はじめに
多くの会社にとって新しい年度が始まり、プロダクトに関わるプロダクトマネージャーの方や、ディレクション・企画者の方は、新しい企画検討などが進む時期かと思います。プロダクトのミッションやKPIの達成のために、企画を仕立てる上で、プロダクトディスカバリーは非常に重要です。
ユーザーの課題を深堀りし、解決すべき課題の特定と解決策の仮説を立てる際の手がかりには、データ分析の「量の視点」や、新しい切り口や課題設定のためのアプローチとして兆しをつかむような「定性的な視点」が必要です。昨今では、OpenAI社のChatGPTをはじめ、AI技術の進展によって多量データの分析は効率化していますが、今回はまだまだ「AIに代替できない」定性調査におけるコツを、基本的かつ実践的な知見としてお話しできればと思います。
「AI eats software」の時代、アスエネとしても脱炭素・ESG経営にまつわる多くの「不」を解消すべくプロダクト推進を行う際、プロダクトマネージャーやディレクターの介在価値として、顧客ヒアリングに向き合っています。今回は企画や新機能を担う担当者が、定性調査を行う際のコツや観点を記載します。
定性調査と原則
定性調査と言えばどのようなものでしょうか? 「定性調査」と一口に言ってもその種類や目的はさまざまです。種類では、サービスに寄せられる「コメント閲覧」や、一定ユーザーを集めた「グループインタビュー」、「電話インタビュー」や「ダイアリースタディ」といった記録ベースから、「デプスインタビュー」「行動観察」「エスノグラフィー」など、多くの手法があります。今記載した手法は、獲得情報量が少ないものから、多くなるものの順に記載していますが、必ずしも、それらをすべて行わなければならないというものではありません。
「ユーザーの実態を明らかにしたい」「プロダクトに価値があるか確かめたい」「どちらのUIがいいか検証したい」など目的にあった調査手法が求められます。
今回の記事では、定性調査を少し広い定義で捉えておきたいと思います。定性調査とは、「対象者から発せられる生の言葉や行動、あるいは観察者が見たままの状態や印象など、ことばや文章あるいは写真といった数値化できないデータの収集を目的とした調査」です(日本リサーチセンターより引用)。
読者のみなさんは、普段の定性調査で何に気をつけていますか? 私は気をつけるべき原則として以下の4点を考えています。
信頼性を高める(守り)
- (どうやって?)バイアスをかけずに聞く
- (なにを?)意見ではなく、事実を聞く
有意性を高める(攻め)
- (どうやって?)言語化の方法を考える
- (なにを?)言葉以外にも注目する
次の章から、その方法を説明します。