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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第2回開催です。

ProductZine Day 2024 Winter

ProductZine Day 2024 Winter

成長企業の事例から学ぶプロダクトマネジメント

新しい金融サービスを実現するために、異なるバックグラウンドのメンバー同士が大切にしていること――みんなの銀行

 みんなの銀行は、福岡銀行などの持ち株会社である、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)を母体とし、2021年5月28日にサービス提供開始した国内初のデジタルバンクだ。「みんなに価値あるつながりを。」というミッションのもと、デジタルネイティブのユーザーに向けた銀行サービスや、外部事業者に銀行サービスを提供するBaaS(Banking as a Service)事業を展開する。実店舗はなく、スマートフォンのアプリですべてが完結するという新たな金融サービスをゼロから設計し、新規の口座開設数がサービス提供開始から4ヶ月で13万件を達成した。同社のシステム・デザインのキーマン3人に、プロダクトのコンセプトやステークホルダーとのコミュニケーション、今後の展開について聞いた。

(左から)今回お話しを伺った中村隆俊氏、宮本昌明氏、司城明寛氏  今回お話をお聞きした、

(左から)今回お話しを伺った中村隆俊氏、宮本昌明氏、司城明寛氏

事業コンセプト決定後に集まったプロダクト開発の面々

――みんなの銀行の事業発足の経緯や、プロダクトのコンセプトをお聞かせください。

宮本:みんなの銀行のプロジェクトは、2017年にスタートしました。2019年5月にシステム開発を担当するゼロバンク・デザインファクトリーが設立されたあと、私たちはプロダクト開発を担うために入社しています。入社当時、30名ほどのメンバーはほとんどがFFGの出向者で、システム関連の人は5名ほどしかいませんでした

中村:従来の銀行を作るというイメージはなく、若いデジタルネイティブ世代をターゲットに新たな金融サービスを作ろうというのがコンセプトです。デジタルネイティブ世代は、シンプルかつミニマルなサービスを好みますので、サービス開発もその点に着目しています。

――FFGの方やアクセンチュアの方など、ステークホルダーとはどのようなコミュニケーションをされてきたのでしょうか?

宮本:入社後は、FFGの銀行員と、アクセンチュアのシステム要員・ビジネスコンサルタントとともにプロジェクトを進めてきました。2020年12月の銀行業免許取得に向けて、金融庁にも相談・報告を行なっていきました。毎月開発状況や事業計画、組織体制、サービス内容、品質、課題などあらゆる観点で意見交換をしながら進めていったのです。

宮本昌明氏

みんなの銀行 執行役員CIO 兼 ゼロバンク・デザインファクトリー 取締役CIO

日系コンサルファームや大手ECサイトのデータベースエンジニア、ネット銀行の基盤システム構築などに従事し、2019年9月入社。みんなの銀行のシステム責任者。

中村:社内では、大きくデザインチームと、金融業務を設計するチーム、そしてビジネスのチームの3つが一緒に動きながらサービスを考えてきました。銀行として押さえておかないといけない要件を理解・把握しつつ、ユーザーニーズに合わせたサービスを考え、構築していくといったスタイルがベースになっています。その中で毎週1回、全員が参加する会議があり、業務要件の設計やデザインなどの提案を毎週のように議論を重ねてきました。

 基本的な銀行機能がコアにあり、それに付随するサービスを企画し、その優先度は開発工数や期間を考慮しながら判断していきました。

司城:サービス提供開始までは、3つのMVP(Minimum Viable Product)に分けて開発していきました。まずは預金ができる機能を備えたMVP1、そして2021年1月にリリースしたクローズドベータのためのMVP2では、MVP1の機能に出金もできるようになりました。そして最後は5月にサービス提供開始した際と同じ機能を提供するMVP3です。デビットカードや、貯蓄預金の「Box」、利用履歴の「Record」などを実装してローンチを迎えました。

目的に応じ、さまざまなコミュニケーション手段を利用

MVPで盛り込む内容や評価などについて、どのようなコミュニケーションをされていましたか?

司城:サービス提供開始までに欲しいサービスを決めて、そこから逆算して計画していきました。

宮本:私たち三人が入社した時点で、勘定系パッケージを作るというMVP1の内容は決まっていました。MVP2はそれに手足をつける形で、MVP3はマネタイズという流れですね。FFGとアクセンチュアのマネジメント層も入ったステアリングコミッティ(プロジェクトの運営委員会)でディスカッションして決めていきました。

――皆さんはどのようにコミュニケーションをなされているのでしょうか? 会議や利用ツール、コミュニケーションの工夫についてお教えください。

司城:コミュニケーションのツールはSlack、LINE WORKS、Microsoft Teamsの3つがメインです。コミュニケーションの工夫というと、極力会議自体は短くし、数を減らすというのは意識しています。議論することはありますが、拘束時間が長くなることは極力避けています。アクセンチュアを含めて、Slackで事前に議論したり、決定も極力Slack上で行なったりしています。

宮本:システムについて、ほとんどのことはSlackで片がつきます。デザインについては、ビデオ会議もしますが、オンラインでは表示の遅延などあるため、アプリの動作や使い勝手を評価する際はみんなで集まって対面で認識合わせをしています。

――サービス開始まで、順調に開発は進んでいったのでしょうか? 困難に直面したことはありますか?

司城:当初、提供したいサービスの内容と開発量との間には大きな乖離がありました。現在ローンチしているサービスや機能は、当初のやりたいことの3割ほどしかできていないと思います(笑)。勘定系など、システム側に銀行として必要な機能に対する知見を持つ者が少なかったことなどが原因です。しかし、サービス提供開始の期限(お尻)は決めていたので涙をのんで期限内で実装できるものを取捨選択しました。

中村:開発工数が足りないとなったとき、当然何かを削らなければなりません。その洗い出しから始まって取捨選択し、それがデザインにも影響するので見せ方を調整する……というやりとりの連続です。Slackや毎週のミーティングだけでなく、ときには臨時のミーティングも開いて実現可能な範囲を皆で話し合っていきました。

中村隆俊氏

みんなの銀行 デザイングループ グループリーダー

プロダクトデザイナーとしてスタートアップを中心にサービス開発やWebアプリケーション設計に従事。2019年8月に入社。デザインの責任者としてデザイン統括と組織構築を担当。

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プロ同士が尊重しあって、新たな価値を創造していく

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://productzine.jp/article/detail/678 2021/10/07 14:00

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