプットの締切を明記
- 多様な意見の整理:主観的意見と事実に基づく意見のラベル付け
- ユーザーフィードバックによる意思決定:NPSを主軸とした評価
村山氏は「共創デザインの本質は対話の中で納得を作ること」と述べ、「現実と理想のギャップを乗り越える鍵は、ツールの使い方ではなく、関係性の設計にある」と強調しました。この「関係性の設計」という視点は、プロジェクト推進において非常に重要な示唆を与えてくれました。
Dev Modeを起点としたコミュニケーション設計
株式会社ゆめみからは、リードプロダクトデザイナーの竹田学氏とAndroidグループオーナーの池村和剛氏が登壇。「Dev Modeから始まるデザインとエンジニアリングの融合」について発表しました。

竹田氏は、デザインとエンジニアリングの間でよく発生する「実装先行で修正した結果、リリース済みのUIとデザインファイルが一致しない」といった課題を挙げ、その解決策としてDev Modeを中心としたコミュニケーション設計を提案。アノテーション機能と開発準備完了ステータスを活用し、デザイナーからエンジニアへの情報伝達を効率化する方法をデモで紹介しました。
さらに池村氏からは、Figma MCP(Model Context Protocol)とCursorを組み合わせて、FigmaのデザインデータからAndroidアプリのUIを自動生成するデモが披露され、会場からは大きな拍手が起こりました。
この発表で特に印象的だったのは、「DesignとDevの接点を『融かす』」という表現でした。接点とは本来、2つ以上の要素が接する点を指しますが、その点が「融ける」ことで、もはや2つではなく1つの存在になる。デザインとエンジニアリングの境界のない新しい働き方の可能性を感じました。
なお、このセッションでは非公式のFigmaのMCPサーバーが利用されていましたが、記事公開現在ではFigma公式のDev Mode MCP Serverが公開されています。詳しくはこちらのガイドページをご覧ください。