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ProductZine Dayの第3回。オフラインとしては初開催です。

ProductZine Day 2024 Summer

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特集記事(AD)

「Chatwork」10→100グロースを支えるデータドリブンなプロダクトマネジメントとは?

 ビジネスチャットツールの草分け的存在である「Chatwork」。その開発運営を手がける株式会社kubell(クベル)は2024年7月にChatwork株式会社から社名を変更し、コーポレートミッション「働くをもっと楽しく、創造的に」の実現に向け、ビジネスプロセスの効率化支援事業へ事業領域を拡大することを発表した。そのような中で2023年に入社したプロダクトマネージャーの新井秀信氏、データアナリストの田中賢太氏の両名は、早くも同社のコミュニケーションプラットフォーム戦略のプロダクトグロースを担う存在として活躍しているという。本稿では、その活躍の背景や、将来性について詳しく伺った。

ビジネスチャット「Chatwork」の価値創出を担う3つの専門組織

 株式会社kubellは、「Chatwork」を2011年にリリースし、ビジネスチャットのパイオニアとして存在感を発揮してきた。とりわけスモールビジネスから中小企業では圧倒的なシェアを誇り、日本の商習慣に合った国産ツールとしての使いやすさに定評がある。コロナ期を経て、日本企業の新しい働き方が模索される中、ビジネスプロセスそのものを提供するクラウドサービス「BPaaS(Business Process as a Service)」を事業化している。今後は「Chatwork」をコミュニケーションのインフラから、BPaaSとの連携を深めて「働く」を総合的に支援するプラットフォームへと進化させていこうとしている。

 そのプラットフォームとしての価値創出を担うのが、Chatwork事業のプロダクトマネジメント部に属する「グロースチーム」「コアチーム」「プロダクトオペレーションチーム」の3組織だ。「グロースチーム」はKPIドリブンでプロダクトの価値成長を促進し、ユーザー同士のコミュニケーションを活性化して継続率を高めるために必要な機能の開発・改善を集中的に行う。また、「コアチーム」は決済、認証などの基盤機能に加えて、ユーザーの有料化転換を促進していく戦略を担っている。

 そして、あらゆる分析の基盤となる環境整備を担い、両チームと密に連携してデータ面や分析をバックアップするのが「プロダクトオペレーションチーム」というわけだ。

Chatwork事業のプロダクトマネジメント部に属する3つのチーム
Chatwork事業のプロダクトマネジメント部に属する3つのチーム

定量/定性データを武器に社内を束ね、事業成長を導く「グロースチーム」

 グロースチームに所属する新井氏は、プロダクトマネージャーとしてプロダクトのグロースをミッションとして担う。ユーザーの行動や動向についてデータ分析を行い、継続率の向上を目的とした施策へとつなげることが重要な役割だ。前職の株式会社リクルートでは、「保険チャンネル」や「ホットペッパービューティー」などのプロダクトを担当。最も長く関わった「ホットペッパーグルメ」では、クライアントの動向や継続率、単価などのデータから仮説を立て、活用率向上を目的とした施策の企画や、法人営業の事業戦略立案などを経験してきた。

新井秀信氏

株式会社kubell プロダクトエクスペリエンスユニット プロダクトマネジメント部 プロダクトマネージャー

 「通常、どのようなプロダクトもグロースするには、よりたくさんのユーザーに使っていただく必要があります。そうなると、やはり重要な指標として『継続率』が挙がってきます。継続率の高いユーザーほど、プロダクトへの満足度が高いと考えられるからです。そこで、継続するユーザーとしないユーザーの比較を行うことで、継続するユーザーの特徴的な行動や利用頻度の高い機能を見出し、その行動や機能利用を促すことで、ユーザーの継続率を向上させる施策に落とし込んでいます。例えば、継続率の高いユーザーについて『メッセージを送る。リアクションする』という行動特性が見出せた場合、それらを促進する施策を考え、社内での実施につなげます」(新井氏)

 2024年7月に社名を変更し、「Chatwork」のみの単一事業からBPaaSなどを加えた複数事業へと進化している同社だが、「Chatwork」で抱える中小企業のユーザー基盤を拡大していくことはBPaaS事業や新規事業の前提と位置づけられており、そのプラットフォームとしてのさらなる成長を牽引する「グロースチーム」は重要な存在だ。

kubellの事業戦略の全体像(会社紹介資料より一部改変して抜粋)
kubellの事業戦略の全体像(会社紹介資料より一部改変して抜粋)

 「大枠としてKPIドリブンなグロースの取り組みにおいては、定量的なデータの分析から、大きな流れの中でプロダクトをグロースさせる施策を見出すことが求められます。とはいえ、VoC(Voice of Customer)など、定性的な情報も重視しています。定量的なデータ分析からユーザーの傾向を見出して、その理由をユーザーの声から探ったり、逆に使用頻度の高いユーザーに定性的なインタビューを行い、定量データと照らし合わせて可視化・抽象化を行ったり。比重や順番は違っても、定性・定量データのいずれも重要であることには違いありません」(新井氏)

