経営戦略とKPI運用をつなぐ、「リーダーの視座」の重要性
SaaS事業において、個々のプロダクトを成長させることはとても重要ですが、すべての活動が経営戦略や事業戦略に連動していることを意識しながら進めていくことが不可欠です。リーダー層が経営視点を持つことで、自身の業務の解像度が上がり、KPI会議での説明責任が生じることで、会議での納得感ある説明に備えるためにデータ入力や分析の精度が向上するといった効果があります。マネージャーやリーダーが経営層の視座を持つことは、単にこのKPI管理の取り組みだけに限らず、組織運営全般において重要な要素です。
事業環境は常に変化しているため、方針の転換や優先事項の変更が生じることもあります。このような変化に対して組織全体が機動的に対応するためには、マネージャーやリーダークラスが経営の意図を正確に理解し、それをメンバーレベルまで浸透させることが必要です。
イタンジでは月次でのKPI運用を通じて、マネージャーやリーダーに経営と同様の判断経験を積ませることで、経営的視点の獲得を促進しています。会社の変化や方向転換に対して、より高い視座から対応できる人材を育成することが目標です。経営の思考プロセスやメカニズムを組織階層に応じてブレイクダウンし、チームレベルまで浸透させるようにしています。同じKPI管理の仕組みを全階層で共有することで、会社全体のKPIを全員が理解でき、経営の意図や方針が自然と伝わるよう環境を構築しています。
現場に「経営思考」の実践サイクル根づかせるために
実務的には、経営層の考え方を徹底するために、月次での計画立案、実行、結果確認、次期アクションの検討というPDCAサイクルを愚直に回しています。リソース不足や計画変更の必要性が生じた場合も、このサイクルの中で適切に対応し、必要に応じて新たなプロダクト開発や方針転換を実行します。
ここで重要なのは、このアプローチが、創造性や自由度を阻害するものではないということです。むしろ、方向性を安心して確認できる基盤があることで、単に「できない」という結論ではなく、「なぜできないのか」「何が問題か」「どう対応すべきか」という建設的な議論が可能になります。
これらの取り組みの効果として、メンバーが現在の業務と会社の方向性のつながりを常に意識しながら活動を進められるようになります。経営メカニズムへの理解が深まることで、より大きな責任を担うチャンスにもつながり、キャリア成長の土台となります。
組織文化の醸成という観点では、繰り返し実践することが基本ですが、イタンジでは、評価体系にも組み込むことで定着を図っています。マネージャーやリーダーの評価基準に「事業運営プロセスやメカニズムを適切に運営できているか」という点を含めることで、型に沿った運営を促進しています。興味深いのは、リーダー層たちがこのアプローチに共感していることです。これまであいまいだった業務が、型に基づくことでより解像度が高まり、やるべきことが明確になるというメリットが理解されているからでしょう。
イタンジでは、こういった経営層の視座をマネージャーやリーダーが持つことで、「すべての人の不動産インフラになる」という長期的なビジョンの実現に向けた一貫性のある取り組みを推進しています。また、こうした視座を持つ・持ちたいと願うマネージャー層のメンバーの採用も行っています。ポートフォリオマネジメントやKPI管理はその具体的手法の一例ですが、実行を通じて1つずつ学び、継続的な改善を図ることで、事業成長とメンバーのキャリア形成を発展させていくことが重要だと考えています。