領域によって大きく異なるプロダクトマネージャーの仕事
──まずは松栄さんの経歴や現在の役割について、教えていただけますか。
私は紙のデザイナーとしてキャリアをスタートさせた後、10年ほどマーケターとしても活動していました。プロダクトマネージャーを始めたのは、20代後半くらいからです。当時はディレクターと呼ばれていたのですが、転職ドメインの既存プロダクトをグロースさせたり、ECの新規事業を立ち上げたりしてきました。
しかし、その頃になるとプロダクトマネージャーとしての成長に限界を感じるようになり、XTech(クロステック)グループのStartup Studioで、友人とともに起業することに。執行役員として、幅広く経営に携わってみたものの、やはり自分はプロダクトマネジメントが最もパフォーマンスを発揮できると気づき、シニアプロダクトマネージャーとしてSTORES株式会社に入社。そして2022年12月にSmartHRに来ました。
SmartHRでは、いきなり役職を持った状態では入社していません。一メンバーとして現場で信頼を積み上げてから、チーフ、マネージャー、ダイレクター、VP、CxOと役職が上がっていく方が一般的です。なので私も入社時は一メンバーからスタートして、現在はタレントマネジメント領域のダイレクターとして、タレントマネジメント領域を管掌しています。
松栄友希(まつばえ・ゆき)氏
デザイナー、マーケターなど多様な職種を経てProduct Managerに。「転職ドラフト」やECなど様々なプロダクトの立ち上げ、グロースを担当。XTechグループで創業期からの会社立ち上げも経験。STORES株式会社を経て、2022年12月に株式会社SmartHR入社、2024年1月よりプロダクトマネジメント統括本部 タレントマネジメントプロダクト本部 本部長。日本CPO協会常任理事。
──プロダクトマネジメントの観点で、労務領域とタレントマネジメント領域では、どのような違いがあるのでしょうか。
ひとことで言えば、「ゴールが見えやすいか/見えにくいか」の違いです。
労務領域では、業界・業種や企業規模を問わず、やること(労務手続き)はだいたい同じなので、達成すべき明確なゴールが見えやすいです。その代わりに、複雑に絡み合う業務フローをていねいに解明して、多くの方がスムーズに業務を進められる状態を追求する難しさがあります。
他方、タレントマネジメントは、100社あれば100様の考え方があるような領域であり、企業によってタレントマネジメントの定義が異なるため、絶対的なゴールがそもそもありません。そのため、タレントマネジメント領域では、「誰に向けて、何をつくるか」といった戦略が重要になりますし、タレントマネジメントに関する深いドメイン知識や思想が求められます。
──なるほど。SmartHRの組織として、労務とタレントマネジメント以外に、どんな領域に分かれているのですか。
プロダクト基盤と新規事業開発のチームがあります。プロダクト基盤には私のようなダイレクター職のプロダクトマネージャーが配置されています。
──ダイレクターとは、事業部長のポジションに近いのでしょうか。
SmartHRには「PM(プロダクトマネージャー)」と「PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)」がいて、P/Lの管理や売上予測を立てるような事業戦略の仕事はPMMが担当しています。他方、プロダクトビジョンを策定するとか開発のロードマップを引くといったプロダクト戦略策定に関わるところはPMが担っているので、PMとPMMのダイレクターが二人三脚で事業部長の役割を果たしているようなイメージです。