 例えば、定性的なインタビューからスタートした顧客解像度を高める取り組みでは、定量的な分析を行ったうえで、グロースチームがターゲットとする最優良顧客像を表す要素の一つとして、士業やWeb制作会社のような、他の企業と協働して成果を上げる『プロジェクト型ビジネス』というキーワードを抽出した。こうした分析において新井氏は「定性・定量データを行き来しながらも、最終的には定量を定性にどう落とすかが肝心」と語る。確かに数値から何らかの傾向が見えても、定量的に表現していては社内のコンセンサスは得られにくい。定性化して言語化することで、共通のイメージを持ちやすく、施策の方向性も明らかになるというわけだ。

 「それができれば、社内において『何のためにやるのか』という目的の理解や意識共有が行え、一人ひとりのモチベーションが上がって社内がまとまり、最終的にビジネス成果につながると信じています。当然ながら、それを実現する手法や施策については議論が生じますが、方向性はブレることがないため、仕事を建設的に進めることができ、プロダクトのグロースに大きく貢献すると考えています」(新井氏)

成長のコアとなるデータ分析環境を刷新し、チームを下支えする「プロダクトオペレーションチーム」

 一方、プロダクトオペレーションチームに所属する田中氏は、データアナリストとして「グロースチーム」「コアチーム」の各チームに対するデータ分析支援を行う。新井氏とタッグを組むことも多く、提示された課題に対し、解明・解決に向けた有効なデータを提供し、時に分析手法などについてアドバイスを実施する。前職のLINE株式会社(現 LINEヤフー株式会社)ではソーシャルゲームの利用率や満足度を高めることを目的とするユーザー分析を担当。HR組織に異動後は「HR Tech」領域のプロジェクトでHR関係データの分析基盤の構築および分析・可視化に関わった。

田中賢太氏

株式会社kubell プロダクトエクスペリエンスユニット プロダクトマネジメント部 データアナリスト

 「私はプロダクトの特定の領域を担当するのではなく、グロースチームとコアチームからの要請に応じて、必要とされるデータや分析領域の支援を行っています。例えば、グロースチームによるインタビューの取り組みでは、プロダクト活用度をもとにヘビーユーザーを分類し、対象となるユーザーを抽出するというアクション支援を実施しました。また、コアチームに対しては、課金導線の改善や、新機能である自分宛て一覧の訴求効果について事前分析を行っています。プロダクトマネージャーがプロダクトの大戦略や方向性を議論する場では、ディスカッションの土台となる分析・データによるファクトを提供しています」(田中氏)

 さらに、それぞれのチームで自立的にデータ分析ができるよう、データ分析環境を整備することも、田中氏をはじめとする「プロダクトオペレーションチーム」の重要な役割だ。

 2023年頃までは、10年分のデータが蓄積されていたものの環境が古く、大量のデータを使っての分析が難しい状況にあったという。ABテストのような分析を行って施策に活かすことはあっても、大きな枠組みの中でユーザー全体の傾向や課題を把握して施策を見出すことは困難だった。

 「アクティブユーザーをどのように定義し、どのように分類するのか。継続率を定義して、モニタリングしていくのか。そうした分析ができるようになったため、個別の課題解決だけでなく、全体に関わる改善活動ができるようになってきました。さらに分析業務が属人化され、チームで自由に分析できる環境が整っていなかったことも大きな問題でした。そこで、まずは新しい分析基盤へ移行してSQLの実行速度を大幅に向上し、データのガバナンスを改善すると同時に、誰もが分析しやすいようにデータの加工を施しました。また、データマートを構築することで、誰が分析してもできるだけ同じ指標で分析できるようになりました。さらに、分析だけでなく、マーケティングツールへのデータのパイプラインを構築し、分析した結果をもとにし、マーケティング施策に活かせる環境も構築しました」(田中氏)

 リプレースや機能追加によって新しい分析環境が稼働するようになり、現在は各チームがそれぞれ分析し、結果や考察を簡単に共有できるようになった。処理速度が高まり、クエリも短時間で返信されるため、分析を含めたPDCAサイクルのスピードが増しているという。

 また、以前は扱えなかった大量のイベントデータを同時に扱う分析も可能になり、ユーザーの行動をより詳細に分析できるようになったことも大きい。それらのデータの積み上げにより、プロダクトの活用における指標設計や、日・週・月のアクティブユーザーの継続率などのモニタリング環境も実現させている。

 「グロースチームにとっての重要指標である『ユーザーの継続率』に影響する機能や要素を特定し、優先順位や改善のインパクトまで、あらゆるステークホルダーと迅速に共有できるようになったことが一番の成果です。必ずしもデータだけですべてが決まるわけではありませんが、全体を整理して捉えられることで『やるべきこと』の優先度が明確になりました。例えば、以前は新規登録やリファラル(招待制)などの新規ユーザーの獲得に注力する傾向がありましたが、分析によって継続率がグロースに重要な指標の一つであるというコンセンサスがとれ、施策の充実へとつながっていきました」(新井氏)

