SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第3回。オフラインとしては初開催です。

ProductZine Day 2024 Summer

ProductZine Day 2024 Summer

プロダクト開発の先進事例に学ぶ、キーパーソンインタビュー

SmartHR松栄氏が考える、タレントマネジメントと「プロダクトマネージャーの育成」で大事にしていること


SmartHRのプロダクトマネージャーの仕事とは

──松栄さんの考えるタレントマネジメントの定義と、「SmartHRタレントマネジメント」のプロダクトの価値を教えてください。

 タレントマネジメントとは、「従業員に時間やお金を投資して、企業の業績を伸ばすこと」であり、企業の成長を支える手段の一つであると考えています。具体的な投資の形としては、従業員のエンゲージメントや成長角度をあげるために1on1を実施したり、適切な評価をするために人事制度を設けたり、チームビルディングや育成のために外部講師を招いてワークショップを開いたりするなど、さまざまな施策が考えられます。が、それらを“なんとなく”やるのではなく、一つひとつの取り組みに目的を持ち、ロジカルに積み上げていくことが大切です。

 例えば、1・3・5年後にプロダクトを何個増やそうと決めたら、何人のプロダクトマネージャーが必要だという人員計画ができます。そうすると、1年後にチーフが2人必要になるのに対し、チーフをできる人が今1人しかいないといった差分が見えてくるので、足りない1人を育成するのか、採用するのかを検討することになります。仮に育成するのであれば、従業員の中から候補者を挙げて、現状不足している要素を補強していかなければなりません。

 このように事業戦略に合わせて施策を立案・実行することがタレントマネジメントであり、そのために必要な従業員個々人の情報を活用できる状態にしておくことが、タレントマネジメントツールというプロダクトの価値となります。

SmartHRタレントマネジメントで配置シミュレーションや人員計画を行う際のイメージ
SmartHRタレントマネジメントで配置シミュレーションや人員計画を行う際のイメージ

──SmartHRのプロダクトマネジメント組織の体制について教えてください。

 SmartHRは職能別組織を採用しているので、CPO(チーフプロダクトオフィサー)の下にPMのダイレクターが3名(労務・タレントマネジメント・プロダクト基盤、各1名)、さらにその下にマネージャー、チーフ、メンバーがいます。ドメインエキスパートも含めると、プロダクトマネジメント組織全体で27名が所属しています。

SmartHRのプロダクトマネジメント組織
SmartHRのプロダクトマネジメント組織

──PMのダイレクターには、どのような裁量権があるのですか。

 とても裁量権があります。プロダクト数が多いですし、深いドメイン知識も必要とされます。「このプロダクトにこんな新機能をつくりたい」というときに、CPOの承認を得なければ機能開発できないということはありません。壁打ちはいつでもしてくれて良いフィードバックはもらえますが、新規プロダクトを作るときや大きな人事異動が必要な場合以外はほとんどダイレクターに委ねられていると思います。だから速いスピードで動けるんです。

──27名で約20プロダクトあるということは、だいたい1人で1プロダクトを担当しているのですか?

 タレントマネジメント領域では、そうですね。1人のPMが1プロダクトを担当していて、1つの開発チームを持っているようなイメージです。

──プロダクトマネージャーの職務範囲は企業によってさまざまですが、SmartHRの場合を教えてください。

 先ほどお伝えしたプロダクトビジョンの策定やロードマップの作成以外でいうと、OKRの設定などです。顧客理解に必要な商談の同席やユーザーヒアリングなどは、PMMと一緒にしています。開発については、SmartHRではとても忠実にスクラム開発を実践していて、開発チームが自律的に動いているので、PMが管理するようなことはありません。一方、スクラムのPOはPMが担当しています。

 このように分業が進んでいるので、「SmartHRのプロダクトマネージャーって、担当領域が狭いんですか?」と聞かれることもあるのですが、それは大きな誤解です。何でも屋さんになってしまうと、すべてが中途半端になってしまいます。価値の高い良いプロダクトをつくるためには、プロダクトマネージャーが本当にやるべき本質的な仕事に時間を割けること、集中することが重要だと考えています

──UXリサーチも専門の方がいるのですか?

 UXライターはいますが、UXリサーチャーはいません。「PMが自ら一次情報を取りに行くことで、高い顧客解像度を持ちながら、何をつくるかを決めるべきである」という価値観があるからです。リサーチ技術はPMが個々で磨いています。

──教科書に載っているような王道のプロダクトマネージャーなんですね。

 そうですね。SmartHRはプロダクトマネージャーの本質的な仕事を極められる、理想的な環境だと思います。

次のページ
プロダクトマネージャーの育成には、まず「聞くべきことを聞け」

この記事は参考になりましたか?

プロダクト開発の先進事例に学ぶ、キーパーソンインタビュー連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

野本 纏花(ノモト マドカ)

 フリーライター。IT系企業のマーケティング担当を経て2010年8月からMarkeZine(翔泳社)にてライター業を開始。2011年1月からWriting&Marketing Company 518Lab(コトバラボ)として独立。共著に『ひとつ上のFacebookマネジメント術~情報収集・人脈づくり...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。 1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテック...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

ProductZine(プロダクトジン)
https://productzine.jp/article/detail/2986 2024/11/27 12:26

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング