はじめに
生成AIをとりいれたプロダクトやサービスの誕生が続いています。しかし、ユーザーの過度な期待や、AIの技術駆動でのプロダクト開発のエゴが、理解しにくい機能やUX(ユーザーエクスペリエンス)の乖離を生むこともあります。このギャップを埋めるための鍵は、「期待値のデザイン」にあります。生成AIを活用した製品のUXデザインの第一歩として、この期待値のデザインを正しく行うことが不可欠です。
期待値のデザインとは
期待値のデザインは、プロダクトやサービスの初めての使用から継続的な使用に至るまでの、ユーザーの期待と実際の体験の間に生じるギャップを埋めるプロセスです。
期待値のデザインを実現するためには、プロダクトやサービスの「価値」を明確に伝え、ユーザーがプロダクトやサービスを理解しやすい「メンタルモデル」を考慮し、そのプロダクトが搭載しているAIの「能力の限界」をはっきりさせることが重要です。
AI技術の有無はユーザー提供価値と直接関係がない
AI技術を活用したプロダクトを開発する際、ついAIが技術的に「何ができるか」を伝えたくなる傾向があります。しかし、実際にはその裏側の「価値」を伝えることが、ユーザーにとっての期待値を適切に設定する上で最も基本的な要素となります。「AI技術を採用した気象予報アプリケーション」を例として挙げてみます。
- NG:「当社のAI技術を採用した気象予報アプリケーションは、一般的な気象データと個々の利用者の行動パターンを複雑なアルゴリズムにより分析し、パーソナライズされた天候予報を提供します」
- OK:「あなたの生活とニーズに適応し、予期せぬ天候による影響を最小限に抑えるためのパーソナライズされた天候予報を提供します。これにより、あなたは予定を効果的に計画し、天候によるトラブルから自由になります」
Value Discoveryのランディングページのメインキャッチ(アイデアから価値を見つけよう)では、ユーザーが自身のアイデアから価値を見つける手助けをするという価値を端的に伝えています。
- NG:「生成AI技術を使用して、あなたのアイデアから新たな仮説を生成します」
このように、AIが「どのように」働くのか「何ができるか」のではなく、AIがユーザーに「何を提供できるか」を意識してユーザーコミュニケーションをしていくことが最初の一歩といえます。