ユーザー体験のきめ細やかな分析により、施策の解像度や精度が大きく向上

 強力なデータ分析環境を手に入れた今、プロダクトのグロースに不可欠という「継続率」の向上のために、具体的にはどのような取り組みが進められているのか。そのカギを握るのが、ユーザー体験だ。それも分析によって、ユーザーの利用期間や属性、目的など、さまざまな条件で影響を及ぼす体験が異なることが判明している。

 例えば、ユーザーの登録直後から継続率を高めることが、長期の継続率に直結することが分析で明らかになっており、新規ユーザーを対象としたオンボーディングについて、登録から7日以降や14日以降の継続率を指標として、「リアクション機能」や「プッシュ機能の許諾」などの基本機能の利用サポートや機能改善などを行っている。この施策だけでも明確な指標の改善が見られたという。

 「さらに分析からユーザーの新規登録以降の経過時間によって継続率を高める機能や行動が異なると判明しており、ユーザーの登録後の経過期間に応じた施策の出し分けを行っています。例えば、登録直後は“つながること”が大切なので相手の連絡先を登録する『コンタクト追加機能』、1週間後には『リアクション機能』をそれぞれサジェストしています。また、早期にアプリをダウンロードしたユーザーの継続率が高いことから、アプリのおすすめも実施しています」(新井氏)

 また、単にサジェストするだけでなく、継続率に強い相関性があることがわかっているメッセージ送信機能やリアクション機能を利用してもらうために、メッセージのやり取りを増やした上でリアクションの利用を促すなど、さまざまな改善策を検討している。

 「当然ながら、機能追加や改善などの施策は、エンジニアやデザイナーなども巻き込んで検討することが必要です。その際にも、データ分析によって施策の意味や目的の共有が容易になり、協働していただいている方々のモチベーション向上やスムーズな意思疎通に役立っていると思います」(新井氏)

入社して2年でグロース戦略の中核として活躍──存在価値が高まるデータドリブンな人材

 今後について新井氏は、ユーザー個人単位だけでなく、組織や法人単位での分析を行いたいと語る。法人として利用を継続してもらうにはどうしたらいいのか、新たに組織に入った人が迅速にキャッチアップし、使いこなすにはどう支援すればいいのか、組織に属しながらも個人加入している理由やメリットは何か、法人会員となる際のきっかけは何か──。さまざまな切り口において、BtoBを考慮したデータ分析を行うことで、法人単位の利用継続率を高めることができる要因を探るというわけだ。必然的に分析環境の強化も求められる。

 「基本的なプロダクトのデータなどは分析基盤に移行ができていますが、分析環境は完成したわけではなく、まだまだ拡張していきたいと思っています。例えば、ユーザーのコンタクトリストなどは、プロダクト側では、常に最新の情報があれば、事足ります。ただ、分析したいとなると、ユーザー単位でのコンタクト数の推移が見たいとなります。そのため、分析基盤側でコンタクトリストの日次のスナップショットを保存しておいて、履歴が見れるように改善しているところです。法人単位での分析の他にも、競合他社との比較分析などもリクエストされており、引き続きデータドリブンな環境づくりに注力していきたいと考えています」(田中氏)

 データ活用・分析環境の進化により、プロダクトのグロース施策も急速度で進んでいる。その進行をさらに加速させるべく、kubellではデータサイエンスとプロダクト開発の両方に精通した人材の採用を進めている。

 「まだ市場自体が成熟に至っていないため、開拓すべき余地は多く残されていると感じています。私自身もそこに魅力を感じてジョインしました。データドリブンなプロダクト開発・改善に興味のある方と共に、さらにプロダクトの提供価値を高めていけたらと思います」(新井氏)

 「データアナリストとして私も、プロダクトマネージャー向けだけでなくカスタマーサクセス向けのレポート機能の開発など、新しい施策にも取り組んでいます。kubellの魅力は全社横断的なダッシュボードやデータアプリの作成、インフラ寄りのデータモデル設計もでき、事業を良くしたいと思う人の支援のために、多彩なチャレンジができる環境が整っていることです。プロダクトマネージャーが言葉を武器とするなら、データアナリストは言葉に加えて数字こそが武器となります。言葉と数字で建設的な議論を交わし、より良いものを作りだす環境がkubellにはあります」(田中氏)

 2023年1月に入社した田中氏、同年4月に入社した新井氏とも、入社から2年も経たないうちに、「Chatwork」のグロース戦略の中核を担う存在として活躍している。設立20年目とはいえ、「Chatwork」のドメイン領域はまだ十分な伸びしろがあり、事業の拡大とともに大きな充実感や成長機会を得られるはずだ。興味のある方は、採用サイトより応募してみてはいかがだろうか。具体的な応募要項については、プロダクトマネジメント部の活動や取り組みを紹介している同社のブログにて詳しくまとめられている。

「Chatwork」のプロダクトマネジメント部について詳しく知りたい方はこちら

 「働くをもっと楽しく、創造的に」をコーポレートミッションに掲げ、日本最大級のビジネスチャット「Chatwork」を開発・運営しています。

 プロダクトマネジメント部では継続的に一緒に働く仲間を募集しています。

(撮影場所:WeWork 乃木坂)

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提供:株式会社kubell

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://productzine.jp/article/detail/3009 2024/12/05 12:00

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