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ProductZine Dayの第2回開催です。

ProductZine Day 2024 Winter

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経営目線でみたプロダクトマネジメントの重要性と、その役割の捉え方

「Retty」におけるプロダクトマネージャーの定義と評価、学びを深化させる組織体制

経営目線でみたプロダクトマネジメントの重要性と、その役割の捉え方 第1回(Retty/後編)

 社会の状況が変化する中で、プロダクトマネージャー(PM)の役割も大きく変わりつつある。PMの重要性についての認知は広がっているが、各社によってPMの役割は異なる。Retty株式会社では、2020年に「大規模スクラム(LeSS)」を開発チームに導入したのを機に、それまでなかったPMのロールを導入した。プロダクト部門執行役員 VPoPを務める野口大貴氏と、エンジニアリング部門執行役員 VPoEを務める小迫明弘氏、エンジニアリング部門 シニアマネージャーを務める常松祐一氏の3名に、経営陣観点でのPMの重要性や、PMのロールを導入するにあたって注力したことについて聞いた。

Retty株式会社 プロダクト部門執行役員 VPoP 野口大貴氏(左)/エンジニアリング部門執行役員 VPoE 小迫明弘氏(中)/エンジニアリング部門 シニアマネージャー 常松祐一氏(右)
Retty株式会社 プロダクト部門執行役員 VPoP 野口大貴氏(左)/エンジニアリング部門執行役員 VPoE 小迫明弘氏(中)/エンジニアリング部門 シニアマネージャー 常松祐一氏(右)

プロダクトマネージャーの理想を言語化し、必要スキルを定義した上でスキル評価を作った

 信頼できる友人や好みの合う人の口コミから自分にぴったりのお店を探すことのできる、実名性のグルメサービス「Retty」。BtoBの商品機能とBtoCのメディアを統括しており、Webとアプリでグルメサービスを提供している。

 Rettyの開発チームは2020年に「大規模スクラム(LeSS)」を導入し、プロダクト部門とエンジニアリング部門に分かれている。プロダクト部門には現在、プロダクトマネージャー(以下、PM)とデザイナーが所属しているが、もともと「プロダクトマネージャー」という職種はなく、「プランナー」が開発企画・ディレクションを担当していた。

 当時のプランナーの役割はスケジュールや数値目標管理が中心で、「How」と「When」に終始していた。グロースのスピードと高いKPI達成が求められる中、「Why」を考えられる仕組みと人が不足していたという。

 「大規模スクラムの導入を機に開発チームが自走したため、プランナーによるスケジュール管理が不要になり、プランナーはよりWhyを求められるようになりました。プランナーの役割見直しの機運が高まり、PMというロールを導入することになったのです。プランナーが全員PMになるというわけではなく、経営層に近い高い目線で意思決定・事業推進ができる人物をPMとしたいと考えました。そこで、PMは何をすべきなのかという理想を言語化するため、PMの必要スキルを定義しました」(野口氏)

 野口氏は、PMロール導入後にPMの役割を担うであろうミドル~シニアメンバー5名とともに、「新たな『食体験』を創り上げ、人生をもっとHappyに」というRettyのビジョンを実現するためにどんなスキルを持ったPMが必要かを議論した。そこで言語化された理想のPMが、「Rettyの未来に向かって、突破できる人」だ。食というドメインに精通していてRettyのビジョンを自分事化できる、Rettyの未来を描いた上で現状との差分を埋めることのできるPMが重要な人だというコンセンサスを得て、それをもとにスキル評価を作っていった(参考:pmconf2021登壇スライド)。

 「こういったスキル評価がないとそれぞれの強みや弱みが分からないし、エンジニアとのコラボレーションもしにくくなります。これは社内の若手のPM育成にも使っています。また、今注力しているプロダクトディスカバリーのスキルとして、『ディスカバリー力(りょく)』を明示しています」(野口氏)

 ディスカバリー力とは、「問いを立てる力」「検証設計力」「検証実行力」だ。さらにそれぞれの力とは何ができる状態なのかを項目立てて言語化している。

 「ただBigQueryが書けるとかNPSで分析できるだけではなく、立てる問いの質をよくすることが大事です。今はプロダクトディスカバリーを強化している2.0フェーズなので、次のフェーズに行くためにも、スキルをきちんと言語化して伸ばしていこうという議論をしています」(野口氏)

 エンジニアリング部門では、組織的な問題を改善しながら評価制度の改善も進めた。Rettyのエンジニアはどんな力を持っているべきかを定めていく中で、エンジニアはHowとWhenに、PMはWhyとWhatに責務を持つことが必要だということを改めて定義した。

 「大規模スクラムを導入する前は、プランナーがあっちへ行って話を聞いてこっちに伝えて、という伝書バトのようなことをやっていたのです。それはエンジニアだけでやるから、プランナーやPMはWhyやWhatに向き合ってほしいと伝えました」(小迫氏)

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ディスカバリーとデリバリーを兼務して学びを流通させ、より良いものを素早く提供

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

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