ユーザー自身が課題解決を実感できる機能開発を目指して
──Sansan Labsで公開されている機能例を教えていただけますか。
直近では2024年7月に公開した「AI人物プロフィール」があります。これは企業名と氏名を入力するだけで、AIがWeb上の情報を収集し、商談相手の経歴や仕事内容を要約する機能です。営業の方は商談に行く前に、商談相手の情報を検索して収集すると思うのですが、その作業時間を短縮したいという社内のインサイドセールスや営業の担当者、そして多くのユーザーさんの要望から生まれました。
──どんなところを工夫されましたか。
ヒアリングするなかで「名字だけしか分からないことがある」という声があったので、名字だけで検索しても候補者をサジェストするようにしました。あとは、生成AIの処理にはどうしても時間がかかるので、当初は「表示までに2~3分かかります」と記載してしのごうと思っていたのですが、社内で検証するなかで「待ち時間が長すぎて、そんなに待てない」と言われてしまったんですね。そこで、生成AIに渡すタスクを分割して、処理が終わったものから少しずつ情報が表示されるようにすることで、待ち時間の体感を短くしました。
──実際の開発も西田さんのチーム内で行われているのですか。
そうです。Sansan Labsでは、私に加え、アプリを開発する機械学習エンジニアやデータサイエンティストのメンバーが1名とデザイナー1~2名の体制で機能開発することが多いです。ソフトウェアエンジニアはいません。すべてPythonで機能開発できるよう、2022年に基盤を整えたんです。デザインに関してもFigmaでコンポーネント化してあるので、たいていリリースまでに1か月ほどしかかかりません。
──なるほど。Sansan Labsでは他にも「AI企業検索」や「議事録メーカー」など生成AIを活用した機能を実装されていますが、生成AIを活用したプロダクト開発に関して、難しさを感じることはありませんか。
生成AIを活用したプロダクト開発では、アウトプットに対する評価がすごく難しいと感じています。生成AIの回答には、どうしても不確実性が伴いますよね。ハルシネーションのようなリスクをどこまで許容するのかという問題もあります。社内検証していると、次から次へと「うまくいかない」というフィードバックが来るのですが、それらすべてに対応していると、いつまで経ってもリリースできないうえに、1つ対応したことによってまた別の問題が出てくることもある。そのため、私のチームでは評価データセットをあらかじめ用意しておき、「この基準をクリアしたら、もうリリースしよう」と最終判断できるようにしています。
──最後に、今後チャレンジしていきたいことをお聞かせください。
Sansanには「Lead the customer」というバリューがあります。今、私はプロダクトマネジメントを学びながら、ユーザーのビジネス課題を解決する役割を担っていますが、本当にそこまでたどり着くには、ユーザーがちゃんと機能を使いこなせるようになるところまで手を広げる必要があると感じています。
そこで最近では、Sansan LabsのメンバーとSansanのユーザーコミュニティのメンバーで協力して、「Sansan User Meetup ~Sansan×AI活用について語る会~」を定期開催するようになりました。このコミュニティの中で、ユーザーが課題解決できたと感じられる体験をつくっていきたい。それを私の次のチャレンジにしたいと考えています。