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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第3回。オフラインとしては初開催です。

ProductZine Day 2024 Summer

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プロダクト開発の先進事例に学ぶ、キーパーソンインタビュー

SmartHR松栄氏が考える、タレントマネジメントと「プロダクトマネージャーの育成」で大事にしていること


プロダクトマネージャーの育成には、まず「聞くべきことを聞け」

──プロダクトマネージャーの育成について、教えてください。

 まず前提として、SmartHRでは一人ひとりに裁量権があり、垂直分業のようなことはしていないので、誰かに言われたものをただつくっているPMは存在していません。逆に言えば、SmartHRのPMには高い自律性が求められますし、自分が担当しているプロダクトに対して誰よりも高い解像度を持っている必要があります。たとえ上司であっても、UIの細部まで指示を出すということはなく、各PMのほうが自分よりもプロダクトをよく理解しているという前提で壁打ち相手となり、足りない視点があればフィードバックするようなスタンスです。

 そのうえで、育成において最も大事にしているのは、目標設定です。各自の等級に対するストレッチ度合いが、高すぎると諦めてしまうし、低すぎると成長率が悪くなるので、適切な加減を意識しています。加えて、目の前のタスクをこなせば達成できてしまうような「Do目標」ではなく、「お客様にこういう変化を遂げてもらう」といった「Be目標」を設定するように推奨しています。そうすれば、目標に到達するまでの手段や進め方は、動きながらいくらでも変えられますし、試行錯誤しながら仮説検証を重ねていけますから。

 ただし、Be目標はDo目標よりも、評価が難しくなるのは事実です。

 そのためSmartHRでは、まずは自己評価をしてもらうとき「自分の成果は、自分で証明してください」というスタンスをとっています。自己認識がどうなっているか、認知が歪んでいないかを見ています。視野が狭かったり視点が低いときは、自己評価に対して、「あなたはこういう自己認識をしていますが、このような観点も必要ではないですか」とか「あなたはこのやり方がベストだったとおっしゃっていましたが、もっとこうすれば、より大きな結果を出せたのでありませんか」といったフィードバックをすることで、自分で気づいて、次は今よりもっと高いパフォーマンスを発揮してもらえるようにサポートする。それこそが成長だと思うので、いかに成長をもたらす目標を設定できるのか、マネージャーの手腕にかかっていますね。

──「自分の成果を証明する」とは、具体的にどうするのでしょうか。

 自己評価の際に、次のような項目を記入してもらいます。(目標を達成するために)何が必要だと考えたか。その仮説の正誤を検証するために、具体的に何をやったのか。その過程で学んだことは何か。どこが良くて、どこが悪かったのかなどを言語化してもらいます。

──目標は必ずしも定量でなくても良いのですか。

 そうですね。定量であれば進捗を追いやすくなるので定量目標を推奨していますが、プロダクトによってはどうしても定性目標しか立てられないものもあります。

──目標設定を重視した育成をするなかで得られた気づきがあれば、教えてください。

 もともとSmartHRは育成が得意な会社ではありませんでした。そんなときに私が繰り返し伝えていたのは、「まずは“聞くべきこと”をちゃんと聞きましょう」ということです。聞くべきこととは、「あなたの強み/弱みは何ですか?」「やりたいこと/やりたくないことは何ですか?」「1年後/5年後どうなりたくて、そのためにどこを伸ばしたいと考えていますか?」「過去にあなたが成長できたと感じたのは、どんなときでしたか?」など、本人の人間性や価値観を把握して、本人が最も伸びるコミュニケーションを取るための質問です。「最近、困ったことはないですか?」と質問をしても、その時点のことがわかるだけで、長期的にその人をどうやって伸ばせばいいかが分かりません。

 また、プロダクトマネージャーには、プレイヤー希望の人とマネージャー希望の人がいると思いますが、コミュニケーション次第で本人の希望が変わることもあります。例えば、以前、「自分はプレイヤー希望だ」と言っているPMがいました。スキルセット的にも一部が尖っているような人です。しかし、彼に「将来、どうなりたいですか? やりたいことは?」と聞いたら、「1つの事業を引っ張っていけるPMになりたい」と言ったんです。「それなら部下を持つことになるのだから、マネジメント能力が必要だよね」というと納得してくださって、「自分のやりたいことを達成するための手段として、マネジメントを学びたいです」と彼は言いました。

 逆に、マネージャー希望でも、マネジメントの何がやりたいのかによって、コミュニケーションの取り方が変わってくるんですよね。プロダクトを触るよりも組織のことを考えるほうが好きなタイプなのか、あるいは、大きなことがしたくてメンバーを引っ張りたいタイプなのか。前者であればマネージャーよりもOpsやCPO室のほうが向いているかもしれませんし。

 逆に、マネージャー希望でも、マネジメントの何がやりたいのかによって、コミュニケーションの取り方が変わってきます。プロダクトを触るよりも組織のことを考えるほうが好きなタイプなのか、あるいは、大きなことがしたくてメンバーを引っ張りたいタイプなのか。前者であればマネージャーよりもOpsやCPO室のほうが向いている可能性もあります。

 どんなキャリアパスのルートがあるのか、本人には分からないことも多いですよね。2つの中からどちらかを選ばなければいけないという類のものでもない。「提示すべきものを提示できるようにするために、聞くべきことを聞く」というコミュニケーションの重要性は、強く感じています。

──ありがとうございました。

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この記事の著者

野本 纏花(ノモト マドカ)

 フリーライター。IT系企業のマーケティング担当を経て2010年8月からMarkeZine(翔泳社)にてライター業を開始。2011年1月からWriting&Marketing Company 518Lab(コトバラボ)として独立。共著に『ひとつ上のFacebookマネジメント術~情報収集・人脈づくり...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。 1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテック...

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